国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

本州とその周辺の島々及び多島海的海域における民俗芸能の研究(2015-2019)

科学研究費助成事業による研究プロジェクト|基盤研究(C) 代表者 笹原亮二

研究プロジェクト一覧

目的・内容

本州とその周辺には、孤島・諸島・多島海的海域、一島一集落の島から一島一国の島まで、存在形態や規模が異なる多くの島嶼が存在する。それらの島嶼の民俗芸能は、その島独自のもの、近隣の島々や周辺各地と共通するもの、周辺各地と共通しつつも様々な違いがあるもの、遠方の島々や地域と共通するもの等があり、複雑な分布の様相を呈している。こうした民俗芸能の多様性は、古来航路上にあって人・物・情報が繁く往来した開放性、漁民や海民の活動圏や旧国・旧藩の区画に繰り込まれた領域性、四囲を海で囲まれた地理的制約から醸成された地域社会としての自律性といった、島嶼が有する特質や、それぞれの地域独特の歴史や文化に基づいて成立した地域性と深く関わっている。本研究では、そうした本州とその周辺の島々の民俗芸能の実態を、島嶼の開放性・領域性・自律性・地域性の交錯の中で形成・伝承されてきた島嶼世界の民俗文化として解明する。

活動内容

2019年度活動報告

文献等の資料調査・情報収集に関しては、新潟市立中央図書館・新潟県立図書館・佐渡市立図書館・柏崎市立図書館・柏崎市立博物館において、佐渡島や対岸の新潟県下越地方の民俗芸能と祭に関する資料調査、隠岐の島町図書館において、隠岐の民俗芸能と祭と闘牛に関する資料調査、石川県立図書館・七尾市立図書館において、能登島を初め能登地方の民俗芸能と祭に関する資料調査を行い、論文や調査報告等の文献資料や情報を収集し、本研究の研究対象地域の民俗芸能と祭等の全般的な様相の把握を行った。
以上の資料調査・情報収集と併行して、佐渡島では、佐渡市羽茂本郷の草刈神社・菅原神社のツブロサシ・大獅子・鬼太鼓・猿田彦・鷺流狂言・能、同市高千地区の鬼太鼓・御太鼓・豆蒔き・花笠踊、同市岩首の熊野神社の鬼太鼓・大獅子、同市徳和の大椋神社の鬼太鼓、同市下久知の八幡宮の巫女神楽・大黒舞・トウトウ(刀刀)・鬼太鼓・花笠踊・さがり羽・流鏑馬、対岸の新潟県域の魚沼市堀之内の八幡宮の盆踊(大の阪)について、隠岐では、隠岐の島町久美の伊勢命神社の久美神楽、同町那久の壇鏡神社の八朔祭、同町佐山の牛突き(闘牛)について、伊勢志摩地方では、伊勢市大淀町の大淀祇園祭の曳山・囃子、志摩市磯部町渡鹿野島の祇園祭、及び周辺の北勢地方の亀山市関町の祇園祭の曳山・囃子について、宮城県三陸地方では、女川町の江島法印神楽、加美町切込の裸カセドリ、石巻市十三浜の春祈祷(獅子舞)について、能登島と能登地方では、輪島市門前町の正月行事(アマメハギ)、同市輪島崎町の輪島前神社の正月行事(面様年頭)、七尾市能登島の神社の所在や集落の立地について、それぞれ現地調査を実施し、上演の様相等に関する写真・動画映像等の資料を作成・収集した。
また、本研究の最終年度として、研究期間中に収集した各種資料の整理と研究全体の成果の集成を行った。

2018年度活動報告

文献等の資料調査・情報収集に関しては、志摩市立図書館・伊勢市立伊勢図書館等において、伊勢志摩地方の民俗芸能と祭に関する資料調査、佐渡市立中央図書館・村上市郷土資料館等において、佐渡島や対岸の新潟県下越地方の民俗芸能と祭に関する資料調査、愛媛県立図書館において、愛媛県域の民俗芸能と祭と闘牛に関する資料調査、隠岐の島町立図書館において、隠岐の民俗芸能と祭と闘牛に関する資料調査、岩手県立図書館において、岩手県域の祭と民俗芸能と闘牛に関する資料調査を行い、論文や調査報告等の文献資料や情報を収集し、本研究の研究対象地域の民俗芸能と祭等の全般的な様相の把握を行った。
以上の資料調査・情報収集と併行して、伊勢志摩地方では、志摩市磯部町の伊雑宮の御田植祭、同市大王町船越の大念仏と盆踊、同市志摩町越賀の大念仏、同市同町和賀の盆踊、同市浜島町浜島のダンボ(大念仏)、鳥羽市国崎町の大念仏、鳥羽市答志島の神祭の三番叟、南伊勢町大江の大念仏、南伊勢町船越の御頭神事(獅子舞)、玉城町宮古の石風呂神事・御頭神事(獅子舞)、松阪市猟師町のかんこ踊、度会町麻加江のかんこ踊、及び周辺地域の鈴鹿市の天王祭の曳山・獅子舞、桑名市の石取祭の祭車・囃子等について、佐渡島では、佐渡市赤玉の大鬼舞・シシ踊・花笠踊、同市西三川の獅子舞、同市下久知のトウトウ・花笠踊等について、宮城県三陸地方では、女川町小乗浜・尾浦・石浜・高白・女川浜・鷲神の獅子振り、石巻市沢田・大森・堀之内の獅子振り(獅子風流)等について、瀬戸内海海域では、八幡浜市の四つ太鼓・御車・御座船・唐獅子・五鹿踊、隠岐では、隠岐の島町池田の隠岐国分寺の蓮華会舞について、闘牛では、岩手県久慈市の闘牛、愛媛県宇和島市の突き合いについて、それぞれ現地調査を実施し、上演の様相等に関する写真・動画映像等の資料を作成・収集した。

2017年度活動報告

文献等の資料調査・情報収集に関しては、三重県立図書館・伊勢市立伊勢図書館等において、伊勢志摩地方の民俗芸能と祭に関する資料調査、三宅島郷土資料館等において、伊豆諸島の民俗芸能と祭に関する資料調査、新潟市立中央図書館・新潟県立図書館等において、佐渡島の民俗芸能と祭や闘牛に関する資料調査、宮城県図書館・仙台市民図書館・仙台市歴史民俗資料館等において、宮城県三陸地方と岩手県三陸地方の民俗芸能と祭に関する資料調査を行い、論文や調査報告等の文献資料や情報を収集し、本研究の主要な研究対象地域の民俗芸能と祭等の全般的な様相の把握を行った。その他、沖縄県立図書館・隠岐の島町立図書館等においても、各地の民俗芸能と祭や闘牛に関する資料調査を行った。
以上の資料調査・情報収集を踏まえて、伊勢志摩地方では、伊勢市楠部町の田植の神事と芸能、志摩市阿児町甲賀の大念仏行事・鼓踊、同市同町安乗の大念仏行事、同市大王町船越の盆踊、南伊勢町方座浦・贄浦の浅間祭、同町泉の大念仏・火振・盆踊、同町阿漕浦の大念仏、同町道方の盆踊、度会町下久具の御頭神事、松阪市松ヶ崎のかんこ踊等について、伊豆諸島地域では、三宅島神着の木遣太鼓、同島富賀神社の祭の木遣歌・太鼓・獅子舞、熱海市初島の鹿島踊等について、佐渡島では、佐渡市北田野浦の花笠踊、同市徳和の大獅子・鬼太鼓・豆蒔き、同市真野新町の獅子舞、同市両津湊の獅子舞・鬼太鼓・下り羽・芸山車、同島外海府地域の鬼太鼓・獅子舞等について、宮城県三陸地方では、石巻市雄勝町大浜の雄勝法印神楽、気仙沼市松崎中瀬・唐桑町竹の袖の本吉太々法印神楽、石巻市沢田・女川町女川浜・鷲神・竹の浦の獅子振りについて、闘牛では、新潟県小地谷市・長岡市の角突き、愛媛県宇和島市の突き合い、沖縄県うるま市の闘牛について、それぞれ現地調査を実施し、上演の様相等に関する写真・動画映像等の資料を作成・収集した。

2016年度活動報告

文献等の資料調査・情報収集に関しては、三重県立図書館・伊勢市立図書館等において、伊勢志摩地方の民俗芸能と祭に関する資料調査、国立国会図書館・八丈島歴史民俗資料館・大島町郷土資料館等において、伊豆諸島の民俗芸能と祭に関する資料調査、新潟市立中央図書館・新潟県立歴史博物館等において、佐渡島の民俗芸能と祭に関する資料調査を行い、論文や調査報告等の文献資料や情報を収集し、それぞれの地域における民俗芸能とそれらが行われる祭の全般的な様相の把握を行った。その他、福岡県立図書館・神戸市立中央図書館・沖縄県立図書館・うるま市立石川歴史民俗資料館等において、各地の民俗芸能と祭に関する資料調査を行い、文献資料や情報を収集した。
以上の資料調査・情報収集を踏まえて、伊勢志摩地方では、志摩市安乗の人形三番叟、同市立神の宇気比神社ひっぽろ神事の獅子舞、同市三カ所の阿津麻里崎神社の当屋行事と獅子舞、同市鵜方の宇賀多神社の獅子舞、伊勢市有滝町の八玉神社の御頭神事、同市辻久留の上社の御頭神事、同市小俣町本町の官舎神社の御頭神事、同市村松の宇気比神社の御頭神事、玉城町山神の獅子舞神事、度会町脇出の一之瀬神社の祭の獅子舞について、伊豆諸島では、八丈町の樫立踊・八丈太鼓等、大島町元町の吉谷神社の正月祭の神事・神子舞・手踊等について、佐渡島では、佐渡市新穂の日吉神社の祭の流鏑馬・鬼太鼓・下り羽、同市金井の新保八幡神社の祭の流鏑馬・鬼太鼓・下り羽・文弥人形、同市三川の春日神社の祭の大獅子・鬼太鼓・下り羽について、瀬戸内海東部では、徳島県阿南市橘町の海正八幡神社の祭のダンジリについて、沖縄では、うるま市石川の闘牛について、それぞれ現地調査を実施し、上演の様相等に関する写真・動画映像等の資料を作成・収集した。
本研究の成果の一部は、平成26年9~11月に開催した国立民族学博物館特別展「見世物大博覧会」において公開した。

2015年度活動報告

平成27年度、資料調査・情報収集に関しては、三重県立図書館・鳥羽市立図書館・三重県総合博物館・海の博物館等において、伊勢志摩の多島海的海域の民俗芸能と祭に関する先行研究等の調査、東京都立中央図書館等において、伊豆諸島と伊豆半島地域の民俗芸能と祭に関する先行研究等の調査、新潟県立図書館・新潟市立中央図書館・佐渡市立中央図書館・佐渡博物館等において、佐渡島の民俗芸能と祭に関する先行研究等の調査、宮城県立図書館・仙台市民図書館等において、牡鹿半島とその周辺地域の民俗芸能と祭に関する先行研究等の調査を行い、論文や調査報告等の必要な資料を収集し、それぞれの地域における民俗芸能とそれらが行われる祭の全般的な概況の把握を行った。また、瀬戸内海海域の民俗芸能と祭について、既収集の文献等の資料の整理を行い、全体的な様相の把握を試みた。
以上の調査・情報収集に基づき、伊勢志摩の多島海的海域では、三重県伊勢市御園町上條の大念仏かんこ踊と手筒花火、同伊勢市御薗町小林の大念仏かんこ踊と手筒花火、同志摩市大王町波切の大念仏、同鳥羽市松尾町の火祭と大念仏等の盆の民俗芸能、同志摩市浜島町薬師堂の火渡り、同志摩市安乗町安乗神社の注連切り神事と獅子舞、同大紀町錦八幡神社の八幡祭の山車の巡行と祝歌、同南伊勢町方座浦の弓引き神事、同志摩市浜島町宇気比神社の盤の魚神事と弓引き神事、同度会町棚橋の御頭神事、同南伊勢町船越八幡神社の弓引き神事と御頭神事等の正月の民俗芸能ついて、佐渡島では、新潟県佐渡市小木町木崎神社の祭のチトチントン・鬼太鼓・小獅子舞・大獅子、同佐渡市下川茂五所神社の御田植神事、同佐渡市小比叡神社のやぶさみ式と田遊びについて、牡鹿半島とその周辺地域では宮城県石巻市雄勝町名振の火伏せ祭の山車の巡行・俄と獅子舞について現地調査を行い、上演の様相等に関する写真・動画映像等の資料を作成、収集した。