国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

特別展「2002年ソウルスタイル」

2002年ソウルスタイル

2002年3月21日(木)~7月16日(火)

 

● 特別展を開催するにあたって ●
 2002年は「日韓国民交流の年」です。
 現在、観光をはじめとして、多くの日本人が韓国を訪れ、また、メディアを通して韓国のグルメやエステなどが頻繁に紹介されています。しかし、韓国文化の理解という点では、ステレオタイプ的なものが多く、韓国の人たちの日常生活のあり様にまでふみこんだものは少ないように思います。これまでも、美術・音楽などの芸術分野では理解をひろめる努力がなされてきましたが、より現実的な理解のためには、的確なデータに基づいた、実証的な研究をふまえる必要があるでしょう。
 そこで今回、本館では韓国国立民俗博物館と共同で、両国の生活文化の理解に資す展示を企画しました。ソウルにある同館では、日本の生活文化展を、本館では韓国の生活文化展を開催します。それが特別展「2002年ソウルスタイル ─ 李さん一家の素顔のくらし」です。

李さん一家

・特別展のみどころ
 まず、展示場1階の中央部には、ソウルの高層アパートに住む李さん一家の協力をえて、彼らの生活財を調査させていただき、その調査に基づき、彼らのくらしがあるがままに展示されます。つまり、はじめに「これが韓国のくらしだ」というステレオタイプ的なものを見せるのではなく、李さん一家のくらしを通して韓国の人々のくらしのあり様を見てみようという方法で展示をおこないます。いわば、現在のくらしを考古学的な手法で調べる、考現学的な手法による展示です。ですから、今回の調査および展示は、今、21世紀初頭の韓国人のくらしをまるごとひとつタイムカプセルにして残すようなものです。彼らの「生活財」は、未来の「文化財」になるかもしれません。
 そしてその周辺に、「子どもたちの部屋から学校へ」、「夫婦の部屋からお父さんの職場へ」、「おばあちゃんの部屋から故郷へ」、「台所から市場へ」、という具合に、李さん一家それぞれの活動する生活空間を演出して展示します。

・韓国の小学校を再現
 学校の展示では、小学校4年生の女の子が通う教室を再現します。ここでは、小学校の教科書をはじめとする資料展示だけではなく、授業や給食の様子を撮影した映像資料も見ていただけます。また、この教室を使ってハングルの勉強をすることもできます。
 お父さんの職場の展示は、普段、自分の父親の職場を見る機会の少ない日本の子どもたちにとって、自分たちのお父さんを再発見させてくれるかもしれません。  故郷の展示からは、私たち日本人が歴史を教科書や本、あるいはテレビなどを通して頭で理解するのに対して、韓国の人たちは故郷にあるお墓やお墓に眠る祖先を通して過去、すなわち歴史を認識しているということがわかってもらえると思います。

・無料ゾーンの設置
 このほか、展示場地下には、韓国の食の世界を示す「みんぱくシヂャン(市場)」を、前庭にはパフォーマンスを公演する「みんぱくマダン(広場)」を設営します。会期中、毎週末には「みんぱくシヂャン」で韓国食の販売を、「みんぱくマダン」ではさまざまなイベントや公演をおこなう予定です。なお、展示場地下には団体用の食事空間も用意してあります。
 隣家におじゃまする感覚で今回の特別展を見に来ていただければと思います。この展示のなかから隣国・韓国のくらしが私たち日本人のくらしと似ているとともに、さまざまな違いもあるということを発見できるでしょう。そうした発見が、異文化理解、国際理解への第一歩となると思います。

・常設展における韓国の展示
 なお、特別展の観覧券でそのまま本館常設展もご覧いただけます。特別展では韓国の現代社会の文化が中心ですが、あまりふれていない、韓国の伝統的な文化をもっと知りたい方は、常設展の「朝鮮半島の文化」展示もあわせてご覧ください。また、「みんぱく電子ガイド」、「ビデオテーク」にも韓国の映像プログラムがありますので、そちらもご利用ください。

朝倉敏夫 特別展実行委員長

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