国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

館員の刊行物

ヒップホップ・モンゴリア――韻がつむぐ人類学  2021年2月24日刊行

島村一平

青土社
【科研プロジェクト成果】

出版物情報

  • 出版社:青土社 出版社ホームページはこちら
  • 価格:2,860円(税込)
  • ISBN:9784791773510
  • 判型:四六判 並装
  • 頁数:421頁
  • 科研プロジェクト 「モンゴルをとりまくエスノスケープとアイデンティティの重層的動態に関する実証的研究」成果

主題・内容

本書は、ヒップホップと現代モンゴルにおける政治・経済・社会的状況、そしてラッパー個人の経験が複雑に絡み合う緊張関係の中で生み出された世界―ヒップホップ・モンゴリアを描き出したものである。

おすすめのポイント(読者へのメッセージなど)

都市で起こる貧富の格差やジェンダー問題、ヒップホップを通じて今まで見えてこなかったモンゴルの姿が現れてくるはずです。また本書は、ヒップホップを通じて見た遊牧民の都市定住化論・近代化論です。また同時に欧米発のグローバル文化のローカル受容を論じているという点では、モンゴル人の物語であると同時に日本人の物語でもあります。

目次

 

第一章 創世記――ポスト社会主義という混沌
イントロ/知られざるモンゴルの近現代/社会主義の光と影/国家統制されたポピュラー音楽/「密輸入」されたポピュラー音楽/サブカルチャーとしての「オルツの歌」/歌に隠された意味/崩壊する社会主義/移行期の混沌を生きる/テレビとラジオと闇市場/ディスコ、クラブとDJの誕生

第二章 群像――第一世代ラッパーたちの葛藤
イントロ/露天市場(ザハ)での出会い/先駆者MCIT の生い立ち/ダイン・バ・エンへ始動/プロデユーサーMCIT/初アルバム/抵抗/一時代の終わり/エリート・ラッパー、スキゾ/Luminoの商業的成功/ラブソングと流用/選挙ショーという儲け話/アウトロ

第三章 伝統――口承文芸からヒップホップへ
イントロ/西洋化した民族音楽/「モンゴル化」という文化実践/ペンタトニック大賞/外来文化を飼い慣らす/ポピュラー音楽と民族音楽の融合/ヒップホップと民族音楽/韻踏む文学、口承文芸/韻踏むことわざ/韻踏む呪文/ラップ・バトルとしての掛け合い歌/遊牧民の交渉術としてのバトル/アウトロ

第四章 憑依――ヒップホップからシャーマニズムへ
イントロ/ライムの理論/モンゴル語ラップの教本/MCビーツのラップ理論/ TATAR のライム技法/Quizaのライム技法/シャーマニズムと押韻/精霊の声が聞こえないシャーマン/「精霊とは言葉のことである」/韻と憑依/シャーマニズムからヒップホップへ/アウトロ

五章 憤激――ゲットーに響く声
イントロ/ ICE TOP と社会批判/グローバルとローカルの結節点としてのクラブ/政治批判/ナショナリズムと排外主義/反キリスト教/S&Iと殺人事件/ゲル地区の世界/ギャングスタ、Desant/Geeの生い立ち/ヒップホップとの出会い/TVのバトルで優勝する/モンゴル・ラッパーVS欧米留学組/アメリカ留学組の真実/ゲル地区とGee/Geeの哲学/シャーマンになるヒップホッパーたち/競争社会とプライド/アウトロ

第六章 変成――今を生きる女性ラッパーたち
イントロ/遊牧文化における女性/高い離婚率と家庭内暴力/初の女性ラッパー・ジェニー/MCITとの出会い/ラッパーとして生きる/ MCIT との再会/母の死/ 覆面のフェミニスト、Mrs M/自立する女/理系女子NMN/ウェブ上のラップ・バトル/恋する女/アウトロ

第七章 越境――ヒップホップが生んだ声の共同体
イントロ/分断される「書き言葉」/〝南モンゴル人〞/植民地的状況の中で/内部の敵/国境を超える音楽/内モンゴル・ラップの黎明期/俺たちはワン・ブラッド/ブリヤートのラッパーDze/モンゴルで共鳴するブリヤート・ラップ/アウトロ

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