国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

旅・いろいろ地球人

カザフスタン点描

(4)若者に人気の日本食  2017年6月1日刊行
藤本透子(国立民族学博物館准教授)

スシやウドンを出すカフェ。マンガやアニメのキャラクターが壁面に描かれている=アルマトゥ市で2016年、筆者撮影

最近、カザフスタンの街の若者に日本食が人気だ。15年前には、太巻きを作ると「外側の黒いのは何?」と不思議そうに聞かれたが、いまやファーストフードとして定着している。

日本食を出すカフェのメニューは「スシ」「ウドン」と充実している。シェフはロシア人らしい。エビやマグロやアナゴのにぎりに、巻き寿司もある。

クリームチーズに海苔を巻いて芯にし、ご飯の外側にスモークサーモンを巻いた太巻きは、なぜか「フィラデルフィア」という。外側に天かすをまぶした太巻きは、サクッとした食感が好まれている。ガリやワサビも、スーパーで見かけるようになってきた。

カザフ人にとっては温かい肉料理こそが食事なので、スシはあくまでも軽食である。パーティーでは、冷たい前菜として出されると聞く。来日経験のある人は、「スシは日本の寿司とは別物」というが、若者たちは「なんでもご飯と一緒に巻いてあるスシ」がおいしいという。決して安くはないのだが、都会のしゃれた味のひとつなのだろう。

まだまだ日本文化に直接触れる機会の少ないカザフスタンで、スシはロシア経由で広まったようだ。食文化の一角に根付きつつあるスシが、どのような変化を遂げていくのか楽しみだ。

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