国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

旅・いろいろ地球人

世界の都市化

(4)アマゾンの港町の風景  2015年11月26日刊行
池谷和信(国立民族学博物館教授)

朝の船着き場=イキトスで2012年、筆者撮影

アマゾン川は、世界最大の流域面積を誇り、その広さは日本の面積のおよそ20倍にも相当する。このため、今でも船でしか行けない都市や村も多い。ペルーアマゾンの中心地イキトスは人口が20万人を超えるが、飛行機以外は船が唯一の移動手段だ。

ここでは一隻の船が到着するたびに、船上に臨時の市場が生まれる。船は、1週間以上の航行をして、各地の産物が集められるからだ。村から街に移動してきた人、魚やバナナなどを運ぶ仲買人が下りてきて、それらを迎える人が加わり、人だかりになる。

私は、イキトスの仲買人に追随して、ペッカリー(イノシシに類似した動物)の皮が到着しているかどうかが気になっていた。この皮は、広大なアマゾンから年間数万枚が集められる特産物だ。空輸で輸出されて、イタリアの職人の手をへて最高級の手袋に変わっていく。

現在、イキトスでは、船を利用して農村からの人が集まり、ますます人口が増えている。船着き場は、まさに人々と食料が集まってくる場である。人混みの中、皮を扱う女性の仲買人を見つけた。彼女は、下流のブラジル国境に近い町からやってきていた。別の時には、別の川の上流部から集めた人にも出会った。ペッカリーの皮がアマゾンの奥地と文明世界をつなげている。

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