国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

旅・いろいろ地球人

南米アマゾンの旅

(3)空を飛ぶ  2018年11月24日刊行

齋藤晃(国立民族学博物館教授)


空から眺めた乾期のモホス平原=南米ボリビア・ベニ県モホス郡で1997年7月、筆者撮影

南米ボリビア・アマゾンでは小型飛行機による空の移動が盛んである。裕福な牧場主は飛行機を所有し、それを使って牛肉を都市に運搬し、日用品を買い付ける。また、旅行客の依頼に応じて飛行機を飛ばす旅客運送業者もいる。近年では、定期便を運行する会社もある。

モホス平原は小型飛行機による移動に適している。起伏のない真っ平らな草原は、生い茂る草木を定期的に刈り取るだけで、飛行場に変貌する。実際、比較的大きな町ならだいたい飛行場を備えているが、その実体は単なる放牧場にすぎない。飛行機の離着陸のときだけ、牛を追い払うのである。

飛行機の旅は圧倒的に効率がいい。船や馬で数日かかる行程を、あっという間に飛んでしまう。ただし、制約も少なくない。行き先が限られるし、天候にも左右される。少しでも雨が降れば、小型飛行機は飛ばない。ホテルの窓から空模様をうかがい、パイロットからの電話をいまかいまかと待ちながら、ときには幾日も無為にすごすはめになる。

飛行機の窓から眺めるモホス平原はちょっとしたスペクタクルである。どこまでも広がる緑の大地、うねうねと蛇行する茶色い川、おもちゃのような牛の群れなど、見ていてあきない。

シリーズの他のコラムを読む
(1)「川を航行する」
(2)「草原を横断する」
(3)「空を飛ぶ」