国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

館員の刊行物

現代手芸考――ものづくりの意味を問い直す  2020年9月26日刊行

上羽陽子・山崎明子(編)

フィルムアート社
【共同研究成果】

出版物情報

主題・内容

なぜ人はものをつくるのか──
文化人類学、ジェンダー研究、美術・工芸史、ファッション研究…さまざまな視点から、いちばん身近なものづくり=「手芸」の輪郭をあぶり出す。
「つくる」「教える」「仕分ける」「稼ぐ」「飾る」「つながる」の6つのアプローチで迫る、はじめての手芸論。

おすすめのポイント(読者へのメッセージなど)

かつて「女らしさ」や「素敵な家庭」といった価値と結びつけられていた手芸も、いまや従来の概念を超え、世界各地で余暇的・趣味的な仕事として多様な展開をみせています。それらは男性も担い手に含み、アート、フェアトレード商品、エスニック雑貨などとして美術や市場の領域にも進出しています。また手軽なキットやインターネット上のハンドメイドマーケットの登場により、誰でもつくれて誰でも売れる環境となっているのが、現代の手芸をめぐる状況です。さらに趣味を通じた人的ネットワークの形成や、それらの災害後におけるケアとしての機能なども注目を集めています。
これまで批評・研究の世界で取り上げられてこなかった未開拓の分野=「手芸」について、「つくる」「教える」「仕分ける」「稼ぐ」「飾る」「つながる」の6 つのテーマから迫る、画期的な一冊です。

目次

 

序論:「手芸的なるもの」を探る  上羽陽子

 

 

1章 つくる

 

論考:「手芸」と技術
──「つくること」に与えられた社会的意味  山崎明子
コラム:手芸的なるものにつき動かされる男子にとって、手芸とは何か?  中谷文美
    手芸でない織物・手芸である織物  金谷美和
    つくりたくないものは、つくりたくない  上羽陽子
座談会:つくる×技術

 

2章 教える

 

論考:手芸空間の同床異夢
──何のために教えるのか/何のために習うのか  杉本星子
コラム:伝えられる知識と伝えられない知識  新本万里子
    “アイヌ文様刺繍”を教える  齋藤玲子
    芸術へとひらかれる学び  ひろいのぶこ
座談会:教える×伝承

 

3章 仕分ける

 

論考:手芸とファッションから美術史を描き直す  蘆田裕史
コラム:「工芸」と「手芸」の仕分けの現場  木田拓也
    モノから探るネパールの「手芸」  南真木人
    私の制作と手芸  野田凉美
    南アジアの美術作家が用いる「工芸・手芸」イメージ  五十嵐理奈
座談会:仕分ける×アイデンティティ

 

4章 稼ぐ

 

論考:商品化する手芸
──「手芸」から「ハンドメイド」へ  木田拓也
コラム:近代アメリカ女性に見る針仕事と階級の関わり  平芳裕子
    ハンドメイド、「人気」と「稼ぎ」の向かう先  村松美賀子
    中国・モンの衣装を商売にする  宮脇千絵
座談会:稼ぐ×社会階層

 

5章 飾る

 

論考:女が住まいを飾るとき
──手芸の「過剰性」をめぐって  中谷文美
コラム:機能的な装飾  蘆田裕史
    戦後の少女と手芸  山崎明子
    隙間を埋める刺繍作業  上羽陽子
座談会:飾る×自己表現

 

6章 つながる

 

論考:手芸がつくる「つながり」と断絶  金谷美和
コラム:手芸と平和、そして小さい経済を考える  塩本美紀
団地の手芸  山崎明子
東日本大震災避難ママたちの「お裁縫会」  杉本星子
座談会:つながる×社会空間