国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

旅・いろいろ地球人

タイを味わう

(4)癖のある味  2019年7月27日刊行

大澤由実(国立民族学博物館機関研究員)


市場で売られているプラーラー=タイ王国チェンマイ県で2018年、筆者撮影

バンコクのオフィス街にある東北タイ料理店でお昼を食べていたときのことだ。10人ほどのグループが入店してきた。どうやら彼らは、プラーラーを食べる人、食べない人で席をわけて座ろうとしているようだ。

プラーラーは、米糠や煎った米粉と塩を加えた魚を発酵させたもので、魚醤の一種だ。日本でもおなじみのタイの魚醤、ナンプラーに比べて匂いが強く、見た目は濁っている。

東北や北タイでよく使われる調味料だが、癖のある味のせいか、バンコクなどでは苦手とする人も多い。本来はプラーラーを使う料理を、プラーラー抜きで作ることもできる。しかし、プラーラー好きにとっては、それだと全く物足りない。プラーラーは、使われる魚の種類、大きさ、発酵の度合いなどで種類が異なる。手作りのものが多く、作り手やお店によって味も違う。こだわりのプラーラーを持っている人もいるほどだ。

タイで食文化の調査をしていると、逆に質問をされることがある。「辛いものは食べられるか?」「ドリアンは好きか?」そして「プラーラーは食べられるか?」。

純粋に外国人の筆者への興味からくる質問かもしれないが、この外国人はどこまでタイの味をわかっているのか?と試されているような気にもなるのである。

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