国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

みんぱく世界の旅

オセアニア(2) 『毎日小学生新聞』掲載 2015年4月11日刊行
印東道子(国立民族学博物館教授)
島の生活とココヤシ

ヤシの葉で編んだマットで屋根を作ります

ココヤシには枝がないので、登るのは大変です

オセアニアの海岸には必ずといっていいほどココヤシの木が並んでいます。枝がないのが特徴で、とても高くなるので遠くからもすぐわかります。

ヤシにはたくさんの種類がありますが、オセアニアで一般的なのがココヤシです。ココヤシの実はココナツとよばれ、若い実の中には、ほんのり甘い液体がたっぷり入っていて、ココナツさえあれば飲み水がなくても大丈夫です。のどが渇くと、子どもたちがするするとヤシの木に登って上から落としてくれます。

若い実と同じくらい大事なのが、地面に落ちて芽が少しでたココナツです。中のジュースがなくなっているかわりに、殻の内側に脂肪分たっぷりの白くてかたい層ができています。これはコプラと呼ばれ、貝殻などでこりこりと細かく削ります。これをぎゅっとしぼると真っ白でほんのり甘いココナツクリームがとれます。オセアニアでは、タロイモや魚を料理するときは必ずこのクリームで味付けします。そして、しぼりかすはブタのえさにもなります。


食事を準備する時は必ずコプラを削って味付けします

さまざまな利用法

コプラを削ったヤシ殻はカップにもなるし、外側の繊維質の部分はたわしやヤシロープを作る材料になります。前回紹介したアウトリガー・カヌーは、くぎを使わずにヤシロープを使ってしばりあわせます。

ココヤシの大きな葉も大切です。油分が多いのでたいまつにもできますし、腐りにくいので屋根をふく材料にもなります。葉を一枚一枚編んで、重ねるようにしばり付けて屋根にします。サイクロン(台風)で飛ばされてもすぐに新しい葉を編んで直せます。

このように、ココヤシはどの部分も無駄なく利用でき、オセアニアの人たちにとって、ヤシの木のない生活なんて考えられない、というくらい重要な木なのです。

 

一口メモ

ココヤシは熱帯の海岸地域に分布し、枝がつかず真っすぐ伸びるのが特徴です。毎年40~80個の実をつけるココヤシは、食用だけでなく、屋根材やロープの材料を提供するなど、オセアニアの暮らしに欠かせない植物です

シリーズの他のコラムを読む
オセアニア(1)
オセアニア(2)
オセアニア(3)
オセアニア(4)