国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

おしゃれにきめる(7) ─ 装い?化け? ─

異文化を学ぶ


西アフリカにフルベという民族集団がいる。白人との混血とされるだけあって、周りより色が白い。彼らもそれを意識して、人一倍おしゃれ好きである。

女性たちはヘンナという顔料で口の周囲を染める。黒色の顔料なので、他の集団は使えない。フルベにとってヘンナは、他集団との差異と優越の証しである。口の周りをヘンナで染めた彼女たちは、現地では美なのだが、私から見ると残念ながら志村けんの「変なおじさん」にそっくり。止(や)めればいいのにと思うが、口にはできない。

止めればいいのに、と思う装いは日本にもたくさんある。ガングロは減ったが、他は花盛りだ。ヘンナを見ても、装いとは差異と同一化の戯れであることがわかる。バランスが失われたら、装いではなく化けになると思うのだが。

国立民族学博物館 竹沢尚一郎

毎日新聞夕刊(2006年9月13日)に掲載