国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

働くということ(4) ─ 出稼ぎ ─

異文化を学ぶ


中国は人口13億人のうち農民が約9億人を占めるが、うち1億人以上が出稼ぎに行っているといわれる。

内陸部の貧困地域から沿海部に向かう人が多い。広西から広東へ出てきた少数民族チワン族のある若者の場合、週に6日、残業を含め毎日12時間もの労働に従事しているが、2、3カ月程で農村での年間の収入を超え、仕送りで故郷の両親を養えるという。

こうした収入の格差が出稼ぎを生んでいる。出稼ぎ先では、職場で同じ持ち場にある者より、血縁関係にある者、そして同じ村落出身の者との結びつきが強い。多民族国家であるが、同じ民族同士で結束するとは限らない。頼れるのは顔見知りの村の人で、血縁・地縁意識が強いようである。中国の繁栄は、こうした出稼ぎ農民たちに支えられている。

国立民族学博物館 塚田誠之

毎日新聞夕刊(2006年6月28日)に掲載