国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

先住民と情報化する社会の関わり

研究期間:2020.10-2023.3 代表者 近藤祉秋

研究プロジェクト一覧

キーワード

都市先住民、デジタル人類学、アイデンティティ

目的

本研究の目的は、都市化・情報化が進行する現代社会の中で先住民の人々がどのように生活世界を構築しているかを比較研究の手法に基づいて明らかにすることである。世界各地の先住民社会で都市部への移住、もしくは伝統的生活圏の都市化が進行していることはよく知られている(青柳・松山『先住民と都市』青木書店、1999年)。しかし、近年、情報化社会の到来にともない、これまで論じられてきた「都市と先住民」の主題に加えて、「情報技術と先住民」の関わりを考える必要が生じてきている。スマートフォン、SNSなどの通信技術が登場することで先住民の人々の生活はいかに変化したか。とりわけ伝統的生活圏と都市部の間で情報のやり取りが容易になったことは、どのような影響をもたらしているか。デジタル空間上で先住民自身による情報発信がなされるようになった一方で、先住民を含むマイノリティに対するヘイトスピーチが横行しているが、先住民の「デジタル主権」をどのように考えることが可能か。本研究はこれらの問いに貢献することを目指す。

2020年度

初年度(2020年度後半)は、参加研究者の研究関心について共有するとともに、共同研究の趣旨および方向性のすり合わせを実施する(第1回:10月予定)。現地調査の実施に向けて、担当地域の都市人類学・情報人類学的な先行研究に関して、文献収集の結果を報告する(第2回:1月予定)。これらの作業を通じて共同研究全体としての問題意識を共有した上で、各自が長期休暇を利用して、海外・国内での予備調査をおこなう。各年度の現地調査に関しては参加研究者各自の科研費などを利用して実施するため、本研究計画の経費には含めない。また、新型コロナウィルス感染拡大の状況によっては、研究会をZoomなどを介してオンライン上で開催したり、調査地への渡航を延期・中止したり(代替調査法としてデジタル民族誌的調査法も検討中)といった感染拡大防止の措置をおこなう。

【館内研究員】 伊藤敦規
【館外研究員】 北原次郎太、栗田梨津子、土井冬樹、額田有美、平野智佳子、山越英嗣、渡辺浩平
研究会
2020年11月1日(日)13:00~17:00(国立民族学博物館 第6セミナー室 ウェブ会議併用)
顔合わせ
近藤祉秋(神戸大学)「趣旨説明」
近藤祉秋(神戸大学)「デジタル民族誌の実践――社会的距離化時代の民族誌調査に向けて」
平野智佳子(神戸大学)「オーストラリア中央砂漠の村――都市間を移動するアボリジニの携帯電話の使用方法」
今後の研究活動に関する打ち合わせ
2021年1月23日(土)10:00~12:00(ウェブ会議)
土井冬樹(神戸大学大学院)「デジタル化する集会:日本に移住したマオリによる文化・言語の学習機会」
栗田梨津子(神奈川大学)「オーストラリア都市先住民の社会運動におけるSNSの活用――今後の研究に向けて」
2021年3月16日(火)10:00~12:00(ウェブ会議)
額田有美(国立民族学博物館)「コロナ時代のコスタリカの先住民土地回復運動――リモートエスノグラフィーの実践に向けて」
来年度の活動に向けての打ち合わせ