国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

みんぱく世界の旅

ボリビア・アマゾン(2) 『毎日小学生新聞』掲載 2017年2月18日刊行
齋藤晃(国立民族学博物館教授)
雨期はカヌー 乾期は馬で

雨期の川は増水し、川幅がとても広くなります

アマゾンでは、旅の移動手段が雨期と乾期で異なります。雨期には大量の雨が降り、森林と草原は水浸しになるので、カヌーが主な移動手段になります。カヌーの多くは1本の丸太をくりぬいたものですが、大きな板を貼り合わせた大型のカヌーもあります。通常、オールでごぎますが、船外機を取り付けることもできます。


牛の放牧がおこなわれる地域では、馬は牛を追い立てるため使われます

川の旅は快適です。水の上はひんやりして気持ちがいいし、川岸に近寄らないかぎり、蚊にくわれることもありません。雨が降っても、カッパを羽織れば大丈夫。しかし、アマゾンの川はうねうねと蛇行しているので、移動にはとても時間がかかります。浸水した森を突っ切って近道することもできますが、木の枝やツタをかき分けながら進むのはたいへんです。また、川岸の風景は素人目にはどこも同じに映るので、案内人がいないと迷子になるおそれがあります。


船外機を取り付けたカヌー。調理用バナナを運んでいるところです

乾期には、馬に乗って草原を移動することができます。蛇行する川をたどるより、はるかに効率的です。わたしの経験では、馬に乗るのはむずかしくありません。通常、旅のルートは決まっているし、馬はどこを進むべきか心得ているので、乗り手が手綱を操る必要はありません。ただし、日中の草原は蒸し暑いし、馬に乗っているとおしりも痛くなるので、旅は楽ではありません。馬は夜目が利くので、地元の人はすずしい夜間に旅することを好みます。しかし、注意が必要です。馬は木にぶつかることはありませんが、乗り手が木の枝にぶつからないよう配慮もしてくれません。

 

一口メモ

オールでカヌーをこぐには熟練が必要です。初心者がこいでも、同じところをぐるぐる回るばかりで、なかなか前に進めません。

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