国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

旅・いろいろ地球人

多文化の中の子育て

(3)食のあれこれ  2019年2月16日刊行

松尾瑞穂(国立民族学博物館准教授)


スリランカの母子手帳。離乳食の初期には母乳を混ぜることが推奨されている=スリランカで2018年、筆者撮影

食の問題は、毎日のことであるために、複数の文化が混じったミックスドカルチャーな環境における子育てにおいて、葛藤を生み出しやすいことの一つである。

宗教によってさまざまな食のタブーが存在する、ということはよく知られている。代表的なものとして、イスラム教では豚肉とアルコールがタブーで、ヒンズー教では牛肉、ジャイナ教では肉類に加えて、土中で育つ植物の摂取が忌避される、といったことである。

学校給食ではそうした複雑な事情に対応することは難しい面もあり、多くのミックスドカルチャー家庭では、子どもには弁当を持たせたり、特定の食品を除去したりして対応していることが多い。普段は食べられるものも、祭礼などの期間だけは食べられないということもある。そうした事情を理解してもらうことも重要になる。

さて、食べられないものだけでなく、何を食べさせるのかということも文化の違いがあって面白い。インドでは、離乳食期に入るとターメリックから始まって、少しずつスパイスを取り入れていく。赤唐辛子は避けられるものの、日本の離乳食と比べると、砂糖も塩も結構使われている。だしを基本とする日本の離乳食本を読みこんだ私からすると、なんとも受け入れがたい離乳食だった。

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