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みんぱく世界の旅

アフリカ発掘調査(4) 『毎日小学生新聞』掲載 2015年3月28日刊行
竹沢尚一郎(国立民族学博物館教授)
発掘でひもとく独自の文明

私の連載は今回が最後です。ですからここで、私たちの発掘がアフリカ史にとってどういう意味があるかをまとめておきましょう。


アフリカの人は今でも糸をつむいで布を織ります。

前回、アフリカ最古の王宮について書きました。時代は今から1100年前。その時すでに、大きな建物を建てる力があったことが明らかになったのです。

なぜこのような国家ができたのか。二つの理由が考えられます。一つは、アフリカが古くから農業や牧畜、鉄や織物業を発展させていたことです。アフリカで鉄がはじめて生産されたのは今から約2500年前で、これは日本より古い時期です。 


ガラスビーズでつくった首飾り

このころには、糸をつむぐための紡錘車もありました。そのほか、土器を焼く窯が何百も残る遺跡も発見されました。西アフリカは手工業の工場だったのです。

それに加えて、西アフリカは砂漠をこえた交易の中心でした。熱帯アフリカではガラスが製造されなかったので、ガラスが出てくると、長距離交易があった証拠になります。みなさんはガラスなんてと思うかもしれません。今ではありふれたものですから。しかし、今から約1000年前にはガラスは貴重品でした。しかも、ガラスを鉱物に混ぜることにより、さまざまな色を出すことができます。ガラスは装飾品として大歓迎されたのです。


ジェンネという都市にある、泥で作った建築としては西アフリカ最大のイスラム寺院です

約1500年前の交易

ガラスを輸入するには、輸出品が必要です。西アフリカでは金が取れたので、金の輸出は盛んでした。こうした交易が1500年前にあったことが、私たちの発掘によって明らかになったのです。

このようにアフリカは独自の文明を築いていました。しかし500年前にヨーロッパの船がきて、人々を奴隷としてアメリカ大陸に連れて行きました。アフリカが貧しくなったのはそれからです。私たちの発掘は、それ以前のアフリカの豊かさを実証してきたのです。

 

一口メモ

アフリカは暑いので発掘は午前中だけおこないます。夜明け前に朝ごはんを食べ、午前6時から正午まで掘って、午後はその分析をします。毎日おなじ人と顔を合わせるので、けんかにならないよう、チームワークが一番大事なのです。

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