国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

みんぱく映画会

2019年2月23日(土)
ママのお客

チラシダウンロード[PDF:2.9MB]

国立民族学博物館では2009年度から、研究者による解説付きの上映会「みんぱくワールドシネマ」を実施しています。10年目の今期は昨年に引き続き、<人類の未来>をキーワードに映画上映を展開していきます。今回はテヘランの下町の集合住宅に暮らす4人家族が、突然のお客様を迎えることになり、隣近所の人びとがこぞって協力し合い、おもてなしの食卓を準備するまでを描いた、涙あり笑いありのイラン映画の名作「ママのお客」を上映いたします。食卓をとおして、イランの人びと、その日常生活や社会を知りたいと思います。

  • 日 時:2019年2月23日(土)
        13:30~16:30(開場13:00)
  • 場 所:ホテル阪急エキスポパーク
        多目的ホール(オービットホール)
        〒565-0826 大阪府吹田市千里万博公園1-5
      
    ※館外での開催となります。ご注意ください。
  • 定 員:400名
  • 参加費:無料
      ※参加券を11:00から多目的ホール(オービットホール)
       前受付にて配布します。事前申込は不要です。
  • 主 催:国立民族学博物館
 

● みんぱくワールドシネマ 映像から考える<人類の未来>
第44回上映会

ママのお客 Mehman-e maman / Mum's Guest
2004年/イラン/108分/ペルシア語/日本語・英語字幕付き
【開催日】2019年2月23日(土)13:30~16:30(開場13:00)
【監督】ダーリウシュ・メヘルジュイ
【出演】ゴラーブ・アディネ ハサン・プールシラズィ
【司会】菅瀬晶子(国立民族学博物館准教授)
【解説】藤元優子(大阪大学言語文化研究科ペルシア語専攻・教授)
「映画解説」

つましくも堅実に家庭を切り盛りする主婦が、突然の来客に戸惑いつつ、精一杯のもてなしで応えようと奮闘するさまを、コミカルに綴る人間ドラマ。理系の大学生に好意を寄せる年頃の娘と、やんちゃ盛りの息子の子育てにいそしむ母は、ひとは好いが甲斐性のない映画マニアの夫にやきもきし、気苦労の絶えない日々を過ごしていた。そんな中、新婚の甥っ子夫婦が訪ねてくることになり、一家は大慌てで宴席の支度に取りかかる。面目も潰さずに、若いカップルを心づくしのごちそうで祝うべく、ご近所総出で食材集めや調理に奔走するが、思わぬハプニングが次々と巻き起こる。イラン映画史上最重要作の1本「牛」(69)などで知られる国際的名匠ダーリウシュ・メヘルジュイ監督は、出産間近の妻を愛するも時に暴力をふるってしまう薬物依存気味の隣人や、鶏を我が子のように愛でる孤独な老婦人ら問題を抱えるひとにも温かいまなざしを注ぎ、近隣のふれ合いや人情のかけがえのなさを、大らかなユーモアで包み映し出す。波乱続きのスリリングな長い一日に、生きることの悲喜こもごもを散りばめ、イランの著名なファジル国際映画祭で作品賞に輝いた佳篇だ。(映画評論家 服部香穂里)

イラン人の人付き合いとおもてなし

イラン人の人間関係は濃密である。通りでもバスやタクシーの中でも、知らない人同士がすぐに打ち解けるし、いったん友だちになれば、良くも悪くもプライバシーの壁を越えた交流が始まる。元々人付き合いの基本が家庭にあり、家族単位での行き来が多いこともあって、彼らは気軽に親戚やご近所さん、知人友人を自宅に招待するし、多人数の集まりともなれば、周囲の女性たちが助っ人となって準備にいそしむ。日本人は「おもてなし」精神を国民的美徳と自認しているが、イラン人のもてなし上手ぶりは別格である。大抵の家には客用の部屋が確保されており、突然の来客でも嫌な顔ひとつせず、あらん限りの言葉と行動を尽くしてお客さまを大歓迎するし、いっぱしの主婦であれば、客のために何種類ものメニューを用意して食事やお茶の世話ができて当然だとされる。もちろん、このような人付き合いは、濃密であればあるほど面子、恥、遠慮といった感情の交錯を生むものであり、主人側、客側の双方に相手の建前と本音をどう忖度するかの感性が問われる。この作品をとおして、私たちは愛すべきイラン人の人情の機微に触れ、彼らの人付き合いの喜びと苦労に共感することができるであろう。(藤元優子)

 
映像から考える<人類の未来>国立民族学博物館 鈴木紀

国立民族学博物館では2016年度より特別研究「現代文明と人類の未来─環境・文化・人間」を開始しました。これは、現代文明の諸課題に対して解決志向型のアプローチをとる研究です。現代文明は物質的な豊かさと普遍的な価値観を広めましたが、同時に環境破壊や文化摩擦を生み出しています。民族学や文化人類学の立場からは、現代文明の矛盾はどのように現れるのか、そしてその解決策は何かを、地域社会や民族文化に視点を据えて考えることが重要です。みんぱくワールドシネマのねらいは、この特別研究の問題意識を来館者の皆様と共有することにあります。世界の映画をとおして、現代文明を問い直し、多元的な価値が共存する人類の未来を展望したいと思います。

地図

ホテル阪急エキスポパーク 多目的ホール(オービットホール)
〒565-0826 大阪府吹田市千里万博公園1-5

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〒565-8511 大阪府吹田市千里万博公園10-1
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Fax:06-6878-8242