国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

旅・いろいろ地球人

日本から遠く離れて

(2)ガラパゴス探検  2018年10月13日刊行

丹羽典生(国立民族学博物館准教授)


朝枝利男がガラパゴス諸島(南米エクアドル)を訪問したのは、1932年のことである。米国カリフォルニア科学アカデミーのテンプルトン・クロッカー調査隊に、朝枝はカメラマンとして参加していた。

同アカデミーは、ガラパゴス諸島への探検隊を05年にはやくも派遣するなど草分け的な組織であった。朝枝が参加したのは、その2回目の調査隊であった。

博物学や地理学に、そもそも学問の情熱を抱いていた朝枝はガラパゴス諸島にも魅了されたようである。鳥類、爬虫類などをはじめとする動物から植物まで数多くの自然環境の写真を残している。

また日本から遠く離れ、外国人の調査隊に唯一の日本人として参加するという異邦人的境地にいたためであろうか、ガラパゴス諸島に集う風変りな外国人の姿も活写している。ドイツ人のヌーディストである。

生前に彼が残した太平洋に関する文章はあまり見つかっていないが、彼らとの出会いは、日本の雑誌に寄稿されている。なお彼が出会った風変りな外国人夫婦は、伊藤秀三・長崎大名誉教授の作成した年表を参照すると、朝枝と会った後に夫は死亡、妻はガラパゴスの地を去ったということである。まさに一期一会。他ではあり得ぬ数奇な出会いであったといえようか。

シリーズの他のコラムを読む
(1)「朝枝利男とは誰か」
(2)「ガラパゴス探検」
(3)「スナップ写真」
(4)「収容所体験と戦後」