国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

旅・いろいろ地球人

韓国に特有のこと

(4)急速な国民の再編成  2020年1月25日刊行

太田心平(国立民族学博物館准教授)


ソウルからニューヨークに飛行機が到着した。乗客には移民も少なくない=2018年7月28日、筆者撮影

単一民族神話とか均質社会とかいうと、日本に特有のことのように思われがちだ。しかし、お隣の朝鮮半島も、高度に統合された社会を築いてきた。その韓国の社会が、ここ20年で多文化社会へと激変している。

高度経済成長で都市中産階層が急増し、特に首都圏は人口の過半数を擁するまでになった。反面、農村の過疎化は止まらず、1990年代に嫁不足が深刻に。結果、東南アジアなどから花嫁を迎えるようになり、婚姻届の8割以上が国際結婚という自治体まで次々と現れた。いまや全国平均でも8%以上の世帯が「多文化家庭」。この変化の速さが韓国だ。

他方、流出する人口も目を引く。20世紀に朝鮮半島から流出した人口は実に1割。70年代までは、貧しさゆえの移民が主だったが、80年代には、上昇志向の上流階層の移民も目立った。多くは米国を目指した。

では、先進国になった現在、韓国から移民は出ないのか。いや、むしろ人口流出は加速している。例えば近年には、韓国社会の生きづらさから逃れ、自分らしく暮らせる場所を見つけようという若者で、北欧や中欧の韓国系人口が急増した。

4週にわたり韓国に特有のことをつづった。我々の常識だけで判断すると不可解な韓国の事情でも、背景や文化の違いを加味して考えれば、案外すんなり腑に落ちるものである。

シリーズの他のコラムを読む
(1)元日はみんなが歳をとる日
(2)キャッシュレス先進国の気持ち
(3)化粧する青少年たち
(4)急速な国民の再編成