国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

宣教と適応―グローバル・ミッションの近世(2019)

科学研究費補助金による研究プロジェクト|研究成果公開促進費(学術図書) 代表者 齋藤晃

研究プロジェクト一覧

目的・内容

大航海時代から啓蒙時代にかけて、カトリック教会の宣教活動は地球規模に拡大し、キリスト教信仰はグローバル化した。世界各地に派遣された宣教師は、赴任先の言語や知識を学び、規範や慣習を身につけ、地元社会に溶け込むことで、現地人の改宗を促そうとした。本書では、宣教師のこの異文化適応に焦点を当て、ローカルな事例の比較とヨーロッパの文明観・人間観の検討を通じて、その歴史的意義を解明する。近世カトリックの適応方針は今日の文化相対主義の先駆けとみなされているが、この評価は正しいのだろうか。また、各地域の現地社会にとってその意味はどのようなものだったのか。さらには、18世紀ヨーロッパの啓蒙思想がカトリックの世界宣教に負うものがあるとすれば、それは何か。これらの問いに答えるため、本書は宣教師の適応を赴任先のローカルなコンテクストに位置づけて、通文化的実践としてのその特徴を探る。また、宣教師が適応に与えた理論的根拠を、世界の諸文化の多様性をめぐるヨーロッパ思想の流れに置き戻し、その思想史的な意味を明らかにする。