国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

旅・いろいろ地球人

南太平洋に住む客家

(2)タヒチの春節と元宵節  2020年2月8日刊行

河合洋尚(国立民族学博物館准教授)


チャイナドレスを着て春節を祝うポリネシア系の少女(手前)=2018年2月、筆者撮影

タヒチという地名を聞いて日本でイメージされがちなのは、真珠、ハネムーン、ゴーギャン、楽園であろう。中国人を思い浮かべる人はそう多くないはずだ。だが、実際にタヒチへ行くと、中国系の顔をした人々や、中国語の看板を掲げた建物をよく見かける。タヒチではアジア系で最も多いのが中国人、特に中国広東省から移住した客家である。

私が初めてタヒチを訪れたのは、2017年2月である。中国の春節(旧正月)にあたる期間であった。春節期間中、中心都市パペーテの中央市場では、中国風の飾りつけがなされる。そこに足を踏み入れると、チャイナタウンにいるような気分になる。パペーテや郊外の街でも、銅鑼や太鼓の音が鳴り響き、あちこちで獅子舞が催される。客家や他の中国系住民だけでなく、現地在住のポリネシア人やフランス人なども獅子舞に参加し、中国の祝日を祝う。

旧暦1月15日の元宵節は、春節より盛大な祭りが催される。この日は日が暮れると多くの人々が、パペーテの関帝廟に集まる。そして、客家を中心とする人々が、歌や踊りを20演目ほど、披露する。中国広東省でも、元宵節になると派手な祭りが催される。タヒチの客家は、遠い南国の島に来ても、祖先から伝わる祭りを大切にしているのである。

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