国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

旅・いろいろ地球人

多文化の中の子育て

(4)言葉と教育  2019年2月23日刊行

松尾瑞穂(国立民族学博物館准教授)


関西初のインド系学校CSAIS京都校の教室=京都市伏見区向島で、筆者撮影

子どもの学校や教育法に悩むのは、どこの家庭も同じだろう。ただ、ミックスドカルチャー家族にとっては、教育は学校の善しあしという以上に、どんな言語で、どのような文化のなかで育つのかという問題にも関わっている。

親は、できれば自分の母語で子どもとコミュニケーションを取りたいと願うが、日本生まれの子どもにとって、複数言語の習得はそれほど容易ではない。国際結婚は子どもがバイリンガルになっていいですね、と言われることがあるが、親の言語を「言っていることはわかる」というレベル以上にきちんと習得するためには、相当の学習が必要となる。移民家族でも、2世、3世と世代が下るにしたがって、母語が変化するのは、世界共通の現象だ。

長い時間を過ごす学校は、子どもの言語や文化の習得に大きな意味を持つ。そのため、予算さえ許せば、インターナショナル・スクールやエスニック・スクールという選択肢もある。ただ、朝鮮学校、中華学校、ブラジル学校などはあるが、まだまだ日本には多様な学校が少ない。

そんななか、昨年4月に英語でインドの教育を受けることができる、関西初のインド系学校が開校した。教師は、インド人と日本人からなるという。生徒はまだ少数だというが、新しい取り組みに注目している。

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