国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

旅・いろいろ地球人

南米アマゾンの旅

(1)川を航行する  2018年11月10日刊行

齋藤晃(国立民族学博物館教授)


雨期の村。増水した川が近くまで迫っている=南米ボリビア・ベニ県モホス郡で1995年2月、筆者撮影

南米の中央に位置するボリビアは、日本ではアンデス高地の国として知られているが、実際には国土の3分の2は熱帯低地である。南米を東西に貫くアマゾン川の流域はボリビアにも及んでおり、そこでは高温多湿の気候のもと、森林と草原が広がり、無数の川が蛇行している。

ボリビア・アマゾンでは道路網は発展途上である。しかも、雨期には土地の大半が水没してしまうため、移動経路として河川が重要である。地元の人はもっぱら丸木のカヌーを使って川を行き来する。漁労に出かけるときや隣村を訪れるときカヌーが活躍するが、農作物を都市で売るため、数日がかりで川をさかのぼることもある。

川の航行はとても時間がかかる。オールの推進力は弱く、カヌーは遅々として進まない。船外機付きの船なら速度は格段に増すが、川が大きく蛇行しているため、走行距離のわりには目的地に近づかない。川岸の風景はどこも似たり寄ったりで、同じところをぐるぐる回っている錯覚に陥る。

それでも、川の旅は楽しい。水の上はひんやりして気持ちがいいし、蚊もほとんどいない。乾期にはイルカやカメ、樹上のサルや多彩な水鳥が目を楽しませてくれる。なによりも、どこまでも続く広大な川と森が、旅心を刺激してやまない。

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(1)「川を航行する」
(2)「草原を横断する」
(3)「空を飛ぶ」