国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

みんぱくのオタカラ

仮面  2006年6月15日刊行
林勲男

毎年7月に、パプアニューギニアのラバウルで仮面フェスティバルが開催される。全国からさまざまな仮面ダンスのグループが参集する。昨年の仮面フェスティバルで、バイニングの人びとによるこの仮面をつけたファイヤー・ダンスを初めて見ることができた。

ラバウルは、かつて日本軍の基地があったことでも知られているが、活発な火山活動でも有名である。仮面フェスティバルの会場は、現在も噴煙を上げ続けるタヴルヴル山から、わずか数キロメートルにある。時折、ドーンという爆発音が響き、風向きによっては火山塵が会場に降ってくる。

パプアニューギニアの仮面フェスティバルは、今年で第12回目を迎える。最初の4回は首都のポートモレスビー、続く2回はマダンで開催された後に、2001年の第7回から東ニューブリテン州に開催地を移した。1994年9月19日にタヴルヴル火山とヴァルカン火山が相次いで噴火した。タヴルヴル山の噴火が小康状態となった1995年の4月に、避難していた住民たちもラバウルに戻ってきた。しかし、ラバウル市街のおよそ3分の1が火山灰に埋もれてしまい、州都としての機能はブランシェ湾南岸のココポに移った。ラバウルの街も徐々に復興しており、仮面フェスティバルの開催地となった背景には、噴火災害からの復興推進があったのかもしれない。

内陸に住むバイニングの人びとは、タパ(樹皮布)を使った数種類の大きな仮面で知られている。このカヴァトと呼ばれる仮面は、夜間に行なわれるファイヤー・ダンスに登場した。炎に浮かび上がったダンサーのこっけいな動作は、会場を笑いの渦に包み込む。焚き火にくべた竹は、時折大きな音をあげてはじける。ダンサーはその焚き火を飛び越え、時には燃え止しを蹴散らす。そのたびごとに観衆から歓声があがる。

民博のオセアニア展示場では、展示壁から場内を静かに見守っているが、その躍動的なダンスをまもなくビデオテークで紹介できるでしょう。

林勲男(民族社会研究部)

◆今月の「オタカラ」
標本番号:H0001351 / 展示番号:OS0820 / 標本名:仮面

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仮面をつけたファイヤー・ダンス

◆関連ページ
本館展示場(オセアニア展示)