国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

モンゴル遊牧システムにおける維持可能メカニズムの解明

共同研究 代表者 小長谷有紀

研究プロジェクト一覧

2002年度

モンゴル高原で展開されている遊牧は、20世紀においては概して生産性が低く、遅れた生活様式として批判されてきた。しかし、地球規模で環境問題が論じられるようになった今日では、維持可能性が高いと再評価されるようになり、一般的にも「自然との共生」として理解されるようになってきている。ただし、遊牧の「歴史的な持続性」と、その具体的な「サステナビリテイのメカニズム」が解明されているわけではない。そこで、本共同研究では、遊牧社会の基礎的な単位である宿営地集団に焦点をあてて、その空間的移動性と社会的異動性がいかに柔軟に自然環境の変化に対応しているかを切り口にして、具体的に「遊牧の維持可能性のメカニズム」を検証するための、方法論を模索する。

この成果を大いに生かし、かつ市場経済化に関する個人研究等の成果(『遊牧がモンゴル経済を変える日』2002.10 出版文化社)を組み合わせて発展させた共同研究
「モンゴル高原における環境保全型経済の構築」

【館内研究員】 池谷和信、佐々木史郎、藤井麻湖、松原正毅、南真木人
【館外研究員】 伊藤篤、大野旭(楊海英)、巌靖子、岡崎正規、尾崎孝宏、上村明、島崎美代子、長沢孝司、萩原守、松井健、松川節
研究会
2002年7月5日(金)14:00~(第3演習室)
Dr. Bulag「モンゴル研究におけるハイブリットリズム」
2002年7月12日(金)10:00~(第3演習室)
サランゲレル「青海省モンゴル族の実態」
2002年7月19日(金)10:00~(第3演習室)
「モンゴル環境フォーラム打ち合わせ」
2002年10月2日(水)10:00~(第4セミナー室)
「モンゴル環境フォーラム 環境立国モンゴルをいかにマネジメントできるか」
2002年11月12日(火)14:00~(第2演習室)
児玉香葉子「モンゴル人の自然環境改善運動とその生態観について ─ オルドス地域の事例から」
2003年1月25日(土)10:00~(駐日モンゴル国大使館(東京都))
今岡、森、ほか「遊牧の市場経済化」
2003年1月28日(火)14:00~(第2演習室)
村井宗行「モンゴル国における土地法の動き」
2003年1月29日(水)15:00~(京大会館108号室(京都市))
小長谷有紀ほか「環境立国マネジメント」
2003年2月21日(金)14:00~(第2演習室)
上村明「モンゴル国土地法の動き ─ Part II」
2003年2月26日(水)10:00~(京都駅前ぱるる会館)
小長谷有紀「モンゴルの遊牧とオオカミ」
研究成果

モンゴル高原における草原は遊牧という「人為の干渉」によって成立し、維持されていることが自然科学の諸分野による研究によって現在、解明されつつある。と同時に、そうした自然科学によって数値化され普遍的に認識される事実は、遊牧民たちがこれまで日常的に自然について認知してきた事実と変わらないことも明らかとなった。したがって、文化人類学的な聞き取り調査は今後ますます有効であると思われる。また、人為の干渉によって成り立っているとすれば、その干渉の変容はきわめて未来に大きな影響を及ぼすという意味でも、人文社会学の果たすべき役割は大きいと言わざるを得ない。

2001年度

モンゴル高原で展開されている遊牧は、20世紀においては概して、生産性が低く、遅れた生活様式として批判されてきた。しかし、地球規模で環境問題が論じられるようになった今日では、維持可能性が高いと再評価されるようになり、一般的にも「自然との共生」として理解されるようになっている。ただし、遊牧の「歴史的な持続性」と、その具体的な「サステナビリテイのメカニズム」が解明されているわけではない。そこで、本共同研究では、遊牧社会の基礎的な単位である宿営地集団に焦点をあて、その空間的移動性と社会的異動性がいかに柔軟に自然環境の変化に対応しているかを糸口に、具体的な「遊牧の維持可能性のメカニズム」を検証するための方法論を模索する。また、その歴史的持続性も検討する。

【館内研究員】 池谷和信、佐々木史郎、藤井麻湖、松原正毅、南真木人
【館外研究員】 巌靖子、岡崎正規、尾崎孝宏、島崎美代子、長沢孝司、萩原守、松井健、松川節、楊海英
研究会
2001年4月24日
島崎美代子、長沢孝司「モンゴルにおけるコミュニティ開発」
2001年5月31日
ガンホヤグ・ダグバ「人口学からみたモンゴル国の現状」
2001年6月18日
□時遠「中国の民族政策と民族問題」
2001年12月5日~6日
尾崎孝宏、岡戸真理「2001年夏の調査報告」
2002年3月9日~10日
ボロノエヴァ・ダリーマ・ツィリコヴナ、荒井幸康「ブリヤートモンゴルにおけるアイデンティティの重層性」
2002年3月22日~23日
全員「報告書作成作業部会」
研究成果

2001年度から2カ年計画で大幅に新しいメンバーを加えて立ち上げた共同研究会であるため、初年度の今年は、新しいメンバーの自己紹介をかね、これまでの研究成果を発表することによって、相互理解を深めることが中心となった。

2002年度には夏期のフィールド調査が始まる以前に、理科系の研究者を招へいして自然科学的な観点からの理解を獲得したうえで、各自がフィールド調査を実施し、秋にそれらを報告して、複合的な知見を得るように進めたい。