国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

中国は今(6) ─ チワン族の高床式住居の今 ─

異文化を学ぶ


高床式住居は、1層に家畜を飼養し、2層に人が住む構造の建築で、中国ではチワン(壮)族などタイ系やチベット・ビルマ系の民族の一部にみられる。広西壮族自治区では西部・北部に多い。しかし、現在、この自治区の中で筆者が調査する村では廃れ、ブロックを使い家畜小屋を別にした平屋建築が増加する傾向にある。

高床式住居は木材を多く使うので修理に手間がかかり、人畜同居はとかく不衛生だと見られがちだ。近年、経済発展にともなう出稼ぎブームで若者が沿海部へ行き現金収入を得るケースが多いが、そうした人々の間で平屋建築に建て替える動きが見られる。

一方、観光地では政府が高床式住居を保護する政策を進めている。壮観な棚田で知られ、観光地として発展を遂げる広西北部の龍勝県の場合、棚田と伝統的な高床式住居群が一体化して独特の田園風景を形成しているが、その景観を守るためレンガやブロック建築への建て替えを禁止している。

このように今、高床式住居は、観光地で文化資源として活用され残される場合と、逆に別の様式の建築へと建て替えられ衰退する場合とが見られる。3月13日からの特別展「深奥的中国―少数民族の暮らしと工芸」では、チワン族の高床住居の居住空間を再現し、そこでの暮らしにふれていただく。

国立民族学博物館 塚田誠之
毎日新聞夕刊(2008年3月12日)に掲載