国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

旅・いろいろ地球人

組織

(5)北米のタイコ音楽  2014年10月23日刊行
寺田吉孝(国立民族学博物館教授)

タイコ会議の様子=アメリカ・ロサンゼルスで2001年6月、筆者撮影

北米に和太鼓が紹介されて、既に45年以上がたつ。「タイコ」の演奏は各地で開かれる多文化フェスティヴァルの常連となり、日系・アジア系の顔としてすっかり定着した観がある。これほどまでに和太鼓が広がった理由の一つは、この音楽が組織化されたことにあるようだ。

北米には現在少なくとも250チームのタイコ集団があり、かれらのネットワークの要となっているのが、1997年に結成された北米タイコ会議である。隔年で開かれる大会には、毎回500人以上が参加する。参加者のほぼ全員が太鼓打ちであり、会場は熱狂的な雰囲気に包まれる。演奏方法からグループ運営のノウハウまで、様々な知識と経験が、ベテランから初心者に惜しみなく伝授される。また、タイコ演奏の技術面だけでなく、北米のタイコの歴史や演奏の意義を話し合う場も用意されている。

概して、音楽の組織は権威として機能することが多い。「正しい」演奏の仕方を決めたり、ライセンスを発行することで誰が教える資格をもつかを決めたりする。これに比べ、北米の「タイコ・コミュニティ」の連携は緩やかで権威を嫌う。タイコを打つことへの情熱と、相互扶助の精神が受け継がれている組織の在り方から、学ぶべきことは多い。

シリーズの他のコラムを読む
(1)日系宗教の海外伝道 広瀬浩二郎
(2)博物館は地域の「顔」 丸川雄三
(3)雲南で広がる教会の輪 横山廣子
(4)災害ボランティア 林勲男
(5)北米のタイコ音楽 寺田吉孝
(6)みんぱくの青い鳥 出口正之
(7)手話で広がる世界 相良啓子
(8)プロジェクト終の棲家 鈴木七美