国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

旅・いろいろ地球人

韓国に特有のこと

(3)化粧する青少年たち  2020年1月18日刊行

太田心平(国立民族学博物館准教授)


韓国で人気を博する男性用の色付きリップ=2019年11月、筆者撮影

大学の韓国文化論の授業は、韓国社会の伝統的な男尊女卑や、軍国主義に発した現代のマッチョ志向に、必ず言及する内容。だが、昨今の学生は「?」という反応をする。

韓国の男性の美意識は、この20年間で激変した。1990年代の男性の多くは、「服なんか、母や妻に買わせるもの」と言っていた。彼らに美意識がなかったのではない。「男子たるもの、見てくれは二の次」という別の美意識があったのだ。

だが、2000年代の韓国男性は違った。服や靴、そして基礎化粧品に相当の金と時間を費やしはじめた。10年代になると、ベーシックながら一部が可愛いデザインの、韓国チックな男性服が、世界でも知られるようになっていった。

そして、基礎化粧の効果か、驚くほど美肌の青少年が、韓国にあふれはじめた。ファンデーションまで付ける韓国男子も、世界の若者をざわつかせた。だから、日本だけでなく欧米の大学の授業でも、旧世代の教員の話に、学生たちは首をかしげている。

ただ、口紅を塗る韓国の青年たちにワケを聞き、私はハッとした。「既存の男性像と自分を区別するため」のような声の多いこと。だとすれば、彼らのことは歴史的文脈を知らねば理解できないし、当事者にとっても化粧はかなり男性性に余裕があるからこそできることなのでは?

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