企画展「水の器-手のひらから地球まで」
人間は、地域の環境に応じて地下水や雨水、河川などを水源として利用してきた。また、水源から生活世界へと水を引き込 むために、貯水池、ダム、井戸や水路などの大規模な水の器を作り出してきた。その一方で、人びとは、水の恵みをもたらす水源に畏敬を抱き、神話や伝承、儀礼を発達させてきた。水源は人間にとって不可視の自然と現実の世界をむすぶ接点となる。 |
地球は、地表の約7割を占める海洋と水蒸気を含む大気に覆われた「水の惑星」である。しかし、地球が湛える水のうち、 人間が使える水はほんのわずかである。しかも、陸地にある水も地下水も、まんべんなくあるのではなく、「あるところ・ないところ」、「あるとき・ないとき」がある。これは、大気中の水蒸気を含めて、地球の水が大きな流れの中にあるためで、この大きな動きを地球の「水循環」という。 |
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人間は、水を確保するために、手のひらにかわるさまざまな器を作り出してきた。人びとは地域の環境に応じた水源を利用し、「汲む」「運ぶ」「ためる」「注ぐ」「掬う」ための器を使い分けながら、水源から水を口元まで運ぶ。口元から取水口へと水の道程を遡りつつ、生活世界における身近な器の世界を、国立民族学博物館所蔵資料から紹介する。世界各地の水の器には、地域の自然環境や技術とともに文化や社会が投影されている。 |
いまや、どこに出かけても出会えるボトル入りの水は、現代社会を象徴する一品ともいえるだろう。そこで、実際に、世界各地からペットボトルを集めてみたが、中身が「水」ゆえに、その差を伝えることはとても難しく、どの国も「水」の違いをどう見せるのかに苦労していることがうかがえる。同時に、この新しい器を使いこなすためのさまざまな工夫がみられ、ペットボトルをきっかけに新たな人と水の関わりが生み出されている。 |