国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

みんぱく世界の旅

博物館の怪物たち(4) 『毎日小学生新聞』掲載 2017年2月4日刊行
山中由里子(国立民族学博物館准教授)
あなたが気になるモンスターは?

中国や華人社会のお祭りで舞われる竜=いずれも国立民族学博物館蔵

人魚からゴジラまで、人間はさまざまな怪物や幻獣を想像してきました。世界のさまざまな地域の人々が、不思議だけれどもこの世のどこかに存在するかもしれない生き物を想像し、また人知を超える存在やパワーを動物の姿で思い描いてきました。

世界に共通して見られるモンスターのタイプの一つが、竜やドラゴンです。竜はみんぱくの展示場でもあちこちに出没します。中国地域の文化の展示場の天井には、竜舞の竜が飛んでいます。中国では竜は恵みの雨を降らせる神聖な動物とされるため、春節(旧暦の正月)には、何人もの人が支え棒を持ってこの長い竜を操り、実り豊かで健康な1年を願います。

アメリカ展示場には、色鮮やかな翼のはえた木彫りのドラゴンがいます。メキシコ・オアハカ州で作られる「アレブリヘ」と呼ばれる、おみやげとして人気のある民芸品の一種で、色遣いや造形がポップです。アレブリヘは、職人さんが熱にうなされたときに夢に出てきた変な怪物たちを紙細工で作ったのがその始まりです。

西アジア展示場の信仰のセクションにあるエジプトのコプト教徒(キリスト教の一派)が飾る絵には、聖ゲオルギウスという聖人にやりで退治されそうになっている、かわいそうな竜が描かれています。

みんぱくに来れば、こうした世界中のモンスターの姿を見ることができます。みなさんもお気に入りのモンスターを探しに来てみませんか。

 

一口メモ

竜やドラゴンの意味するものは文化によって違います。キリスト教世界では悪の象徴が多く、中国では皇帝のシンボルともされる霊獣です。

シリーズの他のコラムを読む
博物館の怪物たち(1)
博物館の怪物たち(2)
博物館の怪物たち(3)
博物館の怪物たち(4)