平成22年度国立民族学博物館 文化資源研究センター事業 博学連携ワークショップ「学校と博物館が学びあえる場の構築をめざして」報告書 国立民族学博物館 文化資源研究センター 序文 国立民族学博物館(民博=みんぱく)文化資源研究センターは、2004年4月、民博が大学共同利用機関法人人間文化研究機構の一員として再編されたのを機に、博物館機能を有する研究所としての役割をより十全に発揮するために設置されました。文化資源研究センターは、研究活動を通じて蓄積されるさまざまな情報や資料、経験や組織を、社会での活用が可能な文化資源として改めてとらえなおし、その有意義な活用の方途を研究・開発することを目的としています。 近年の、高度情報化社会や少子高齢化社会、本格的な地方の時代の到来といった大きな社会構造の変化、そして人びとの学習意欲の高まりや学習要求の多様化にともない、民博では参加体験型の展示の整備やワークショップの実施、市民の主体的な活動の支援などといった、公共社会への双方向的・多方向的な取り組みを行うようになってきています。 民博の公共社会への働きかけは、創設とともに始まりました。しかし、民博が、今後より積極的に博物館機能を活用した公共社会へのフォーラム性をともなった展開を実施し、利用者が自ら考え、判断し、主体的に行動するための支援を有効なものにしていくためには、さらに一層、その目的・意義を明確にし、館内外で共有していく必要があります。また、利用者の博物館における学びにはさまざまな要素があり、その今日的な課題を踏まえた、教育学からの視点と実践をはじめとする関連諸分野の力添えも大切になります。 文化資源研究センターでは、こうしたねらいを基に、今回、「博学連携ワークショップ」を開催いたしました。共同利用による学際的専門知の社会的活用の方法論をフォーラム性をともなった形で探ることによって、民博の研究活動の質的な充実が図られるだけではなく、学校や地域社会、そして多くの博物館の教育・社会活動、研究活動がさらに推進されるのではないかと期待しています。 今回の「博学連携ワークショップ」が、多くのワークショップ参加者、さらには本報告を読まれる多くの方々にとっても意義あるものとなることを祈っております。 平成23年3月31日 国立民族学博物館 文化資源研究センター長 小林繁樹 目次 序文 1ページ 目次 2ページ 開催趣旨 3ページ 事例紹介  公立中学校による国立民族学博物館を利用しての学習 6ページ ワークシートから始まる連携 −学芸員・教員・生徒− 8ページ ワークショップ報告  博物館で授業のアイデアを!! 11ページ 骨のある生活(後)−No hone No life−(1班) 13ページ 調べよう!世界の住まいと家族(2班) 14ページ 水道のない山の中でお茶を飲もう:飲料水を運ぶには??(3班) 15ページ みんぱくでクッキング(4班) 16ページ みんぱくで色探し(5班) 17ページ 色の組み合わせを考えてみよう(6班) 18ページ はっぱはどこ?(7班) 19ページ 自然史の視点から民博を見た授業案(8班) 20ページ 世界のお祭りを調べよう(9班) 21ページ 点字で異文化体験(10班) 22ページ 講演・講評  講演:新しい公共の時代に −学校のあり方、博物館のあり方− 24ページ ワークショップ講評@ 26ページ ワークショップ講評A 28ページ 第1回 - 第3回の担当者から  第1回担当者としての思い 31ページ 第2回、第3回に関わった立場から 33ページ ミュージアム・ティーチャーに関する調査報告 35ページ 資料編  博学連携ワークショップのチラシ・申込書 38ページ アンケート集計結果 41ページ 跋文 47ページ 開催趣旨 国立民族学博物館  五月女賢司 近年、学校と博物館の連携の重要性が叫ばれている。特に、小学校では2011(平成23)年度から、中学校では2012(平成24)年度から完全実施される新学習指導要領には、博物館や郷土資料館等の施設の活用を図るべきであるとすることがこれまでの学習指導要領以上に謳われており、学校と博物館が連携を強化することは喫緊の課題となっている。一方、前回の学習指導要領改定時に導入された「総合的学習の時間」は小・中学校共にその授業時数が約2/3に縮減されるなど、学校が自由な枠組みで博物館を利用することが難しい時代に入ってきている。 民博でも、限られた授業時数の中でより一層効果的な学習デザインを学校に対して提供することが求められている。民博は、大学共同利用機関として日本における文化人類学・民族学の研究拠点となっており、これまでもその研究成果を学校に還元し、児童・生徒の自発的学びにつなげたり、創造性を涵養したりすることに貢献してきたが、今後はより学校教員さらには地域社会と共に児童・生徒の学びを作り出す方策を考える必要があろう。 博学連携ワークショップは、2008(平成20)年2月に滋賀県立琵琶湖博物館で「ミュージアム・ティーチャー・ワークショップ」として開催されたのが始まりである。その後、2009(平成21)年3月には北九州市立自然史・歴史博物館(いのちのたび博物館)で、また2010(平成22)年3月には関東地区に会場を移し、船の科学館の元青函連絡船“羊蹄丸”内「アドミラルホール」で「博学連携ワークショップ」と名称を変更してそれぞれ開催された。これらのワークショップはこれまで、学校教員と博物館職員が、学校と博物館の様々な連携を想定した博物館の活用例を共に考え学びあえる場をつくってきた。このような学校と博物館が共に考える機会は国内でも限られているため、毎年参加者から「継続実施してほしい」という声がたくさん聞かれた。 そうした声を受け、第4回目となる今回は、博学連携の事例紹介やワークショップ、情報交換会などを通じ、博物館が様々な分野・切り口から幅広く学校や地域社会とつながり、あらゆる分野の博物館が教室になり得る事を学校教員、博物館職員、市民が共に知ることを目的として開催した。実施概要は以下の通りである。 実施日時:2011(平成23)年2月20日 10:00-19:00 場所:国立民族学博物館 本館2F 第5セミナー室、本館展示場 対象:博学連携に関心のある学校教員、博物館職員、その他関心のある方 主催:国立民族学博物館 文化資源研究センター 後援:吹田市教育委員会、日本ミュージアム・マネージメント学会、全日本博物館学会、日本国際理解教育学会 参加人数:計84名(ワークショップ参加者60名、情報交換会からの参加者2名、準備グループメンバー(館外協力者)11名、準備グループメンバー(館内)5名、準備グループメンバー以外の講演者・講評者2名、事務局4名) 当日プログラム: 10:00 - 10:15 受付 10:15 - 10:45 挨拶・趣旨説明・各班自己紹介 10:45 - 11:15 事例紹介  古川岳志(吹田市立第一中学校・教諭)「公立中学校による国立民族学博物館を利用しての学習」  佐久間大輔(大阪市立自然史博物館・学芸員)「ワークシートから始まる連携 −学芸員・教員・生徒−」 11:15 - 11:30 ワークショップの説明  釋知恵子(大阪市立自然史博物館・教育スタッフ)「博物館で授業のアイデアを!!」 11:30 - 15:30 昼食・館内見学・ワークショップ 15:30 - 16:10 各班ワークショップ成果発表会 16:10 - 17:00 講演  上月正博(文部科学省 生涯学習局・政策課長)「新しい公共の時代に −学校のあり方、博物館のあり方−」 17:00 - 17:20 ワークショップ講評  松井静子(吹田市教育委員会 学校教育部 学校教育室・室長)  布谷知夫(滋賀県立琵琶湖博物館 環境学習センター・所長) 17:00 - 17:20 アンケート記入 17:30 - 19:00 情報交換会 このようなワークショップの開催は、全国の学校教員、博物館職員、市民が、各々の職場や地域社会において博学連携につながるきっかけをつかみ、人と人、学校と博物館と地域社会のネットワークを構築するための一助になり得る。 以上のような開催目的を基本として、本ワークショップは学校教員や博物館職員、市民が学び合える場を創造することを目指した。また、共に学び合うことが、結果として博物館資料を用いた児童・生徒の学びにつながるということを再認識することも目指した。博学連携ワークショップというと、学校と博物館の二者の関係性を念頭に置いた考え方であると捉えられがちだが、今回のワークショップは学校と博物館という二分法ではなく、その両者が、地域住民やPTA、大学、社会教育施設、NPO、公益法人、さらには民間企業などといかにつながっていくべきなのかという、大きなコミュニティーレベルの地域連携に目を向けたワークショップにしたいと願った。またそれと平行して、今後、学校同士や博物館同士の連携がより促進されることも重要である。以上のような様々に交差した「つながり」の促進のために、ワークショップのほかに情報交換の場を設けたほか、参加者名簿も配付した。 本ワークショップが、学校、博物館、地域社会を結び、児童・生徒の博物館資料を用いた学びにつなげる方策を共に考え、学校や博物館、地域社会においてさらなる実践を行うきっかけを作る上で、少しでも意義があったと感じていただける会となったことを願っている。 事例紹介 公立中学校による国立民族学博物館を利用しての学習−大阪府吹田市立第一中学校での取り組み− 吹田市立第一中学校  古川岳志 1.はじめに 民博の地元である吹田市では、小中学校で比較的多くの学校(2010(平成22)年度、市内の小学校11校、中学校10校)が校外学習や総合的学習の取り組みの一環として万博公園にある民博を利用した活動を行ってきている。この意味、これから報告しようとする第一中学校の取り組みは特別なものではないといえる。しかし、本校には独自に設定した観点があり、取り組みの歴史があるので、以下、それを簡単に報告させてもらいたいと思う。 吹田市立第一中学校は、吹田市千里山にある古くからの住宅地を校区とする公立中学校である。学校は、3学年18学級、支援学級2学級、全校生徒数約650名、教職員数47名のやや大きめの規模の学校である。校区は大きな社会的移動も少なく、保護者には本校出身の人々も多く、市内でも学校や教育に比較的高い関心をもっている地域である。 過去、第一中学校では、1年生の春の校外学習で民博を見学し、9月に行われる「一中フェスタ」(=総合的学習の発表の場)での仮面などの製作展示を行ってきた。これは「国際理解教育」の一環として計画され、世界の地域・国々についての調べ学習と同時に展示発表されてきた。この取り組みに、生徒の人間的成長の視点で新たな目標設定を行い、言語活動的要素をより強化したものが、ここで報告する内容となる。 2.2006(平成18)年度の取り組み この年度から、生徒の課題を考慮して新しい観点の導入を部分的に行い、その反省と改良が現在の取り組みとなっている。なお、この年度の取り組みは、特別展を利用したもの と仮面作りの2つからなっている。この年度は、2つの仮面を製作した。1つは民博展示の仮面と同じもの、他は相反する感情を表すオリジナルな仮面を自由に製作するとした。素材も、現在の紙テープを使用するものとは異なったもの(紙粘土)も使用した。 しかし、この年度製作された「かわいい」仮面やキャラクターを模した仮面を見て、民博を利用しながら、自由に仮面を製作することが総合的学習として適切かという反省が生じた。生徒たちがつくる安易なデザインの作品に疑問が出たのである。 3.2009(平成21)年度の取り組み −3つの目標− 2009(平成21)年度は、上記の2006(平成18)年の反省に基づき、オーソドックスな内容を追及した。設定目標は、ア)調べ、まとめ、言葉で表現する、イ)民博にある仮面とそっくりにつくる、ウ)民博に2回行く、とした。取り組む具体的事柄は、常設展を利用しての「仮面作り」と「調査発表展示」である。徹底的に常設展のみにこだわって活動を行うこととしたのである。 (ア)「調べ、まとめ、言葉で発表する」では、きれいにまとめるより、より詳しく調べ、理解して、言葉で書くことを追及した。この作業ではパソコンを使わず、地図や表、グラフも手書きを原則とした。「手で書きながら考え学ぶ」ということを重視した。 (イ)「民博にある仮面とそっくりにつくる」、という目標は、自由なデザインで仮面を作ると、安易に目標を下げやすくなるからである。本物にそっくりなレプリカを作るという明確かつ高い目標を設定し、そこに近づこうとする生徒の工夫と努力を求めたのである。ミメーシス(模倣)の中にある学びを求めたといえるのである。 (ウ)「民博へ2回行く」は、自分の「観察眼」を見直させるためである。仮面を作るようになって、生徒達は自分の観察スケッチの不十分さをはっきりと知る。自分がいかに適当にしか見ていないかを知るのである。再現するという目的をもって観察した時、初めて対象をより正確に注意深く見るようになるのである。 4.取り組みを通しての反省 実際に展示された「調べ・まとめ・発表」の展示は、見る側の読みやすさわかりやすさを、考慮したとはいえないものであった。しかし、見栄えではなく内容を充実させた発表は評価していいのではないかと思っている。今後は内容をより理解し、分かりやすく表すため工夫をどう重ねるか、そのための学習と経験が必要と言えよう。 仮面の製作については、生徒の努力がよくわかる出来栄えであった。その意味、一定の目標達成(目標のイ)はできたといえる。しかし、以上の3点の目標設定では、民博を利用して異文化理解を図ることと、仮面の製作が結びつく必然性が希薄となる。模倣製作の対象が仮面である意味が浮かび上がらないのである。ここに課題が残るといえる。つまり、異文化理解と仮面製作をどう結びつけ学習を深めるか、この点の取り組みが不十分であったといえる。今後、仮面のみならず資料などの製作活動に取り組むとき、一番注意するべき点になると思われる。今後、どう仮面を教材化していくのがいいのか、異なる方向も考えたいと思っている。 最後に博物館へのリピートについてである。学校の教育活動では、同じ場所を再度訪れることは一般的にはありえない。なぜなら、厳しい時間枠のなかで、カリキュラムの進行に追われるように教材を消化しているからである。同じ場所に2回行くくらいなら、異なる場所に行きたいと考えるのである。それを敢えて、希望者だけとはいえリピートできたことは、画期的でもあると考えている。博物館や美術館を学校とは異なる学びの場とするためには、その場が何回も訪れられる場である必要がある。今回、意識的に2回目の訪問を設定できるような計画にした。その結果、約15%の生徒が再訪した。繰り返し読まれる「古典」のように博物館があることは、学校にとっても意味あることだからである。今回、生涯も続けられるような関係の萌芽を準備できたとしたら、うれしい限りである。 1 詳細は『学校と博物館でつくる国際理解教育 −新しい学びをデザインする−』明石書店2009年を参照してほしい。 ワークシートから始まる連携 −学芸員・教員・生徒− 大阪市立自然史博物館  佐久間大輔 1.ワークシートとは何か 博物館の展示は、学芸員が自らの専門性をもとにテーマをもって展示を構成し、展示品の価値を示している。そこには文字や映像また展示品の配列の中にも、学芸員のメッセージがこめられている。民具であれば使っていた生活者のメッセージ、美術作品の場合には作者のメッセージもあるだろう。展示室はそうした情報やメッセージの海の中からストーリーや価値を読み取っていく場所だ。しかし多くの場合、初めての来館者は、展示室の洪水のような情報におぼれそうになっている。 このような来館者が展示室を読み解く海図はいろいろある。図録、オーディオガイド、ハンドアウト、さらにはギャラリートークやワークショップなども展示を理解する見取り図になる。ワークシートもまた学芸員と中高生や大学生を結び、展示品が放つメッセージを見つめてもらうためのコミュニケーションツールの一つである。ただし、ハンドアウトや音声ガイドと異なる点が一つある。それは、ワークシートを採用し生徒を送り出す立場にある教員が関与する点である。学芸員がいかにメッセージを絞り込み、シンプルなものにできるか、教員が生徒に学ばせたい内容をいかに調和的に盛りこめるのか。どちらかの思いが強すぎると、ワークシートの作成はうまくいかない。もちろん、実際にそれを使用する学生・生徒が課題を「面白い」と思ってもらえることが一番の目標である。よりよいワークシートの開発は、学芸員、教員、生徒のそれぞれの動機や立場を大事にしながらすすめていくことが大切になる。 2.大阪市立自然史博物館のワークシート  学校団体での博物館利用は、遠足から調べ学習、学芸員によるレクチャーなど様々なものがある。小学校低学年であれば、春秋の決まった季節での遠足での利用が多いが、中高生では調べ学習型のグループや個人での利用が多くなる。当館では常設展ワークシートも解説しており他の取り組みとともに当館ホームページ内の「学校と博物館」で公開されている。  一方で特別展用の学生向けワークシートは最近の取り組みである。2008年の「ダーウィン」展、「大恐竜博」という2つのマスコミ共催展で試行的に作成し、自主企画展では2009年「きのこのヒミツ」展、2010年の「淀川大図鑑」展で作成した。これら特別展は、常設展にくらべテーマがはっきりしているために、うまく合致すれば学習課題に活用しやすい反面、開催期間が限られているために機を逃さずに利用してもらうための工夫が必要となる。  「淀川大図鑑 −海と山をつなぐ生物多様性−」展のワークシートは、夏休み開催、また地域の生物多様性理解が着目されるCOP10直前という時期を活かし、中学・高校生向けの夏休み課題としての採用を目指して作成した。夏休み課題での採用のためには教員の手元に6月には届くこと、そうした企画があることを年度当初にアナウンスしておくことが必須となる。当館は友の会や、独自の教員むけメールマガジンを持つ。また大阪府高等学校生物教育研究会とも連携を強めており、今回もこれらのコミュニティを通じた広報を活用させていただいた。最初の製作表明は3-4月ごろ、そして実際のワークシート製作に入ったのは5月である。  実はこのタイミングは当館の自主企画展では展示物の全体像が見えていない時期に当たる。教員も製作者も実際の展示を見ていないのでイメージがわきにくい。これが特別展ワークシートの難しさでもある。特別展主担当者にヒアリングしつつ、問題の原案を作成した。この段階で、懇意の教員数人に意見を聞き、ワークシートの方向性を探った。最終的に教職経験のあるスタッフが、利用者が楽しめるデザインを施した。ワークシートが特別展の優待券となり入館料が少し安くなるよう館内調整を行い、無事6月に配布を開始した。  問題に関して留意したのは、1)展示を読み解いて欲しいということ。理解しやすい展示であることが前提であるが。2)淀川の生物多様性をテーマにした課題ではあるが、それを実感してもらうために計算をし、地図を読み解き、河川政策を論じてもらい、感想を文章表現してもらっている。生物だけでなく他教科にも波及する課題とした。3)会場での理解を助けるフロアマップなども追加政策をした。  さらに、教員向けの工夫としては、4)完成品だけではなく、取り組みの内容や学齢に応じて加工して利用してもらえるようにワードファイルもダウンロード出来るように公開した。5)教員の深い理解が事後のフォローアップにも直結するため、ワークシートの解説や特別展の解説書も提供した。 3.利用の成果  通常、当館の特別展は高校生層の入場者数はごくわずかしかない。しかし、ワークシート導入の結果、高校14校を含む27校から1047名の生徒がワークシートを利用して見学した。ワークシートが多くの中学・高校生にとって生徒が来館するきっかけとなった。その数字よりも手応えを感じたのは「予想外、生徒達が一生懸命見学していた」 、「新しく知った内容に驚きをもっていた」、 「感想を聞くと、生き物の展示の話を楽しそうにしていた」、 「まじめに長文で書いている生徒が多かった」といった教員から伝えられる生徒の反応であった。展示室でも魚やプラナリアをじっくりと眺め、友人間で議論する生徒たちの姿がしばしば見られた。面白かった、やらせてよかった、という反応が頂けることが一番の成果だ。  特別展においても学芸員にとりワークシートは展示のメッセージを生徒に届けるためのツールである。しかし同時に、教員にとっては博物館見学を具体の学習に結びつけるツールであり、使用する生徒にとっては見学の達成感や読み解きをもたらすガイドであること、これを忘れては、利用につながらない。これは他の博学連携全体にも通じる。ワークシートは学校と博物館、そして生徒にとり、その後の永いお付き合いの単なるきっかけ、そういえることが最もハッピーな状態なのではないだろうか。 ワークショップ報告 博物館で授業のアイデアを!!−ワークショップの概要と成果− 大阪市立自然史博物館  釋知恵子 国立民族学博物館  五月女賢司 今回の博学連携ワークショップのメインテーマは、「学校と博物館が学びあえる場の構築をめざして」であった。それを参加者とともに実践に落とし込んだのが、「民博で授業案を考える」ワークショッププログラムである。 このワークショップについての話し合いは、大阪市立自然史博物館における教員研修の事例を話すことからスタートした。大阪市立自然史博物館では、大阪市の教育センターからの依頼研修の一コマとして、「自然史博物館の概要と見学のポイント」という研修を夏に行っている。この研修では、博物館の概要説明、学校への様々な事業展開の説明などのガイダンスとともに、収蔵庫などのバックヤードツアーも行っている。また、展示室の見学時の課題として、「博物館の展示を使ったワンポイント授業教材を考える」いう教材研究をしてもらっている。これは、博物館が一方的に語る先生にとっての受け身の研修ではなく、積極的に参加し、博物館に対して語ってもらう双方向の研修を目指したためである。先生には、授業で使うことを考えながら展示を見て、アイデアをまとめ、それを発表してもらっている。また、聞く人がどの展示物について話をしているのかわかるように、見学時に撮った展示物の写真を見せながら、発表を行うことにしている。 受け身の研修を期待してきた先生には、驚きと戸惑いを与えるようであるが、発表内容はどれも「なるほど」と納得し、「こんな利用方法があるのか」と、先生の展示物に対しての視点を知ることができるものだった。研修は、一般研修の中の一コマであるため、さまざまな教科を専門とする先生が来ていた。それが功を奏し、自然史=理科にとらわれず、国語や英語の物語の導入に展示物の写真を使用する・図工の時間に恐竜のホネの写真を見せて想像して絵を描く・音楽の歌の前にイメージを膨らませるために展示物の写真を使うなど、さまざまな教科で自然史博物館を利用するアイデアが見られた。また、虫の授業の後に、大阪にいる昆虫の標本写真を見せることで、夏休みの虫とりや自由研究に結びつけるなど、標本が持つリアリティによって、子ども達の興味関心を引き出し、さらには、実体験へと結びつけるという授業例が多かったことも印象深かった。 民博で行ったワークショップは、この大阪市立自然史博物館での研修が土台となっている。大きなポイントは、参加者は一人で授業を考えるのではなく、班で考えるということであった。参加者には、申込時にテーマ一覧から興味のあるテーマを最大3つまで選んでもらい、班決めの参考とした。同じ興味を持つ人たちが集まっているという班としてのまとまりを持たせるためである。テーマは、授業の教科や科目から選ぶのではなく、民博の資料と学校での学習に関連がありそうな言葉や、教科を超えた取り組みと交流が可能となりそうな言葉から選んだ。申込書には、*骨、*住まい、数、*水、乗り物、糸、顔、*食、*色、扉、*葉、*魚、*幸せ、体、*点字という15のテーマを掲載した。申込状況を見ると、多少人気に偏りが見られたので、人気の低かったテーマについては取り上げるのをやめ、特に人気の高かった「色」を2班にすることで、*のテーマで10班を作った。班の構成には、学校の先生と今回のワークショップの準備グループメンバーがそれぞれ必ず一人は入るように配慮した。民博は広く、展示物の数はとても多い。そのまま見学していたとしたら、資料と情報の海を、何をどうやって動き授業を考えるのか、スタート地点がないままに右往左往することになったかもしれない。テーマがあったことにより、見学のポイントが絞られ、3時間半ほどの短時間で行うワークショップを可能にしたのではないだろうか。 今回のワークショップでは、考えてほしいこととして、校種・学年、教科・領域、単元、取り上げる資料、授業の内容やアイデアを表すタイトルをあげた。これにより授業の目的や対象をはっきりと意識してもらうことにした。また、発表用には、パワーポイントを使ってデータを作成してもらったが、スライドの数は基本的に6枚までとした。報告書編集の都合上の枚数制限という側面もあったが、かえってアイデアの展開や発表そのものが、端的にわかりやすく集約され、よい結果に結びついたといえる。 どんな成果があがるのか、準備グループメンバーの中でも心配な声があがっていたが、実際の成果は、以降の報告にあるようにすばらしい内容になった。目的、方法、発展などがわかりやすく語られ、しかも、人が楽しく見られるような工夫がされているなど、プレゼンとしても高いレベルのものになった。 学校での学習では、教科や単元、学習指導要領をベースに児童・生徒の成長が考えられている。博物館が学校との連携を考える上ではこれを無視するわけにはいかないが、博物館では、博物館の資料や専門性を活かし、学校での学習範囲や教科を超えた授業ができ、また学校からもその飛躍こそが期待されているのではないだろうか。このワークショップのチラシに載せた「学校と博物館、両方にとっての『いいこと』から生まれる、子どもたちの博物館での『学び』について、一緒に考えてみませんか?」というコピーそのままに、今回のワークショップでは、学校関係者と博物館関係者をはじめとする多くの参加者が意見を交換し合い、一つの物を協力して作りあげた。内容以上に共に時間を過ごし、考える時間こそを大切してほしい、民博だからできたと感じるのではなく、参加者それぞれが自分の学校・博物館・地域に戻っても同様のことができると感じてほしいと願った。先生には博物館を利用するにあたっての先生の考え方があり、博物館関係者には学校にはこんな風に利用してほしいという気持ちがある。また、学校と博物館をつなぐ役割を果たしている地域住民や大学関係者などにも多様な考え方があろう。それぞれが歩み寄っていく一つの足がかりとして、今回の成果が、ただの発表にとどまらず、実際の授業や博物館での実践につながることを期待している。また、充実したワークショップになったことは、高い意識を持って来られた参加者の力によるところが大きい。参加者の皆さんに、感謝したい。 骨のある生活(後) −No hone No life− 吹田市立第一中学校  古川岳志 1班メンバー:飯島俊幸、家倉舞、岩佐果林、図師宣忠、中村愛、広谷浩子、古川岳志 校種・学年:中学校 - 高校 教科・領域:社会 理科 総合的学習  単元:世界の文化、生物、国際理解(異文化理解) 選んだテーマ:骨 取り上げた資料:アイヌ文化展示「熊の頭蓋骨」 「パイプやキセルなど」 授業タイトル:骨のある生活(後) No Hone No Life 骨をテーマに民博の資料を使って授業案をつくる、というのが我々のチームに与えられた課題である。この報告は、我々がこの課題にどのように取り組んだか、授業案を生み出す過程と結果をまとめたものである。「授業案はかくつくられる」という、ドキュメントとして見てもらえれば幸いである。 集まったメンバーは「骨」に対して各々強い関心をもっていたので、最初から骨に関しての興味や関心をお互い語り合えた。しかし、各自がもつ思いやイメージを民博の資料を使って授業案化する過程は、簡単ではなかった。なぜなら、我々が抱いた骨へのイメージと民博の展示資料に大きな隔たりがあったからである。我々は、「ショック」からスタートしたのである。そして、この「ショック」とその後の過程が授業案に結びつくのである。 ステージ1 骨に関わるイメージを相互に出し合う。この意見交流から、どんな授業をつくりたいのかが見えてくる。骨に関する文化的社会的視点と、骨の機能や形の美しさに着目する視点が議論では交錯した。どちらかに絞る前に展示を見学して考えることにする。 ステージ2 民博の見学。骨に関する資料の収集。骨からイメージされるものとして「構造を支えるもの=骨格」がある。このイメージに基づく資料は多くある一方、骨を素材とした資料は、簡単に見つけられなかった。歯や角、貝殻などは多くあったが、骨を原料としたものや、骨を直接示す展示は予想に反して少なかったのである。今回の授業案では、この素材の「少なさ」が授業展開での大きな「鍵」となる。 ステージ3 材料とアイデアの持ち寄り。ここで、授業の流れが姿を現してきた。それは、@骨のイメージから始まり、A民博で骨を捜す「探検」活動、B事前の予想と見つけたものとの差の確認、Cなぜ事前の予想と結果が異なるのかを考え調べる活動へ、という流れとなる。そして、最後にD生き物における骨を考えることで、文化的社会的視点とは異なる、機能や形の美しさなど生物的工学的視点につなげる授業、という案である。授業案のタイトルに「後」とあるのは、生きている生物に関する授業が「前」で、死んだ後が、「後」という意味である。(生きて機能している骨=前・死んだ後の骨=後) 授業案は、こうした我々の「発見」と疑問などが、案としてまとまったものである。授業の目的は、「骨」をキーワードに文化や社会の違いを自ら発見し考えることにある。授業での活動は、考え予想する、実際に民博で探検する、自分たちの予想との違いを議論する、そして調べるということになる。授業の展開は、パワーポイントのスライドになっているのでそちらを見てもらうとして、この案のポイントは、展示に直接「骨」に関わるものが少ない点にある。予想と実際の違いから考えるという点では、「仮説実験授業」的手法である。また、これは自分たちのもつイメージが、博物館の展示(あるいは実際)と違うという「発見」から考えを展開させるところにねらいを置いている。骨からイメージする展示物が少ないということ。そこで生まれた疑問は、その後の文献的調査・研究に発展させる必要がある。骨と結びつく「死」が宗教と深く関係があることに気がつくと、民博の展示は全く姿を変えて見えてくるといえる。しかし、また一方で、骨とは生き物の身体を支える重要な組織でもある。生き物の中での機能や役割に関心を向けると自然科学的方向への次の発展が見える。授業案はそこまでの発展を期待したものでもある。 調べよう!世界の住まいと家族 滋賀県立琵琶湖博物館  戸田孝 2班メンバー:浅田裕子、上平千恵、太田歩、栗山丈弘、樋山憲彦、戸田孝 校種・学年:中学校(学年不問) 教科・領域:主として技術家庭科、他に社会科、国語科、総合学習にも関連 単元:わたしたちの生活と住まい(家庭)世界と日本の人々の生活(社会) 選んだテーマ:住まい 取り上げた資料:各地の住居再現模型 授業タイトル:調べよう!世界の住まいと家族 このカリキュラムの狙いは、民博に展示されている各地の多様な住居の実物移築や再現模型を利用し、自分たち自身の住居と併せて比較することにより、生活環境の違いに応じて、住文化に違いがあることを相互理解させ、さらに文化の多様性を理解することである。民博の常設展示では、必ずしも全地域が尽くされているわけではないが、各地の住居の実物が多く移築されており、また主に東アジア地域の展示を中心として、住居全体の再現模型(ジオラマ)が統一縮尺で展開されているので、これを利用して多様な住居文化を統一的な視点から比較できる。このことを利用した学習案である。 単元の流れは3次の部分からなる。一次は身近な住居を観察することを通して住居の構造と機能を見つめ直す内容で、博物館での学習の事前準備に相当する。二次は博物館展示を利用した調べ学習で、調査内容が広範にわたるため、班別学習として班ごとに対象地域を定める。三次は班別学習の成果を他班と共有して考察を深めるための事後学習である。 一次では「わたしたちの生活と住まい」と題して自分たちの住居について調べさせる。まず各自の家について簡単な間取りを書くことによって住居がどのような構造を有しているかを認識させる。そして、住まいの中では、誰が、どこで、どのようなことをしているかをグループごとに話し合い、話し合ったことを発表することによって、次の段階の前提として必要な住居の構造と機能についての基本的な概念を習得させる。 二次では「みんぱくで調べよう!世界の住まい」と題して博物館での調べ学習を行う。班ごとに対象地域を定め、ワークシートで観点を明確にして調べ学習を進める。展示場での調べ学習の観点としては「間取り」「部屋の使い道」などに留意させる。また、学習コーナーに各地域での家庭生活の様式が解る文献資料が多数用意されているので、これを利用して「家族の人数」「家族の役割」について調査させる。 三次では「再現しよう!世界の住まいと家族」と題し、住居の構造や機能が家庭生活の様式や流儀と密接に関連していることを、実際にロールプレイを行うことを通じて実体験的に理解させる。ロールプレイに必要なシナリオについては、基本的には雛型を準備して細部のみを生徒に考えさせるものとするが、時間的に余裕があり、あるいは既習単元で基本が習得できている場合には、生徒に考えさせてもよい。舞台は校庭にラインマーカーで実物大の間取りを再現し、そこで各地の家族になりきってロールプレイを行う。これによって、各班の学習結果を他班と共有し、クラス全体で比較して、地域ごとの環境・生活様式・家族構成の違いを考えさせる。 立案する過程で、対象となる事象が多岐にわたってボリュームが大きくなり、時数的にも10時間前後の大きな単元になってしまうことが問題になった。そこで、いくつかの部分でカリキュラムの肥大化を防ぐための選択を行った。例えば、シナリオ作りの部分について教師のお仕着せとするのを基本としたことなどが該当する。しかしなお、指導に工夫と手数を要すると思われる内容(例えば自宅の間取りを書かせる部分など)が多々残っている。これは、対象そのものが大きなテーマであることの当然の結果ともいえることではあるが、実用的に使えるカリキュラムにするには、さらに対象テーマを絞り込むことが必要であるかもしれない。 水道のない山の中でお茶を飲もう:飲料水を運ぶには?? 国立民族学博物館  岩谷洋史 3班メンバー:伊藤直美、尾崎幸哉、角川咲江、高木恭子、田口公即、中山迅、岩谷洋史 校種・学年:小学校4年 教科・領域:社会科 単元:命とくらしを支える水 選んだテーマ:水 取り上げた資料:各地の水汲み用容器 授業タイトル:水道のない山の中でお茶を飲もう:飲料水を運ぶには?? このカリキュラムの目的は、民博で展示されている世界各地域の様々な水を入れる物を利用しながら、自然環境や文化の違いに応じて、器に違いがあることを理解させ、異文化教育をはかると同時に、自分の生活を顧みさせ、身近な水の大切さを改めて理解させるということにある。 民博の本館展示場には、土製の水さしや水瓶、竹製の水筒など、地域によって様々な形状をなした水を入れる器の展示物が多くある。文化によって形状が異なることが理解できる。また、アフリカのある地域では、水を運ぶのに油を入れるためのポリタンクを利用するが、アフリカ展示場には、その様子を紹介しているコーナーも設けられている。本館展示場の展示は、形状の相違だけでなく、生態環境や文化的な背景が異なれば、時としてモノの利用方法も異なるということが理解できる仕組みになっている。このことを利用した学習案である。 単元の流れは、次の三つの構成からなる。 まず、「水道のないところで、水を運ぶには?」という課題を提出する。たとえば、山の中でお茶を飲むには飲料水が必要であるが、どのようにして運ぶのかを考えさせる。蛇口をひねれば水がでるという生活環境では、水の大切さを感じとることが難しくなる。しかしながら、水道がないところ、たとえば水が容易には入手できない山の中で飲料水を運ぶことをイメージさせ、改めて水を再認識させるという課題である。 次に、日本でも水道がなかった時代があること、現在でも世界各地では、水道のない国が多いことなど水環境についての基本知識を習得させた後に、博物館(民博)で実際に調べ、学ばせる。学習の観点としては、展示品のなかにある水に関わるモノ、とりわけ水を入れる入れ物に留意させ、それを観察させる。 そして、博物館で観察してきた入れ物のなかで、自分で作ることができそうなものを実際に製作させることで、対象の入れ物の物理的な構造だけでなく、モノの背後にある地域ごとの環境や生活様式の相違を考えさせる。 以上の学習案を立案する過程で、まず「水」をキーワードに、民博の本館展示場にある展示物を班メンバー各々が調べてまわった。民博の展示場は、オセアニア、アメリカ、ヨーロッパ、アフリカ、それに日本を含むアジア各地域に分ける地域展示と特定のジャンルを取り上げて民族文化を通覧する言語と音楽の通文化展示で構成されており、それぞれが展示シナリオをもっている。そういう意味では、博物館の展示物を学校の教科学習に活用し、単元に準じて何らかのプログラムを作るというのは難しいかもしれない。実際に、立案する過程では、班メンバーは試行錯誤しつつ、水の入れ物に焦点をあてたテーマではなく、水循環をテーマにした他のプランも立てられていった。 そもそも学校と博物館の目的は必ずしも一致するというわけではない。このワークショップにおいて、メンバーがある一定のシナリオに基づく展示を構成し直す作業を行った、あるいは、こういって差し支えなければ、行わざるを得なかったことは、そのことを物語っているであろう。このことは、展示を見る者は、多様な読みを行うことを意味しており、むしろ積極的に評価されるべきことであろう。こうしたより広い読みを許容する展示方法や場があればあるほど、博物館と学校との連携は促されるのではなかろうか。 みんぱくでクッキング 伊丹市昆虫館  坂本昇 4班メンバー:海上尚美、手島肇、中塚扶美子、上田信彦、辻井なつみ、布谷知夫、坂本昇 校種・学年:中学生以上 教科・領域:総合・地理(家庭) 選んだテーマ:食 取り上げた資料:各地の調理器具 授業タイトル:みんぱくでクッキング ○みんぱくでクッキング:授業案  選んだ地域の伝統料理を調理する目的で、班ごとに調べ発表する授業である(科目は社会科を想定)。食事とそのレシピを事前学習で調べ、民博で地域の展示を見ながら使用する調理器具を選び出し、その結果をまとめて壁新聞方式で発表しあう。料理という親しみのある題材と調理器具という資料によって、地域ごとの環境や文化の違いについて考え、理解を深めてもらうことを狙いとした。 さらにこの授業は、料理のルーツを調べることで理解を深めることも可能であり、発表の方式も、実際に料理を作ると成果が明確になり、その際には地域出身者を招いて講評してもらうことで、学びとともに交流を深められるなど、様々な発展性も考えられた。 ○授業案作りのプロセス 高等学校教員と歴史系博物館職員が各2名いたことから、まずは高校生対象の社会科を想定し、展示場で資料をみながら検討した。民博ボランティアの方がメンバーにいたおかげで、効率よく移動できた。最初、スパイスを扱う案が挙がった。生産、流通、販売、食事までの各段階を該当する教科で扱い、年間の取り組みとする内容である。しかし食に関する資料は多いが食品は展示資料にない。改めて展示場で相談し、調理器具を使うこととした。鍋ひとつとっても地域毎に形態や使い方が違う、料理を作ることを通して地域の違いに気づいて欲しいと考えたのである。アイデアが決まると、授業案づくりは順調にすすんだ。全体に、成果だけでなく互いの専門性が垣間見え刺激ある時間となったようである。 展示場を巡って気づいたこと 民博は広大で資料にあふれており、「食」に関する資料はどこの地域の展示にも沢山あるだろうと開始前にイメージしていた。しかし調理器具を探す目的で横断的に展示場をまわると、地域ごとに資料数も展示手法も大きく異なるため、資料を用いた地域の比較は容易ではないことに気づいた。例えば「南アジア」の展示場で多量に並んでいた食関係の資料も、「西アジア」ではコーヒーによるもてなしの設えのみだったのだ。それらをふまえた上で、授業づくりをすすめてゆく必要があるだろう。 みんぱくで色探し 吹田市立博物館  池田直子 5班メンバー:池原盛浩、市川祥子、大倉宏、奥田博子、風早美希、永山俊介、森永紗江子、池田直子 校種・学年:小学校・高学年 教科・領域:総合学習 選んだテーマ:色 取り上げた資料:牛鬼、ベリーダンスの衣装、モンゴルのゲル、ねぷた等多数 授業タイトル:みんぱくで色探し このカリキュラムは、自分の好きな色について、その色のもつ意味や歴史的・文化的背景を子どもたち自身が調べ学習することを目的とするものである。 まず、自分の好きな色を選ばせ、なぜその色を選んだのか、理由を発表させる。 次に、展示場を回り、自分の好きな色のある展示資料を探す。展示場にある様々な資料を写真にとる。そして集めた資料の好きな色の部分だけ集めて、コラージュする。同じ赤とはいっても、その色調は様々で、使われている国や文化によって変わってくる。 次の段階として、自分が選んだ色だけでなく、同じ班のメンバーが選んだ好きな色を分類し、何に使われていたか、どうしてそれをえらんだかなどを考える。 導入は総合学習として開始したが、その後の発展として、様々な教科・領域への発展が可能である。例えば、社会では国やエリアごとに考察し、赤が多い国、緑が多い国というような特色を考え、その理由などを探る考察を加える。美術では色のコラージュを活かしてデザインし、ラッピングペーパーなどの商品開発を目指すことも可能であろう。理科は動物の色、花の色などを観察し、自然界でその生物がその色を選択している理由を調べ、考察する。国語では色と漢字について調べる。「アカ」系統の色には赤、緋、紅、朱などの字があり、「アオ」系統の色には藍、群青、青、紺、蒼、碧等の色がある。漢字の表している色はそれぞれ違っており、色の違いや色の意味の違いを調べる。 一応、小学校高学年に設定したが、小中学校のどの学年でも、どのような形でも調べられ学習を設定することができる。 今回のワークショップでは、最初に数分間各人が展示場を見学して回り、印象に残った色を探すことになった。その結果、展示場では赤が一番印象に残ったという意見が多かった。赤はパワーアップの力を秘めており、祭りやハレの場でよく使われる色だからではないかと思われる。そして、同じ赤でも資料によって微妙に色合いが違うので、集めてコラージュしたら面白い。赤に限らず、子どもたちに様々な資料のなかから好きな色を選び出し、コラージュしたらどうかということになり、子どもたちへの指導というよりはワークショップのメンバー皆が楽しんでいるという様子で進められた。メンバーは、赤色、緑色、玉虫色のように見る角度によって色の変わる構造色の3つのグループに分かれ、自分の好きなそれぞれの色を探してまわった。その後、皆で確認しながら、資料撮影してまわり、会場にもどって様々な資料の色のきれいな部分をトリミングしてコラージュした。国旗には赤と緑が多く使われているが、赤は太陽や、血などを表すことが多く、緑は大地を表すことが多い。それの国の歴史によってその色が表す意味は違っており、色がその国の歴史・文化を表現していると言える。また、同じアカでも様々な色があり、古代の日本でアカといえば朱であり、オレンジがかったアカであった。赤はパワーアップ・元気が出る色、青は心を静める色などとして色彩の効果も知られている。 今回のメンバーは美術、歴史、理科など専門分野がバラエティーに富んでおり、特別支援学校の方もおられ、様々な立場からの意見が聞けたことがとても刺激になった。1博物館と1学校の連携とはちがって、より多彩な意見を出し合えたことが、今回のワークショ ップの魅力であったと感じる。 色の組み合わせを考えてみよう 大阪市立自然史博物館  佐久間大輔 6班メンバー:尾崎秀甫、野崎美樹、高橋幸治、平法子、松本純子、三原重央、宮平妃奈子、佐久間大輔 校種・学年:小学生、中学生、高校生 教科・領域:図工・美術・国際理解教育 単元:指定せず 選んだテーマ:色 取り上げた資料:館内の全展示資料 授業タイトル:色の組み合わせを考えてみよう 民博には世界各国の民族衣装や生活器具など様々な展示物があるが、そのテキスタイルパターンや彩色だけでも見て回って十分に楽しめる。このカリキュラムでは「色」を導入として用い、様々な学校種や領域に展開可能な素案として立案した。色彩学の要素はカラーチャートなどが中学1年生の美術で扱われるが、シンプルな色使いでの作品製作は紙版画、ひっかき絵など低学年から行われている。 授業展開案としては博物館利用パートと、その後の学校での振り返り、展開の取り組みとなる。 1)博物館利用パート:学校出発前に、自分の好きな色の組み合わせ2色を決める。各自、または班行動で、その組み合わせが使われた展示物をデジカメを持って一定の時間内で探しに行く。各自、自分の選んだ組み合わせはどこに多いのかに留意しながら探索を行い、見つけた展示物を撮影していく。 2)学校パート:まずは振り返りとして、どの組み合わせが一番見つかったのかを議論。さらに、各自の組み合わせはどこにおおかったのかを相互に紹介する。一緒に使われている色や、どんな使い方だったのかなど気付いたことを話し合うのもよいだろう。例えば「赤と黄色の組み合わせを使った衣装は多かったけれど、たいていは黒も一緒に使われていた」、「青と茶は海と陸などの地図がやっぱり多かった」などいろんな発見もあるだろう。 3)展開パート:この部分は学年や教科によるアレンジが可能な部分である。例えば、小学校低学年であれば、実際に選んだ色を使って版画やひっかき絵に向かってもよいだろう。様々な衣装や道具にインスパイアされたことで、作品製作も幅が広がることが期待出来る。もう少し学齢が高ければ、タイルパターンの塗り分けなどのデザインに挑戦することも可能だろう。さらに高学年、中高生となれば、その色彩の文化的背景や、材料など国際理解へ切り込むための導入につなげることも可能だろう。しかし、この展開のためには展示物の背景を解説してくれる博物館スタッフやその地域に詳しい教師や第三者などが必要となる。実際、民博の研究活動をよく知る教員であれば「チベット語の色彩語彙 長野泰彦(民博研究報告 5(2), 409-438, 1980)」などの論文の存在に触れ、それに基づいた解説が可能かも知れない。しかし、そこから授業を組み立てるのはなかなか難しい。 実際カリキュラム製作において、一番難しかったのは展示物理解にどこまで博物館の協力を期待していいのかが手探りだった点でもあった。こうした協力があれば立案可能だったかも知れないテーマとして「人形や絵画、さらに展示用マネキンでの肌の色の表現」、「仮面の彩色とその感情表現」、「世界の花嫁衣装はどんな色」、「お祭りの道具はどんな色?(祝祭の色使い)」、「子供服の色」などさまざまなアイディアが展示場を歩きながら、あるいはその後の議論で生まれていた。これらはいずれも面白そう!と想わせる魅力的ものであったが、外部の教育関係者だけでのカリキュラム完成は難しいものであった。機会があれば博学連携で作成するのにふさわしいものかも知れない。 しかし、2色の組み合わせを探すといった簡単なものでも、課題を持って展示物を眺めていくことで、能動的に展示を眺め、共通点を探し比較するといった展示を楽しむトレーニングにもつながるだろう。解説がほとんどないという民族学博物館の展示手法はこうした自由な関連付けをした学習に適しているのかも知れない。 はっぱはどこ? 茨木市立三島小学校  八代健志 7班メンバー:小原二三夫、北村美香、古賀久美子、図師麻由子、武井二葉、端詰純子、八代健志 校種・学年:小学校1・2年生 教科・領域:図工科・生活科 単元:葉っぱのマーク 選んだテーマ:葉 取り上げた資料:展示場内のモノにほどこされたさまざまな「葉」のデザイン 授業タイトル:はっぱはどこ? 「自然科学」系の博物館であれば、葉をテーマに多くのアイディアが浮かびそうだが、民博の中には直接的なモノでの葉の展示はほとんど見られない。一体どんなふうに授業を組み立てるのか、メンバー各人は、テーマである葉を意識しながらそれぞれ展示場に散り歩き回った。そして、持ち帰った案をお互いに開示しあった。「日常生活に必要な器具用具に材料として使われている葉」「藍染」「葉の図案」「香辛料」「葉っぱのことで、館内を遊ばせ・まわらせたいな」「近接の万博公園に行って、葉っぱをひろったりしたいな」「葉をモチーフにしたデザインについて何かできそうだ」等のアイディアが挙げられた。それをふまえ、「葉をモチーフにしてデフォルメなどを経て図案化されたものを展示物の中から探していこう。」というような形の活動を構想した。 そこで、その活動や、資料としてのモノを、どんなふうに学校教育の中の「教科」「領域」等へ落とし込むのかについて深める為、今度は7人揃って再び展示場へ出かけ、まず着いたパレスティナの日常生活を紹介するコーナーで、デザイン化された葉をさがしてみた。枕、衣服、装身具などあらゆる所に葉のデザインが使用されていた。これなら大丈夫。と感じ、展示場に居たのはそこだけで、すぐ戻って話し合いを続けた。対象について、「展示物と、展示物の世界が容易に結び難い学年を」という意見が賛同を得、小学校低学年の子たちを対象にしたプランを考えていく事にした。それでは以下に学習活動の流れを示す。 @はっぱマークの紹介。いくつかの、葉がモチーフとなったデザインを紹介し、もとは葉の形や模様であることを紹介する。この段階で、葉の形や模様がどんな風に強調あるいは捨象されるのかについて、低学年なりの理解で知る事が、次の、展示場内での観察、に生きてくるだろう。 A見つけてこよう。展示場内をまわり、自分のお気に入りの葉っぱのデザインをさがす。それをよく見てスケッチし、付帯情報(国・場内の位置・説明ほか)と感想を記す。余談になるが、この段階の話し合いをしていた時に、当班の博物館サイドから参加された方が皆同じように『博物館の資料受け入れに当たって、資料カード作成が一番おいしいところで、楽しい(でもしんどい)。』と話され、じゃあ是非この活動でしっかり楽しませたいね、と「学」は「博」とのさらなる連携を深めた。 B発表しよう。これは学校へ帰ってからでもよいが、どこがどう自分の好みなのか、友だちにお話しする場面を持つ。ひょっとして本来葉がモチーフとなっていないものも過って探してくるかもしれないが、その子の「なぜ葉っぱマークと思ったか」や「どこが気に入っているのか」に最大限耳を傾けてやりたい。 C「私たちの樹」を作り教室内掲示。モゾウ紙などに大きな幹・枝を描き、そこにそれぞれが持ち帰った葉のスケッチを貼り付けて大きな樹木とする。ここで各人各様さまざまの葉っぱマークが集まったことを一目で見、どれもそれぞれ値打ちがあっていいね、という文化相対主義的楽しさを感じ取ってくれると有意義だろう。 このプランでは、図案化や抽象化について、体験的に低学年なりの理解を持つだろうが、彼らが、生活科等で植物の葉を学ぶ時、よく見(観察す)るという博物館での経験が生きてくるのではないかと期待する。 自然史の視点から民博を見た授業案 大阪市立自然史博物館  釋知恵子 8班メンバー:桂弘子、金尾滋史、平田慎一郎、広瀬祐司、森稔、吉見知恵、釋知恵子 校種・学年:小学校・5年生 教科・領域:社会科→理科・図工へと発展 単元:日本の漁業を学ぶ 選んだテーマ:魚 取り上げた資料:漁具 授業タイトル:検証!!みんぱくの漁具は日本の川で使えるか? 魚班ではまず、民博の展示の中で魚に関する展示として何があるのか探すことから始めた。授業で取り上げることにした資料は、漁具。東南アジア・南アジアを中心に展示された漁具の前で、使用方法について話をしながら、アイデアを練った。民博の展示には解説文があまりない。それぞれの漁具がどのように使われるのかは、展示の回りにある現地の人々の写真で少し表現されているくらいである。だが、幸いにして、班のメンバーの中には自然史系の博物館に勤務する者が多かったため、泥が多い濁った川ではこのような漁具を使う、流れの速いところではこの漁具、底でじっととどまる魚を捕るにはこの漁具といった、漁具が川の特徴と魚の生態にふさわしい形になっている話を聞くことができ、使用方法について具体的なイメージを持つことができた。日本でも展示されている一部の漁具と似た物が使われており、メンバーの中には、その漁具を使って魚を捕ったことがある者もいた。この話し合いの後、教科書の中から魚や漁具との接点を探した。 小学校5年生の社会科では、漁業が取り上げられ、さまざまな漁の方法が教科書で紹介されている。ここで子ども達は、水産業が食料の確保のために大切な産業であること、水産業が自然環境と深く関わりを持っていることを学ぶ。民博での学習は、この単元の後に実施することに決め、日本の漁業を学んだ後に、外国の漁業へと目を向けようということになった。民博で見つけた漁具を自分たちで作り、日本の川で外国の漁具が「使える=魚が捕れる」のか実証するという内容である。 民博に行く前に、外国で使われている漁具に興味を持たせるために、どんな漁具が外国では使われているのか、またそれによりどんな魚を捕っているのか魚の形態や生態について調べておく。民博では、学校で漁具を自分たちで作れるように、漁具の形態をしっかり観察する。この際、同じタイプの漁具でも材料の違い、形態の違いがあるので、自分たちが作りたいと思う漁具を決めしっかり観察することが大切である。竹を割って作るなど、作り方が難しいものは、既製品の簾などを利用して作ってもいい。そうして作った漁具を日本の川に入れてみて、実際に魚が捕れるのかどうか試してみるという流れだ。結果としては、きっと魚が捕れないだろうということが予想されるが、それにより、漁具が使われている地域の川の環境や魚の生態にふさわしい形になっていること、過去の人々が繰り返し工夫をこらすことで、漁具がその形に完成されてきたことを知ることができる。また、魚を捕る難しさを実際に体験することで、漁業に携わる人々の仕事の大変さを少しでも感じることができ、感謝の気持ちが芽生えるかもしれないという話にもなった。また仮に成功して魚を捕ることができたら、その魚を飼育しようという話も出た。 一番悩んだのは、授業としての着地点である。外国で使われる漁具に目を向け、その後どうするのか。調べて発表するという調べ学習への発展も出たが、実体験への着地を選んだ。今回の授業案は、自然史系の視点から人文系展示を見て考えたものであり、異なる分野の博物館同士が学校との連携を考える上で協力できる一つの形を示していると思う。反省するとすれば、それぞれにかかる時間数など、実際の授業につなげるところまで詰められなかったこと。授業案を考える上では必須であるので、これらを考えることを、これからの課題にしたい。 世界のお祭りを調べよう 滋賀県立琵琶湖博物館  飯住達也 9班メンバー:饗庭一弥、今村公昭、大西舞、船曳妙子、松村千生、山田真理子、飯住達也 校種・学年:中学校・1年生 教科・領域:社会科・地理的分野 単元:世界の様々な地域 選んだテーマ:幸せ 取り上げた資料:展示場内にある世界の「祭り」に関する資料 授業タイトル:世界のお祭りを調べよう 選んだテーマ「幸せ」を子どもたちにどのように考えさせるか…? 授業案をつくるヒントになったのは、アフリカ展示にある「杵と臼」の展示物だった。杵と臼の実物とともに現地の女性二人が談笑する写真が展示されており、キャプションは以下のとおりである。 「米をつく:脱穀をするのは、単調で大変辛い仕事だよ。毎日、午前と午後に2時間ほど杵をついて、雑穀やお米を脱穀しなければならないんだ。だから、いつもわたしたちは集まって、おしゃべりをしたり、歌を歌ったりしながら脱穀するんだよ。」 単調で辛い仕事にもかかわらず、写真の女性は幸せそうな笑顔である。この写真から、幸せに対する価値観は人によって違ってくることを、子どもたちに読み取らせることができるのではないかと考えた。 幸せに対する価値観が人によって違うことは、大人にとっては既知のことであるが、子どもたちにとってはそうでないことが多い。したがって、まずは子どもたちそれぞれが幸せなり不幸なりと感じていることが、違う立場の他人にとっては必ずしもそうではないことや、そもそもそのようなことを感じるような状況にないケースがあることを認識させる必要がある。その中で「幸せの価値観の多様性」に気付かせ、子どもたちそれぞれの価値観を再構築することを目指した。 対象として中学校1年生の社会科地理的分野を選び、取り上げる展示資料としては「世界各地の祭り」に関する資料に目をつけることとした。各地の祭りの風習は、それぞれの地域での生活様式に即した祈りや願いが込められているとともに、それぞれの地域で暮らしている人々が考える「幸せ」が形になったものである。これを調べることで、「五穀豊穣」や「家内・地域の安全」など、それぞれの地域の祈りや願いを明らかにし、「幸せの価値観の多様性」に気付かせることに繋げたい。 具体的に32人学級を想定したプランでは、4人グループを8つ作り、民博のアメリカ、ヨーロッパ、アフリカ、西アジア、オセアニア、南アジア、東南アジア、東アジア、中央・北アジアの8つの展示場から、グループ毎に一つの地域を担当した調べ学習に取り組む。グループ内では各生徒が、お供え物(食べ物)、衣装、アクセサリーなどの装身具、お祭りの内容などの項目を分担し、そのお祭りに込められた「願い」や「祈り」を民博の職員に質問取材する。その後学校に戻り、調べてきた内容を相互発表により交流するが、その場に民博の学芸員をゲストティーチャーとして招き、各地域の願いや祈り・幸せの価値観の「多様性」について解説いただくことにより学習を深めたい。 なお、この学習は国際理解学習や、社会科世界史・公民分野などのテーマと関連させることにより、さらに発展的な学習活動につなげることも可能である。 今回のワークショップを進める中で、班のメンバーから「博物館の展示を使った授業案を考えることはとても楽しい」という声があがっていたことを付記し、9班の報告とする。 点字で異文化体験 国立民族学博物館  廣瀬浩二郎 10班メンバー:伊藤泉美、大塚朋世、高田佳直、竹越のり子、山田美知子、廣瀬浩二郎 校種・学年:小学校・4年生 教科・領域:国語・ 単元:手と心で読む 選んだテーマ:点字 取り上げた資料:点字器、さわる絵本 授業タイトル:楽しい点字 @目標:現在、小学3-4年生用の国語教科書の多くで点字が取り上げられている。「手と心で読む」は、そんな教材の代表例である。国語、あるいは総合学習の時間で点字の基礎を実習したり、視覚障害者の体験談を聴く授業を行なう学校も増えている。だが、従来の授業では福祉や「心のバリアフリー」などの観点から点字にアプローチするケースが大半である。本授業計画では「点字で異文化体験」をテーマとし、日常的に“見る”文化に親しんでいる小学生たちに、“さわる”文化の楽しさと豊かさを伝えることを目標とする。点字学習は人間の生き方の多様性に気づくきっかけともなるだろう。 A導入:まず〔街中にある点字を探そう〕という課題の下、小学生たちに身の回りにある点字サインの例を挙げてもらう(駅の券売機、ポストやタクシーのシール、ユニバーサル・デザインの家電製品など)。ここでは規則正しい点の配列で文字を表す点字が、デザインとしても美しいことを強調し、小学生の好奇心を引き出す。次に一覧表を配布し、点字を解読する(点字表示が入った缶ビール、ドレッシング、ソースなどを事前に集めておく)。小学生が暗号を読み解くおもしろさを共有し、無理なく点字のルールを発見できるよう指導することが望ましい。 B展開:点字は6個の点の組み合わせで仮名、数字、アルファベット、種々の記号を表現することができる。「少ない材料から多くを生み出す創造力」が点字の最大の特徴といえる。点字の奥深さを小学生が理解するためには、実際に手を動かして点字を書いてみる体験が重要である。〔点字で名刺を作ろう〕という課題の下、一覧表を確認しながら点字板で自分の名前や学年を書く練習を繰り返す。ここでは点字が右から左へ書き、左から右へ読む文字であることをわかりやすく説明する。例文を示して、視覚文字と触覚文字の相違にも言及したい(濁点の扱い、仮名遣いなど)。なお、点字板は地元の選挙管理委員会や福祉センターから借りることができる。 C発展:点字学習の総仕上げとして民博を訪問する。課題は〔博物館で点字にさわる〕。民博の言語展示コーナーでは、世界の多種多様な言葉と文字が紹介されており、その中の一つとして点字も位置づけられている。具体的には、さまざまな言語で書かれた『はらぺこあおむし』の絵本が収集されていて、点字を併記したものも11冊ある。外国語が6点の組み合わせで書き表せること、各言語に対応する点字体系があることを知るのは、小学生にとって新鮮な驚きだろう。音声言語(喋る言葉)に対して手話(視覚言語)があるように、“見る”文字に対して“さわる”文字が存在する。もちろん、両者には優劣などない。博物館の展示を通じて文化の多様性を実感することが「点字にさわる」意義といえよう。 D結論:点字とは一つずつ点を正確に打つことにより文字、そして文章を作る通信手段である。“見る”文字と比べると読み書きに時間がかかるし、フォントを変えるなどのバリエーションもない。しかし、ゆっくり大切に心を込めて文字を書くことは、コミュニケーションの原点である。“見る”文化の便利さ、すなわち「迅速かつ大量」という価値観に知らず知らずのうちに囚われている小学生にとって、“さわる”文字との出会いは自己の生活を見つめなおす貴重な機会となるに違いない。 講演・講評 講演「新しい公共の時代に −学校のあり方、博物館のあり方−」 文部科学省 生涯学習政策局 政策課  上月正博 みなさん、こんにちは。文部科学省生涯学習政策局の上月です。 最初に、今回のワークショップは、まさに私たちの目指している自立的な新しい公共型となっており、「居場所」と「出番」をお互いに作るという取り組みそのものだと思って拝見しました。 さて、2008(平成20)年7月に閣議決定された「教育振興基本計画」には教育に対して社会全体における連携を強化する、つまり、子どもに視点を合わせ「学び育つ」ということを考えた場合、その主体は学校だけではないということが書かれています。 その後、2010(平成22)年6月に「新しい公共宣言」が出されました。この宣言で強調されているところは、「教育振興基本計画」では、教育に対する社会全体の連携の強化というメッセージだったのに対し、お互いにそういったことを行なうこと自体が個人にとっても社会にとっても本来的な姿であり、個人の豊かな生き方そのものにとっても大事なことである、「やる」という主体性の立場から見たものだということです。 そうなると当然、行政のあり方も変わります。「教育振興基本計画」が出た時に、私たちは「学校支援地域本部」という事業をはじめました。学校は、子どもたちの教育のために地域の人々が手伝える環境を整備していこう、というモデル事業です。いまの子どもたちに力を付けるという意味で、学校の先生だけですべてやるのは難しいと思います。基本的には先生を中心として生徒に教えることが多いと思いますが、一方で知識が常に変化していく時代の中で、ひとりで実施するというのは難しいのではないかと思っています。地域や博物館、いろいろな人やモノを活用してよりリアリティのある授業を設定し、決められた解答を得るのではなく、子どもたちが自分で考えて問題を発見し、できればチームで取り組むということが大切になってきます。そのような中で、新しい教育を考えた場合、学校や授業のあり方も問うていかなければならないと思います。学校の先生と児童・生徒の関係だけでなく、いろいろな人たちとの関わりを構成していくことが大事になってくると思います。そういったことで、学校の教育機能が充実していくなかで、そこに参画する人にも大変良い影響があると思っています。これまでの上から一方的に教える関係だけでなく、フラットな関係の中で様々な考えや思いを交換するためのコミュニケーション能力やプレゼンテーション能力が大切になってきます。またいろいろな関係ができてくるので、地域のつながりができてくる。コミュニティにとっても生涯学習的な意味も含めて大変大きな効果があると考えています。 それから、わたしなりに博学連携の資料をいくつか調べてみました。おもしろいと思ったのは、博物館の講座でガイドやボランティアを養成して、その人たちが子どもたちの学習を手伝うということです。学芸員と先生が直接会うことも意義深いのですが、地域の人が入ることによって広がりが出る。また継続性を持たせるために地域の人にも学んで参加していただくことで、子どもたちにも喜んでもらう。これは素晴らしいことだと思います。 今日行なわれたワークショップは、意識の高い方々の集まりで、まさしく新しい公共を築いていく大変重要なことだと思っています。ただしこれを日常化するためにはもっと「地域」を介在させたほうが良いのではないかと思います。また参加者名簿もありますので、お互い支え合うといった意味で情報交換することで、モチベーションを維持する。それも大事なことだと思います。今後、情報交換を活発化させることで、みなさんの取り組みが継続することを期待しています。 最後に、いま私たちは「熟議」ということをすすめています。それはワークショップだ、という見方もありますが、私たちは熟議を「対話」と「協働」として捉えていて「多くの当事者による『熟慮』と『議論』を重ねながら課題解決・政策形成をしていくこと」だと考えており、これには2つのパターンを作っています。 ひとつはネット熟議です。いままでの政策形成は、私たちが資料を作って中教審で議論してGOする、という形が多かったのですが、ともすると現場の意見が入ってこない、大都市の例でしかない、など一部の声でしかなかった。そういった限界をはねのけるために、ネット上であるテーマについていろいろな意見をもらっています。パブリックコメントと違うところは、全部見えるということです。みなさんの意見も見られるし、私たちが答えた内容も見ることができるなど透明性を高くしています。 もうひとつはリアル熟議ということをやっています。あるテーマについて、課題を共有する現場の当事者が集まって、その現場で熟慮と討議をするというものです。まず課題、理想と現実のギャップについて参加者が提起し、共有します。熟議はフラットで全員参画の場であるとともに、効率的に解決案を討議していく場であります。このため、自分の意見を言う時は2分以内にする、課題を大きな字で付箋に書く、つまり「見える化」するということが大事になってきます。よくあるように「○○さんの意見だから」と収めるのではなく、集まった人が課題を共有化し、解決策案について整理をしていくなかである程度のグルーピングができると思います。このグルーピングも自分達でしてもらうことで、参加者の達成感も上がります。もし解決策が出なければメールで話し合い、できればまた会って話す。継続が大事です。その間にいろいろな行動を起こす人もいます。これはまさしく、誰かがやってくれるだろうというやり方から大きく踏み出したやり方だと思います。みなさんにもいろいろな形で現場に戻った際に、ぜひそういったことを頭の隅に置いて、新しい関係づくりに取り組んでいただくことを期待したいと思います。ありがとうございました。 ワークショップ講評@ 吹田市教育委員会 学校教育部 学校教育室  松井静子 吹田市教育委員会 学校教育室の松井です。よろしくお願いします。 各グループが、とても熱意あふれる検討をされていて、圧倒されました。お疲れ様でした。私自身も、知的好奇心を大いに駆り立てられた楽しい一日でした。ありがとうございました。実際に、実物の展示を見たり、触ったりすることのできる博物館での体験は、子ども達に多くの発見と、大きな感動を呼び起こします。吹田市は、民博で調べ学習を行う際の、環境を整えることを目的として、民博・千里文化財団・自然文化園と関係会議を重ね、希望する学校が入館できるよう2003(平成15)年度より予算措置をしており、2009(平成21)年度は、小学校14校、中学校5校。2010(平成22)年度は小学校11校、中学校10校が活用しましたが、今日のワークショップに参加して、いくら予算措置をしていたとしても、学校が有効に活用するためには、その利用の可能性を、指導する教師が知らなければ、学校の教育活動に博物館を積極的に位置づけることは出来ないし、たとえ子どもたちを博物館につれてきたとしても、豊かな「学び」に繋がらないと今更ながら、痛感いたしました。 1班の「骨のある生活」では、導入から、仮説・検証にわたり、話し合いが大変多く使われていることに感心しました。新学習指導要領では、「言語活動の充実」「コミュニケーション能力の形成」が言われており、これは「国語」においてのみ限定されるものではありません。子どもたちに、体験を通じて感じたことを言語化させるという指導、さらに言えば「体験」のしっぱなしではなく、相手に伝えようとすることで、自分自身が考えを整理し、意識できるのです。そういう意味でも、民博での体験を言語化できる取組でした。 2班「調べよう。世界の住まいと家族」は、家庭科に位置づけておられました。家庭科では、衣食住や家族の生活などについて関心を持ち、これからの生活を展望して家庭生活をよりよくするために進んで実践しようとする関心・意欲や態度の育成が求められています。事前学習の自分の家についての発表は個々の生活環境が見えるので大変難しく、配慮が必要ですが、世界の住まいを民博で調べ、振り返り共有する。ロールプレイで発表したり、環境問題にまで広げることで、生活への関心や、意欲が深まる取組でした。 3班「水道のない山の中でお茶を飲もう:飲料水を運ぶには??」この取組は、民博を有効に見学できる取組だと思います。体験的な活動を行っても、教師やゲストティーチャーの指示に従い、言われたとおり行動するのであれば、指導者の期待するようなことは出来るものの、それ以上のことは得られません。しかし、「おいしいお茶を飲みたい」と、子どもたちが対象に主体的にかかわり追求してはじめて、その活動から直接経験としての学びが生まれることになります。子どもたちが真剣に見学する様子が目に浮かぶようです。 4班「みんぱくでクッキング」この取組は、報告された方が冒頭に「せっかく来るのならしっかり見てほしい。」と言っておられましたが、事前学習をしっかりさせ、民博で観察・調査し、必要な情報を集めて知りえたことを記録し、比較関連付けしながら、再構成する学習や、考えたことを自分の言葉でまとめ伝え合うことにより、お互いの考えを深めていくことの出来る取組でした。道具に着目したことも、面白かったです。 5班「みんぱくで色探し」は、「仲間で色のコラージュをし、わくわくしたい。」と報告者が言っておられましたが、一つの色でも様々な色合いがあることを発見し、発表することで、自分自身の考えをまとめ、次にステップすることが出来る、ステージが広がっていく可能性を感じさせる取組でした。造形や美術が私たちの生活にうるおいと豊かさをもたらしているわけですが、生活の中で美意識を磨くきっかけにもなる取組でした。 6班「色の組み合わせを考えてみよう」は、導入段階で民博にデジカメを持って、好きな色2色を探しに行くというものでした。子ども達はたくさんの色の組み合わせを探すわけですが、こうした活動を通して、感じたことを話したり、友達の話を聞いたり、写真に対する思いや考えを説明しあう、批評しあう活動が可能となり、作品を作るという創造的な活動にもつながる取組でした。 7班「はっぱはどこ?」の取組は、わくわくするものにしたいと報告の際、言っておられましたが、確かに広い展示エリアから葉っぱを見つけてスケッチするのは、楽しそうだなと思いました。低学年を想定した内容でしたが、発達段階に応じて、それぞれの国の文化への関心・理解を深めることが出来るのではないかと思いました。また、実物にかえるとのことで、自然の観察にもつなげることのできる取組になると感じました。 8班「検証!!みんぱくの魚具は日本の川で使えるか?」では、本物を見ることが、子どもの学びに単なる知識としてではなく、しっかりとした知恵として根付くように感じました。「学校に帰って、作ってみて、付近の川で使ってみる」と、発表しておられたので、「吹田では難しいかなあ」と思っていたら、「なぜ取れないのか」という課題を提供するということだったので、たとえば環境問題のような課題にもつなげることが出来る取組だと感心しました。 9班「世界のお祭りを調べよう」では、「幸せ」というテーマをどのように取り扱われるのだろうと、楽しみにしていました。どの教科でも、子どもたちの日常生活で出会う事柄や体験と関連付けながら、指導することが望まれていますが、なかなか直接的な体験は出来ません。それを調べ学習として扱うことで、幸せの価値観の多様性に気づかせるという教師の仕掛けを置き、人権学習などの導入に用いるというのは、とても面白い取組でした。社会科でのタイトな取組ではなく、総合や、道徳に広がればより深まると思いました。 10班「楽しい点字」は、伝え合う力の育成として「国語」に位置づけられましたが、この「点字は美しい」という視点は、総合でも…と思いました。学び方やものの考え方、自己の生き方、他者や社会とのかかわりという観点の中で、点字を入り口にして、学習活動がどんどん広がるのではないかと思います。国語の教科で導入し、総合で展開することも可能です。新学習指導要領で総合の時間は減りますが、学年を跨って継続的に学習することで、10班報告にあった「愛がいっぱいあるクラス、学年、学校」になればいいなと思いました。 最後に、吹田の子どもたちは教科学力は概ね良好ですが、学ぶ意欲に課題があることが全国学力学習状況調査などでも明らかになっているのですが、今日のフォーラムに参加し、子どもの学習意欲を高めるためのヒントを頂いたように思います。「わかった」という喜びや、「できた」という達成感を感じたとき、子どもは自ら学習しようという意欲を持ちます。「学びたい」「学んだことを活用したい」という思いをひきだす授業作りが、いかに大切か、このフォーラムで改めて認識いたしました。これからも、博学連携の可能性を学校とともに、教育委員会も一緒に探っていきたいと思います。どうかよろしくお願いします。 ワークショップ講評A 滋賀県立琵琶湖博物館 環境学習センター  布谷知夫 10グループからの発表は素晴らしいものであった。当日の朝に初めて会い、グループに分かれて発表まで、昼食をはさんで4時間足らずという条件の中で、それぞれが新鮮で工夫されたプログラムを作り上げていったことを、さすがにプロの仕事と思った。個々のプログラムへの詳細は避けるが、幾つか素晴らしいと思ったことをあげると、 1)単に展示場で知識を伝えるのではなく、参加者間で考える内容になっていたこと。 2)それぞれの学習参加者が、知っていたことや考えていることを一歩先に発展できる内容になっていたこと。 3)事前に学校での学習、課題を持って展示場、そして学校でそのまとめをして資料をさらに集めて調査し、最後に発表という流れが、どのプログラムにもみられたこと。 4)ひねった設問や工夫など、子どもたちの意表を突き、興味を持つ内容になっていること。5)ゲーム的な要素やコレクションの要素を含んで、楽しく参加できる内容であったこと。 5)ワークショップのプレゼンテーションが、色、内容、構成と素晴らしかったこと。 6)各プログラムの内容や対象は、同じ考え方で展開すると、いろいろな発展形を含んだ内容になっていること、などをあげることができる。 そして、どのプログラムも、本当にわくわくしながら学ぶことができるだろうし、今回のワークショップのためだけのプログラムではなく、実際にぜひやってみて、結果を交流し、その成果を受けた次のプログラムを作ることができれば素晴らしいだろうと思った。 プログラムを作ることについてはそのような成果を上げることができたが、加えて今回のワークショップには興味深い成果が含まれていると思う。一つには、学校の教員と学芸員とが同じテーマで議論をするという場が非常にスムーズに作られたことである。個別の感想を聞いていると、何人かの学芸員から、「教員が持っているスキルのすばらしさに改めて感心した」という声があったことが印象的であった。学芸員はともすればこういう場でも教える側になってしまい、議論を作ることができないという場合があるが、今回はプログラムを作る、という課題に向けて、両者が協力し、議論をすることができたと思う。それは今回のプログラムが知識を教える場にはしない、という考え方があったためである。 もう一つの成果は、展示とはそれを見る側が主体的な視線で見ることができる場なのか、という展示に関する最近の議論についての答えを出してしまえるようなプログラムであったということである。展示は展示を作る側のメッセージが含まれ、それを伝える場という考え方に対して、最近では作る側と見る側との両者の主体が交錯する場であり、展示室という場の在り方を考えるのであれば、見る側の主体が優先されるという考えが出されている。今回のワークショップのプログラムは、多くが展示意図を伝えることは目的にされておらず、関連した資料をつないで横断的に見たり、自分の暮らしと関連付けたり、資料があるからこそできるワークではあるが、展示意図そのものではない場合が多かった。そして展示を使って世界の民族の暮らしに向かい合おうとするという点では共通していたように思う。展示資料について学ぶだけではなく、資料を使った学びを広げていくという展示利用の可能性を広げたものである。 このような大きな成果はあるものの、博学連携を進めていくという目的からいうと、学芸員の立場ではもう一つ先の連携があるようには思っている。そもそも博学連携というものは、学校と博物館の両者のもっとも得意で特徴的な部分を相互に生かして、片方ではできないような新しい成果を上げることをいうのだと考えている。一番良く行われている博学連携は出張授業等ではないかと思うが、これはどちらかというと博物館のサービス事業になることが多い。それが悪いということではないが、博物館の立場では、どちらかというと博物館を知ってもらうために行っている事業であり、博学連携というには弱いのではないだろうか。 博物館と学校との学びの目的の共通項は、学びたいという気持ちを育て、その達成感や満足感を感じることについての手助けをすることである。学校の場合には、学年やカリキュラムがあり、大きな枠の中では共通的・限定的に進める事業ということになるが、博物館の場合には、個別の博物館ごとにその理念や目的が異なるために、連携をする場合でも異なる方法や内容になるのが普通である。例えば琵琶湖博物館の場合は全ての事業目的は「自分がくらす地域に目を向ける」ということとしており、博学連携についても、その事業を行うことで地域に目を向けるにはどういう内容にすればいいのか、という視点で考える。博物館によってその理念や目的は異なるので、博学連携についても、その内容は学校と博物館の組み合わせによって、個別に異なるのである。 また博物館の場合は、資料や展示室だけでなく、学芸員という研究者がいることが大きな特徴であり、この博物館資源をすべて活用することが最も効果的な連携の内容であるべきであり、博物館の立場での博学連携を考えるためには、そういう博物館学芸員と教員とでどのようなプログラムにすればいいのかを十分に打ち合わせて行うのがふさわしい。今回のワークショップはその目的が絞り込まれ、最初から教員と学芸員の協力のもとで行われたが、今後、参加された教員や学芸員が近くの学校や博物館との博学連携事業を始めようとした場合には、そういう点を意識して時間をかけて準備をしないと、一方的な展示利用になる可能性があり、今後の実践的な課題であると思う。 3年前に琵琶湖博物館から始まった博物館教員の全国的な交流会議が発展し、第4回のワークショップを実施できたことは、会場を引き受け、事務局をしていただいた民博と担当された五月女賢司氏、さらに魅力的な内容を計画し準備された準備グループの皆さんのおかげである。心から感謝するとともに、来年度以後の発展についても期待をしたい。 第1回 - 第3回の担当者から 第1回担当者としての思い 大津市立瀬田北中学校(元滋賀県立琵琶湖博物館)  中村公一 ある博物館教員の言葉、「会いたかった。」これが、このワークショップの原点である。 前々回の学習指導要領の改訂で、学校と博物館との連携についてより積極的な利用が求められ、それについての優れた実践事例や研究成果も発表されるようになってきた。これまでも博物館は、学校教育にとって利用価値の高い施設であったが、実際には、博物館の側には学校利用に対する十分な配慮やハード・ソフト面での対応が不足し、また学校側も博物館の施設を積極的に利用するという考え方はあまり見られなかった。時代背景からも、学校週5日制になり、子どもの土曜日の学びの場として、博物館などの社会教育施設が注目されたことや、総合的な学習の時間の創設により、教科領域を超えた多様な学びが明確に求められるようになったことが学校側からの博学連携の追い風となった。また博物館側にも生涯学習施設という位置づけが明確になり、単に資料を収集・保存するだけでなく、人々の学びにいかに貢献するかが課題となり、いわゆる「ハンズオン」など利用者自身が学ぶ展示手法や博物館活動そのものを理解するような、裏側展示や体験型の事業が積極的に取り入れられるようになったのだと思う。「ハンズオン」などとともに、欧米から有効な博物館教育の手法なども紹介されるようになったが、欧米と日本では学校教育システムが根本的に違うため、博学連携という点では、なかなか欧米の優れた事例も取り入れられることはなかった。日本の学校の博物館利用はまだまだ校外学習などでの利用であり、100名以上の児童生徒が一度に来館する場合が多い。筆者が参加した2007年11月に中国天津市で開催されたユーラシア博物館サミットの博学連携分科会でも、ヨーロッパの博物館の少人数の子どもを対象にした事例では参考にならないと、中国・韓国・香港・モンゴルなど、東アジアの研究者がつぶやいていたのが印象に残った。 そういったことからか公立の博物館では、学校教員を博学連携の担当者として、「ミュージアム・ティーチャー」や「博物館教員」などという職名(以下、博物館教員と表記)で博物館に配置することが行われてきた。それまでも、多くの博物館が教育委員会の所管であることから、学校教員として採用された職員が博物館に配置されることもあったが、それは収集・整理・展示・保存を担当する学芸員としてや館長などの管理職として、または退職校長の嘱託職員などとしての配置であり、博学連携の事業を担当し、専門研究分野を博物館教育学としての配置は、ごく稀な場合であったと思われる。しかし近年、来館してくる学校に、多様な学習プランを提示し、実践する博物館のスタッフとして日々、事業を展開するとともに、その実践した内容に基づいて、子どもの学びや教員の教育力向上にどのように有効であったか、博物館側にとっても、学校と連携することでどのような意義があったか、よりよい連携の方策はないかと研究する博物館教員が増えてきていると考える。また欧米などで、博物館教育を研究されたエデュケーターなどと呼ばれる方やそれぞれ専門の研究分野を持った学芸員の方にも、博学連携についても研究をされる方が増えてきた。 日本でも資料館などで、昔のくらしの学習などで地域の学校との間での少人数での連携は以前からされていたはずであり、それは今も有効な博学連携の実践である。しかし今、学校から求められているのは、校外学習などで博物館を利用するときの有効な子どもの学びの手法であると感じている。筆者の勤務していた琵琶湖博物館もそうであるが、校外学習シーズンには、ハンズオン展示の周りにたくさんの子どもが群がり、展示について考える時間もなく、移動する。展示物を見る視点を与えてやるはずのワークシートも、シートの空欄を埋めることだけに気を取られ、展示物をろくに見ないまま、記入し、次のコーナーへ移動している。など、現場にはたくさんの課題がある。また、貸出標本などを作成しても、教育課程上、時期が重なったり、学校では利用しにくい大きさであったりと、博学連携をする上でのさまざまな課題について、共有し、改善のアイデアを出す場が必要とされていた。冒頭の「会いたかった。」は、琵琶湖博物館の博学連携について視察に来られた他館の博物館教員の言葉である。このような課題について研究するための博物館教員であるが、都道府県、あるいは政令指定都市採用であるため、同じ立場の博物館教員は同僚以外にはほとんどいないので、相談できる人がいなくて、たいへん困っていたので「会いたかった。」という言葉が出たそうである。このようなことからも、博学連携の研究者コミュニティが必要であると感じた。学校教員の多くは研究会や学会に属していない。校務多忙であることも、研究会に参加していない要因でもある。教科領域の研究会も年1回程度の全国大会はあるが、それも参加しにくい状況である。そのため、全国規模で博学連携について、教員の立場で語れるような研究者コミュニティはほとんど存在しなかったといえる。全国各地で博物館教員が日々、実践を積み重ねながら、博物館教育学の研究者コミュニティが不足していることは日本の博物館教育界の大いなる損失でもあると、筆者は感じ、第1回目のワークショップを企画し、琵琶湖博物館で開催した。第1回目ワークショップの参加者より、博学連携の研究者コミュニティとして、この会を年1回継続開催していくことに賛同を得た。動物園水族館では、日本動物園水族館教育研究会が長年、研究者が語り合える場をつくることで、学校連携のノウハウの蓄積や成功事例、失敗事例の共有、若手研究者の育成などに、研究会が有効に機能していると感じている。そしてこの会を「ワークショップ」と名付けたのは、日本でのこの言葉には「参加者が経験や作業を披露したり、ディスカッションをしたりしながら、スキルを伸ばす場」の意味もあるからである。時間をかけて教員と学芸員とが、展示・資料の活かし方について、授業での展開について、話をしあい、いろんな見方があることをお互いに学び、教えあう、そして若手研究者が先人の博学連携に対する思いを継承していけるような会であって欲しいと願っている。 第2回、第3回に関わった立場から 海の中道海洋生態科学館  高田浩二 第1回博学連携ワークショップ(WS)が開催されたのは2008年2月。琵琶湖博物館の中村公一氏(現、滋賀県大津市瀬田北中学校教諭)が立案されたのがきっかけであった。全国のいくつかの公立博物館には、教育委員会から学校現場の教員を「ミュージアム・ティチャー(略称:MT)」という立場で、一定の年数を任期に、主に博物館と学校の教育連携を目的に配置されている。つまりMTは、日頃から博物館と学校の間の架け橋となり、様々な教材やプログラム、教材の開発、授業の実施を業務としてきたといえる。 ところが、この制度を導入している館園はまだ少なく、博物館の学校教育連携には、現場の学芸員やその他の職員が兼業的に取り組んでいるのが実情であり、またそのような役割を果たしている担当者が、日頃からの情報交流やコミュニケーションをする機会や場が少ないという実態もあった。そこで中村氏が提案したのが、MTに相当する業務を担当している職員を対象に、教材やプログラム開発を行なう「博学連携WS」の開催であった。  当館にはMT制度はないが、教育活動を主業務に行なう学習交流課という組織があり、このセクションが学校教育連携も行なっているため、第1回WSに学習交流課長を出席させた。初回となった琵琶湖博物館の研修会では、ずいぶん盛り上がり成果もあがったのだろう、「できれば毎年、継続して実施したい」との要望が出され、その場に参加されていた九州国立博物館(福岡県太宰府市)のMTである永井真佐美氏(現、修猷館高等学校)が、第2回大会を「九州大会」で開催すると宣言してお開きになったようである。 帰郷した永井氏から、九州大会の具体的な相談があったのは、それから8ヶ月以上も経過した10月末であった。その時のメールをそのまま紹介すると、「マリンワールド・いのちのたび博・九博の3館合同でできたらいいですねと、三宅さんといのちのたび博の松永先生とお話ししていましたが、実現は可能でしょうか?」という突然のお誘いであった。 時はすでに11月直前、前回と同じ頃に実施するにはあと3ヶ月余りしか残されていない。かなり厳しいスケジュールではあったけれど、琵琶湖博物館でのWSでせっかく芽生えた博物館と学校のコミュニケーションを、さらに大きく育てるには「継続するしかない」という熱い決断の元、さっそく第1回目の準備委員会を3館合同で開催した。日程的に何度も委員会を開いている猶予はなかったが、幸い、九州国立博物館の永井氏は現役のMTで、また会場を提供いただける北九州市立いのちのたび博物館からも、MTの福田修二氏と黒野祐也氏にご担当いただけることになった。また、やや手前味噌ながら、当館は学校連携の経験も多く、前述のように教育部門の専門スタッフがいるため、開催に必要な要員と体制は整っていた。それでも、わずかな期間で準備するには、初回の委員会で、日程、テーマ、プログラム、役割分担、準備品などを決めた。その後、大半の打ち合わせはメール環境で行ないながら1回の会場下見も済ませ、参加者募集が始まったのは12月20日であった。この間のチームワークもすばらしく「手弁当」の委員会であったが、本大会も皆さん大半は自費参加であるので、一層に大きな成果が得られ、参加してよかったと思われる会、また集まりたいと言われる会にすべく、内容の充実に努めた。 第2回大会のテーマは「いのちのたび博物館が教室になる!」とし、同館の展示すべてを教材と見立て、あらゆる教科、単元で博物館が利用できる授業案を、博物館職員と教員が連携して制作するWSにすることにした。また、3館合同開催であるため、開催館の小野勇館長からの挨拶に加えて九州国立博物館の三輪嘉六館長の基調講演を、さらに私がWSの講評を務め、各館から学校連携の実践例も発表することにした。募集期間が短いことや年末年始を挟むことなどから、定員は欲張らずに50名としたが、開催日(2月14日-15日)直前まで応募があって、最終的には80名にまで膨らんだ。すでにこの時から、博学連携を目指す博物館や学校現場からの熱い期待を感じていた。 第2回大会は、このように準備期間が極めて短かったが、80名もの参加があり、10班に分かれた各班からは、理科だけでなく、図工、社会、算数など多くの教科での活用が提案された。それらのWSの概要や指導計画書は、いのちのたび博物館のHP(授業での博物館利用)のページから班ごとにデータがダウンロードできるので参照願いたい。 第2回の九州大会には広範囲から参集いただけたので、この文化は全国に広め継続してこそさらに価値が高まると思い、参加者の中から関東地区の博物館職員さん(梶谷東輝氏@船の科学館、鈴木みどり氏@東京国立博、田口公則氏@生命の星・地球博、太田歩氏@国立歴史民俗博)にお願いし、第3回は関東での開催でお受けいただくことにした。前もっての相談もなく、急に会場でのお願いであったが快くお引き受けいただいた。 その後、第3回関東大会は、上記の委員により準備委員会を設立され、第2回同様に数度の委員会やメール環境で着々と準備を進められ、船の科学館を会場に2010年3月6日に本大会を開催していただくことになった。船の科学館では、以前より「海と船の博物館ネットワーク事業」という助成事業を行なっており、この3回大会では翌日の3月7日に、その助成事業の説明会もあわせて実施いただいた。2つの事業が合体し、博物館の相互連携も図れることからこの回も50名と多くの参加者があった。またワークショップのテーマは「博物館まるごとチラシづくり」とし、船の科学館の展示を通して、学校利用のためのチラシを班ごとに作成する作業となった。各班から提出された連携学習の案には、船に泊まっての学習や船員の仕事体験、船の構造や仕組みを探検、過去から現代への船の進化発見など、体験型の活動が多く含まれ、学校からのニーズもつかめた大会だった。 私はこの第3回大会でも、各班の成果物への講評という役割をいただいたが、博学連携WSのねらいは人と人のネットワーク作りでもある。博物館も学校も、この場で共に語った夢が一つでも多く実現でき、皆がハッピーになることを心から願っている。 ミュージアム・ティーチャーに関する調査報告 滋賀県立琵琶湖博物館  戸田孝 大津市立瀬田北中学校(元滋賀県立琵琶湖博物館)  中村公一 学校と博物館の連携について論じる場合、その各々に属する職員、すなわち学校教員と博物館職員の連携という観点で論じることが多い(例えば中山ほか5名(2006)など、あるいは溝邊・藤井・野上(2007)のレビューを参照)。しかし、実際には研究者である学芸員とは別に教員身分の職員が博物館に在籍している場合がある。そして、このような「博物館に在籍する教員」(以下、「博物館教員」と呼ぶ)の全国的な実態は明らかでない。例えば、文部科学省や日本博物館協会などの統計調査でも、学芸員資格などの属性に着目するのが通例であり、教員としての属性に着目した調査は見当たらない。従って、一口に「博物館教員」と言っても、各館における具体的な立場や役割が同じであるとは限らず、他館との連携を考える上でも、そもそも連携が可能かどうかを判断するための情報が乏しい。 今回の博学連携ワークショップの原点となった2008年2月の「ミュージアム・ティーチャー・ワークショップ」も、そもそもはこの状況を改善するための情報収集から始まったものである。実際に参集してワークショップを開くという活動も、この情報収集の結果があったがゆえに可能になったことである。 しかしながら、その後実際にワークショップなどの形で連携活動を進めることに精力を注ぎ込んだため、情報収集活動自体は不完全な状態に留まっている。現在、改めて計画的に情報収集を実施し、学術的な分析に耐えるデータとするべく計画しているところであるが、ここでは出発点となった情報収集活動の概略について報告しておく。 情報収集に際しては、まず琵琶湖博物館に所蔵されている各博物館の年報などの報告書を基礎として、インターネットで公開されている各館の情報も利用し、教員が常勤している可能性があると思われる博物館152館を選択した。そして、2008年1月に該当館に郵便によるアンケート調査を実施した。このアンケートには「他に知っている、教員が常勤している博物館」を回答してもらう質問項目を設けており、その回答を集計すると、当初選択した152館に含まれない14館が検出された。そこでこの14館にも同じアンケート調査を同年2月に実施した。以上2回のアンケートの合計で、対象館166館のうち119館から回答があり、有効回答率を単純に計算すると72%となった。なお、分析が繁雑になるのを防ぐため美術館を調査対象から除外したが、この処置は無意味であったことが分析結果から明らかになっており、今後の同様の調査では美術館も含めるべきであろう。 調査の正確性を期するならば、「博物館教員」とは何者であるかということを的確に定義したうえで質問するべきであろう。しかし、その定義を定める前提が無い状態なので、今回は制度的に明確にできる「教員身分の職員(教員採用試験で採用された方)」という定義とし、微妙な事例(採用後に職種が変更されたり館長などの管理職に就いていたりして、教員としての立場が保たれていない場合など)の判断は各回答館に任せる形とした。 調査の結果、回答があった119館の58%にあたる69館に現職教員が在籍することが確認された。この69館のリストは今後の調査の基礎データとして重要であると考えられるので、以下に掲載する。 北海道立文学館、札幌市青少年科学館、小樽市総合博物館、秋田県立博物館、盛岡市子ども科学館、仙台市科学館、仙台市博物館、山形県立博物館、福島県立博物館、福島県文化財センター白河館まほろん、ふくしま海洋科学館、ムシテックワールド、茨城県立歴史館、茨城県自然博物館、栃木県立博物館、小山市立博物館、群馬県立自然史博物館、群馬県立歴史博物館、県立ぐんま天文台、群馬県立ぐんま昆虫の森、山梨県立科学館、山梨県立博物館、山梨県立考古博物館、千葉県立安房博物館、千葉県立関宿城博物館、浦安市郷土博物館、埼玉県立川の博物館、埼玉県立自然の博物館、神奈川県立生命の星・地球博物館、川崎市青少年科学館、新潟県立歴史博物館、長野県立歴史館、富山県立山博物館、福井県立恐竜博物館、福井県立歴史博物館、福井県立若狭歴史民俗資料館、浜松市博物館、名古屋市科学館、碧南市海浜水族館、美濃加茂市民ミュージアム、三重県立博物館、京都市青少年科学センター、兵庫県立人と自然の博物館、兵庫県立歴史博物館、兵庫県立考古博物館、神戸市立博物館、姫路科学館、和歌山県立自然博物館、岡山県立博物館、広島県立歴史博物館、広島県立歴史民俗資料館、広島市こども文化科学館、鳥取県立博物館、山口県立山口博物館、徳島県立博物館、阿南市科学センター、愛媛県総合科学博物館、愛媛県立博物館、高知県立歴史民俗資料館、九州国立博物館、福岡県青少年科学館、北九州市立いのちのたび自然史・歴史博物館、佐賀県立宇宙科学館、佐賀県立博物館・美術館、佐賀県立名護屋城博物館、長崎市科学館、宮崎県総合博物館、宮崎県立西都原考古博物館、沖縄県立博物館 【引用文献】 溝邊和成・藤井浩樹・野上智行:スイスの科学系博物館における教師支援、科学教育研究、第31巻、第4号、421-431、2007。 中山迅・山口悦司・里岡亜紀・串間研之・松田清孝・山本卓也:サイエンス・コミュニケータの力量を有する理科教師を育てる博物館研修の事例研究、科学教育研究、第30巻、第5号、316-331、2006。 資料編 博学連携 ワークショップ 学校と博物館が学びあえる場の構築をめざして 学校の、もっと学校が利用しやすい博物館であってほしいという気持ち。 博物館の、もっと博物館を学校に利用してほしいという気持ち。 学校と博物館がともに、学び合える場を目指すワークショップです。 日時 2011年2月20日(日)10:00〜19:00 要申込・参加費無料 場所 国立民族学博物館 本館2F 第5 セミナー室、本館展示場    〒565-8511 大阪府吹田市千里万博公園10 番1号 対象 博学連携に関心のある学校教員、博物館職員、その他関心のある方 定員 50名 主催 国立民族学博物館 文化資源研究センター 後援 吹田市教育委員会    日本ミュージアム・マネージメント学会    全日本博物館学会    日本国際理解教育学会 学校と博物館、両方にとっての「いいこと」から生まれる、子どもたちの博物館での「学び」について、一緒に考えてみませんか? <プログラム> 受付 10:00〜10:15 挨拶・趣旨説明・各班内自己紹介 10:15〜10:45 事例紹介(※1) 10:45〜11:15 ワークショップ(※2)の説明 11:15〜11:30 昼食・館内見学・ワークショップなど 11:30〜15:30 各班ワークショップ成果発表会 15:30〜16:10 講演(※3) 16:10〜17:00 ワークショップ講評(学校・博物館関係者) 17:00〜17:20 情報交換会(懇親会) 17:30〜19:00 ※プログラムの内容は変更される可能性があります。あらかじめご了承ください。 ※1 事例紹介: 学校と博物館が連携した事例を紹介します。学校の先生及び、博物館関係者に発表いただきます。 ※2 ワークショップ: 学校の先生や博物館職員などで班を作り、テーマに添って授業プランを考えます。班編成は参加申込書で選んでいただいたテーマの希望を考慮します。 ※3 講演: 文部科学省 生涯学習政策局 政策課長の上月正博氏にお願いする予定です。学校と博物館について、地域連携など生涯学習の観点から、お話しいただきます。 <参加について> ・参加費: 無料/定員: 50名(先着順) ・参加には申込が必要です。メール・FAX・郵便にて受け付けます。 FAXまたは郵便にて申込の場合は、別紙の申込書を記入の上、お送りください。 メールでの申込は、別紙の申込書の各項目をメール本文に入れてください。 ・参加申込〆切: 2011年1月31日(月)必着。なお、こちらからの返信をもって受付完了とさせていただきます。 もし2月4日(金)までに返信がない場合はお問い合わせください。 ・駐車料金は有料です。乗用車1,200円(最寄りの駐車場は日本庭園前駐車場です。入庫は9時から16時30分まで、出庫は18時まで。) ・昼食は各自ご用意ください。館内にレストランがありますので、そちらもご利用いただけます。 ・当日の博物館見学は無料です。 ・館内での写真撮影は可能です(三脚の利用不可)。 ・情報交換会(懇親会)に出席される方は別途実費(参加費1500円)が必要です。当日受付にて徴収いたします。 参加申し込み及び問い合わせ先: 国立民族学博物館 文化資源研究センター 五月女賢司研究室 〒565-8511 大阪府吹田市千里万博公園10番1号 FAX:06-6878-7503  E-mail:ksaotome@idc.minpaku.ac.jp <そのほか> ・資料・パンフレットコーナーを設けます。2月14日(月)までに上記の問い合わせ先までお送りください(着払い不可)。残部の返送はいたしません。 ・宿泊の手配、交通経路などは各人でお調べの上、確認をお願いします。 申込日:    年  月  日 国立民族学博物館 文化資源研究センター 五月女賢司研究室 行 博学連携ワークショップ 参加申込書 名前(ふりがな) 所属(施設名/学校名) 連絡先(TEL/FAX/E-mail) 専門分野(教科/担当学年など) ワークショップで興味のあるテーマ(第3希望まで)・骨 ・住まい ・数 ・水 ・乗り物 ・糸 ・顔 ・食 ・色 ・扉 ・葉 ・魚 ・幸せ ・体 ・点字   第1希望 第2希望 第3希望 情報交換会への出席(参加費:1,500円) 参加・不参加 本会参加者の名簿作成への協力の可否(名前・所属・連絡先) 協力する・協力しない(参加者名簿は、当日参加者全員に配付します) 参加者や担当者による調査・研究・広報・個人利用の目的のための、写真やビデオ撮影・音源の録音およびその利用の許諾について 許諾する・許諾しない 参加申し込み〆切り 2011年1月31日(月)こちらからの返信をもって受付完了とさせていただきます。 参加申し込み及びお問い合わせ先: 国立民族学博物館 文化資源研究センター 五月女賢司研究室 〒565-8511 大阪府吹田市千里万博公園10番1号 FAX:06-6878-7503  E-mail:ksaotome@idc.minpaku.ac.jp ※この参加申込書に記載いだたいた個人情報(名前、所属、連絡先、専門分野)は、上述の目的にのみ使用し、それ以外の目的には使用しません。 アンケート集計結果 対象者:71名(対象者は、ワークショップ参加者と準備グループメンバー(館外協力者)のみ) 回収枚数:60枚 回収率:85% @この博学連携ワークショップ(ミュージアム・ティーチャー・ワークショップ)に参加するのは何回目ですか?(第1回:琵琶湖博物館、第2回:いのちのたび博物館、第3回:船の科学館、第4回:国立民族学博物館) 4回目:1 3回目:5 2回目:0 はじめて:54 Aこのワークショップに参加して楽しかったですか? 全然楽しくなかった:0 楽しくなかった:0 ふつう:0 楽しかった:27 とても楽しかった:33 ●「とても楽しかった」と回答した人の理由 ・一定の時間をかけて、テーマと展示を考えながら、ワークショップ案作りができた。 ・色のグループでしたが、波長があったのか、昼食時点でどんどん言葉が出てつながっていった。 ・民博の資料・展示そのものがよかった。それらにもとづいて班でディスカッションができたので。 ・色々な立場の人が、博学連携というテーマに沿って話し合い、実践的なアイデアを多く得ることができた。 ・テーマについて班のメンバーといろいろイメージを広げて話し合ったり、題材を探したり、博物館をかけめぐった。 ・それぞれの専門分野で深い知識をお持ちの学芸員の方々とたくさん交流できたのがとても良かったです。 ・博物館の展示の見方にも様々な見方があり、意見も多様、活用の仕方も多様だったところ。 ・日頃の自分の実践で関わりをもてない館(種)の方と交流ができた。 ・実例報告を聞くだけでなく、実践ワークショップを行うことでより実践に近いものを学ぶことができました。 ・様々な分野の人々が、集まって知恵を出し合う体験ができたから。 ・博物館と学校との連携を考えるにあたり大変参考になった。 ・色々な学校の先生方と意見交換できた。 ・学校の先生や他館の学芸員の方がみんぱくの展示をどのように見ておられるかが分かってとてもよかった。 ・いろいろな立場の人たちと知り合えたから。 ・初めて会う人と協力する体験そのものが楽しい。 ・他の博物館や学校現場の人と直接交流し議論することができたため。 ・色々な職種の人と交流して、作品(?)を作ることができた。 ・様々な専門分野、職業の方と一つのテーマからプログラムを考えることで多様な視点、アプローチ方法を話すことができた。 ・多彩な内容が、短時間にうまく入り満足度があった。 ・分野、職種をこえての会であることに意味を感じました。 ・点字について新しい発見があった。 ・若い参加者の次から次へと出てくるフレッシュな意見に圧倒されました。 ・違う立場の意見を聞けたことや、博物館内を見学していく間も、専門的な解説を伺うことができたりと、とても充実したものでした。 ・様々な意見、考え方が聞けて、プラスになる事が多かった。 ・ふだんは自分の専門の事しか知らなかったので、様々な分野の方とワークショップができて、勉強にもなり、これからに生かせそうだったから。 ・でも、フィードバックが足りずもったいなかった。 ・ただ講義を受けているだけでなく、同じグループの方たちとたくさんお話ができてよかったです。 ・2時間半でネタを考え、発表をするのは非常に難しく思えたが、意外にできたし、頭を寄せ合って考えるのは面白かった。 ●「楽しかった」と回答した人の理由 ・民博の展示を必死になって見る機会となった。また、班別にて交流をしながらの展示見学。学校の先生の子供の学習を基盤とした指導構成づくりのステップを少しだけ感じ取ることができた。 ・授業で使える方法を考えながら博物館の中をウロウロするのは今までにない新しい感覚でした。 ・最初まとまるのか不安でもあったがなんとかまとまった。 ・実習で点字について学べたから。 ・博物館学芸員の方々と学校現場の先生方の熱い思い(連携にむけての)が、感じられた。小さい施設である当センターに生かせるWSの結果を取り入れることのできる要素を実施していけると感じた。 ・立場の異なる方々との協同作業が勉強になりました。 ・博学連携に前向きな人々と協業ができて、自然史系でない博物館が新鮮だった。 ・事例発表で博資料の活用方法、学習の目標設定などについて具体的に知ることができた。またワークショップでは、様々な立場の視点や考え方にふれる機会があった。 ・たくさんの人の考え方を知ったり、自分の考えを伝えれたりして楽しかったし、自信にもなった。 ・新しい出会いがあり、新鮮だった。 ・色々な立場の方の色々な役割や考え方に触れられたため。 ・様々な普段会えない分野の人と交流することができた。自分の知らない分野にもいろいろな博物館や展示館があるのを知った。 ・グループで様々な意見が出てきても、どんどんテーマがまとまっていく様がワクワクして楽しかったです。各グループがテーマを持っていて、そこから色々な授業のテーマを見つけていく、博物館の活用の仕方がいろいろ見れたので参加して良かったです。 ・班のテーマに関連したものを展示室で見つけるのがなかなか難しかったです(広いで!)組み立ても苦労しましたが楽しかったです。 ・立場の違う人との交流ができた。 ・他県、他分野の方々と交流がとれて楽しかった。 B学校と博物館、地域社会の関係について考えるきっかけになりましたか? 全然ならなかった:0 ならなかった:1 ふつう:8 なった:27 とてもなった:24 ●「とてもなった」と回答した人の理由 ・通常の研修では学芸員だけで集まることが多いので、学校の先生やボランティアの方もおられたのでワークショップについて違う面からも考えることができた。 ・ワークショップをする中で、自分が入館(初)した生徒の気分になり館の展示を見る視点を考えることができた。 ・たくさんの方々が集まってらして、色々な話が聞けて、さらに考えさせられた。 ・博物館の利用の仕方についていろいろ考えることができた。 ・これまで博物館に見学に行ってもそこのプログラムを活用させていただくだけでしたが、もっと様々な関わり方があることを知りました。ありがとうございました。 ・上月課長の講演内容が大きなヒントになった。 ・学校と博物館が協力できるよさについてわかったので。 ・上月課長などの先生方の話し方がとても参考になりました。 ・目下の野心が教員の博物館活用をすすめる研修を公的に実現することなので。 ・きっかけになったが、実際に実行に移すにはまだまだハードルが高いことがわかった。 ・小学生から自分の身近な地域を学習するのに実際に見学しながら学びに興味をもたせることで、身近な地域社会に対する学習になると思う。 ・学校対応プログラムの再検討中なので、とてもためになりました。(各教科の視点がかいま見られた) ・地元市(館)でどういった取り組みができるか参考にして実行してみたい。 ・学校と博物館だけだったと最初は思っていましたが、地域社会のことまでは頭になかったので、いいきっかけになりました。 ・以前から興味があったが、多くの方とコミュニケーションをとることの必要性を改めて感じました。 ・中高生を博物館に呼び込むには学校の先生と組むのがよいと思った。 ●「なった」と回答した人の理由 ・具体的な方法は見つからないが教える方向性を与えられた。 ・参加者名簿を今回のように配布していただいたことが、とても有意義だと思います。 ・博物館ならではの資料・研究、教育現場との役割は必ずしも一緒ではない。 ・見学だけで終わらないようにする方向がみえた気がします。 ・博物館と学校のつながりをいかに強めるかという具体的な方策がいくつも発案され参考になった。 ・古川さんのお話はとても面白かったです。社会の先生があれをするなんて。 ・県外の教員と交流する機会が少なかったので、いろいろと意見が聞けて良い機会になった。 ・これまでも自館と地域学校との関係についてよりよいあり方を考えてきたが、せまいグループの中では議論に限界があり、こうした機会があることは本当にありがたい。 ・普段から上記の事柄について考えることが多く、関係をどのようにつなげていくかという課題の一助になった。 ・新たな人とのつながりもでき、実際の連携に結び付きそうに思った。 ・地域社会との関係については?です。子どもの知的な好奇心をかきたてるのに博物館はベストです。これを実践するのがむずかしい、それを考えるヒントを得ました。 ・人と人のつながりができ、それがきっかけになると思ったので。 ・いま、一番の関心どころです。 ・それぞれの館や施設の取り組みや情報交換ができ有意義であった。 ●「ふつう」と回答した人の理由 ・関係性についてより博物館でどんな教育テーマができるかをつきつけた感触。 ・すでに考えている。 ・地域社会との関係は今回のワークショップは分かりにくい気がした。どの範囲をさすのかを明示し、それを共有し合った上で進めないと難しいかも。 ・もともと考えているので、”きっかけ”にはなりませんでした。 ・すでに考えていたので、変化なし。 ●「ならなかった」と回答した人の理由 あんまり地域をしょった話にはならなかったよね。 Cこのワークショップに参加したことで、職場や地域社会において学校と博物館をつなぐための取り組みをしてみようという気になりましたか? 無回答:2 全然ならなかった:0 ならなかった:1 ふつう:8 なった:27 とてもなった:24 ●「とてもなった」と回答した人の理由 ・これまでも学校と連携したワークショップなどは開催してきたが、いろいろとメニューを作って学校だけでなく、公民館などにも提案していこうと思った。 ・博物館は、社会教育機関である。しかし、教育現場の実情にうといため対象者の真のサービスとはならないこともあり得る。地域社会との接点を学校を通じて持つ必要がある。 ・元々、いかに学校での授業と関連させた企画を立てるかという課題を持って参加したので、先生たちとの対話を持つ機会を増やしたいと切に思う。 ・今しているものの実施内容、活動内容を深め見なおしていこうと思った。 ・当センターの地元小学校、中学校に"出前講座”(仮)を考え続けているが今年度こそ(2011・4-)こそ、実施したい。 ・現在も取り組みを展開中だが、さらにすすめていきたいと思う。 ・これからもまたこのようなワークショップがあれば参加し、勉強していきたいです。 ・うまくいった例などの話をして取り入れたい。 ・もっと実際の行動に結びけたいと考えるばかりでなかなかうまくできていなかったが、他の事例や考え方を知ることができたのは有意義であった。 ・現在でも、ある程度連携ができていると思うが、現状に甘えず、さらに充実しなければと思う。 ・地域社会との関係について、上月先生のお話でもう少し取り組んでみようと思った。 ・現場で実行するためには、今回のワークショップの内容をさらに煮詰めていかなければならない。ほぼ完成した形のパッケージで提供できれば現場での活用の道もひらけてくる。 ・すばらしいものが生まれる可能性があると同時にその難しさも実感した。 ・実際に視覚で見ることによって、感じることや興味を持つことができるので、教育に関してつなげていくことで、子どもや生徒の興味、関心を引き出す原点になると感じた。 ・多くの可能性をつぶさないためにも、まずは職場内での取り組みを行ってみたい。 ・大学生・社会人をボランティアにする方法を考えて行きたい。 ●「なった」と回答した人の理由 ・児童・生徒に博物館資料を組み合わせて考えさせることに挑戦してみたくなりました。 ・地元の先生方を集め、小規模に(草の根的に)同様のワークショップを実践してみようと思う。 ・そのつもりで参加させていただきました。 ・博物館にいくことは難しくても、出前授業をしてもらったり、みんぱっくの貸し出しをしてもらったりは可能な範囲で利用のイメージができたので。 ・現在でも行っているが、色々なアイデアをもらった。 ・私は博物館の職員ですが、学芸員ではありません。博と学のどちらの考えでも立場でもないことを再確認し、少し違った方向からつないでいければいいなと思いました。 ・授業や行事で、または出前授業でお互い行き来できれば。 ・地域をつないでいくのは大切だと思うし、地域コミュニティーを作る上で、各々の施設がつながるのは大切なので、繋がっていきたと思ったが、結局マンパワーに終わってしまうのか、どうかが心配! ・学校やボランティア以外とのラインがまだ見えないが、今までアクセスされて動いていた他との関わりの持ち方について、発信型で関わりをどう持つか考えます。 ・とてもと言いたいが、身分不安定のため、継続できるか不安である。 ・職務上、博学とつなぐ役割を求められている。強い必要性を感じる機会となりました。 ・以前から思っており、それはかわらない。 ●「ふつう」と回答した人の理由 ・すでにそうしていただいているので。 ・すでに取り組んでいる。 ・参加したことでは普通だが、必要だと思っている。 ・これもとりくんでいるので。 ・既に努力はしている。 D今後、どのような博学連携ワークショップをご希望ですか? ・今回のようないろいろな団体の方が参加できるものがいいです。 ・博物館・学校の規模(スケール)の違いによる事例(国立レベル、県立レベル、市町レベルetc) ・高校生や大学生を博物館につなぐ。 ・具体例、実践例の発表が参考になる。 ・これからも教員と博物館の職員とが交流を持てるようなワークショップや情報交換ができる場があるとよい。 ・他の事例を知りたい。 ・遠距離校、大規模校との連携(現在は難しい状況) ・具体的にそれぞれの教科、単元にそくしたワークショップを一般の人を含めつくる。 ・今ある展示を遠足などで多数で訪れた子どもたちによりじっくり見てもらい、楽しんでもらうために、展示の場所に工夫をこらしたいと思います。その手法のいろいろを勉強したいです。 ・今回のように可能性を考えられるもの、またしたいです。 ・博物館の課題、学校の課題を共有できるような事があれば。 ・実践型。 ・博物館と教員が話し合う機会がほしい。 ・本日のような授業案作成と検討。 ・小学校、中学校別や教科別などグループワークショップ分けも可能ではないでしょうか。 ・もっともっと学校の先生が参加するべきです。 ・実際に今回考えたような授業案を体験してみる。 ・学校から利用可能な博物館での少人数ワークショップ。 ・ここでできえたものを実際にやってみた報告などもあったらよいかもしれない。 ・具体的なテーマに対する博物館の利用といったワークショップにすると、深いものになると感じた。 ・活動地域や分野ごとに班になり、実際に実施可能なワークショップ。 ・二日間の構成にして、今日考えた授業を二日目にやってみたいと思いました。一日というのがもったいない気がしました。(展示物を初めて見たからかもしれませんが、授業を発信する側のワークショップに参加する側としてもう少し教材を知りたい気がします。 ・参加者からもっと意見がきけたらいいなと思いました。 ・今回と同じ教員の方々と意見交換できれば。 ・”子ども”も加わらないとわからないこともあると思います。 ・今回のワークショップのようなことを継続していくことが、博学連携を密にする礎となると思います。このような手法を継続していくことを希望します。 ・よろしくお願いします。 ・強く希望する。 ・大学生にワークショップ゚を行わせたい。 Eその他、博学連携ワークショップに参加して気づいたこと、感じたことなどをご自由にお書き下さい。 ・今まで博物館にあるものだけを見て、なんでもあると思っていましたが、テーマを決めて見ていくと、ないものもあるんだと気付きました(おもしろい!)。 ・まず普通に見て、ワークショップをしながら見て、またもう一度じっくり各博物館を三度楽しめると思いました。 ・博物館関係者から現場の先生まで、様々な視点から子どもたちのことを考え、意見交換する時間になり、本当に充実した体験だった。 ・民博の研究員が各班に参加すると良かったなあ。 ・お題が漠と抽象的だったと思う。多様な意見が出て面白いが時間が足りない。もう少し絞り込んで中身を深めたい。 ・多くの方々と知り合えたことがよかった。 ・もう少し休憩時間を効果的に入れた方が、講演への集中が高まるでしょう! ・関東地域からの参加が少ないのはなぜ? 大阪での開催ということだけではないのですか?山梨、長野にも博物館があるが…千葉の歴博は別ネットワーク? ・博学連携のワークショップの参加は初めてですが、過去の開催博物館がかわっているのは、いいことだと思います。 ・初めての参加でしたのでどういうものか全くわからなかったので事前に少しでも知っていれば、学芸員の方にお答えできるように教育課題の資料を持ってこれたなあと反省しました。 ・しゃべりが苦手な人間にはちと酷か。時間が少ないこともあったかもしれません。 ・良い意味で時間的余裕があるともっと広がり、深まりがうまれたのではないでしょうか?(負担は増しますが、北九州の時のように一泊二日でもと思います) ・学校のとりくみをもっと知りたいと思った。外からはやはり敷居が高いと感じてしまう。 ・プログラムにゆとりがほしい。 ・発表についての交流(質疑応答、コメント)がしたい。 ・講演はもっと実践的な内容のものにしてほしい(ヒドスギマス) ・私は学校教員ですが、博物館の方のいろいろな考え方を知れて楽しかったです。 ・時間が足りない。 ・今回は学校→博物館という学校が博物館を利用する形態のワークショップが主だったが、博物館が地域に出ていくという形も考えてみたい(出張ワークショップなど)。 ・受付から終了まで、なかなか快適でした。 ・9:30に着いたのですが入館できず前でしばらくウロウロしました。 ・昼食がとれるならば事前に伝えておいてほしかったです!!! ・教育的な博物館利用、博学連携についてはとても深められ、有意義だと感じました。しかし地域社会については、見えにくかったです。いろんなテーマ、方向性、内容を詰め込みで少しバラけてしまっている気がしました。 ・教科をこえて交流できるところが、博物館を活用することで生まれてくる。美術館でもそれは言えることだし、広く教科が利用できるように工夫したい。 ・発表ひとつ作るにもさまざまな視点があり、勉強になった。」 ・やっているうちに時間があっという間に過ぎました。みなさん発想がすごく本当に勉強になりました。 ・幼稚園、保育園の先生方の参加があればなお幅が広がったのでは?・・・。また、今季参加してみて、思ったより博物館の考え方と学校の考え方が近いと感じました。これは興味、理解のある先生方や博物館の方々が多かったからでしょうか?)一方で家庭(保護者)側からの思いとは少し遠いと感じました。講演の形でも参加の形でも保護者側の思いについても聞きたいです。 ・見方を変えると色々とみえてきました。ありがとうございました。 ・事務局の方々に大変感謝いたします。最初に資料の確認をしていただければ、より有意義に時間を使えたような気がします。 ・文部科学省からの講演は本日のWSとあまりにもかけ離れている。時間を本日の発表についての相互討論に使った方が効果的であったと思う。 ・博物館の展示場を見るだけでなく、その後学校での活動と結び付けるには長期的にプランを練らなくてはならないが、校外学習や修学旅行などの機会をもっといかしていけるようがんばりたい。小中高の12年間で3回、4回と学校の授業。 ・民博の展示物には説明文がほとんどない。音声ガイドで説明しているのでしょうか? ・やはり話し合いの時間、報告の時間が十分とはいえなかったように思う。 ・今日は本当に楽しく参加させていただきました。 ・様々な視点、考え方を知った。月並みだが色々な人で話し合った方が、一人で考えるより、考えが整理されてよかった。 ・こういったワークショップに参加するのは、教員や学芸員と考えていたが、それを支援している団体や企業からの参加もあり、博学だけではなくその周辺とのつながりもすごく感じました。博は情報のセンターだとうちの主任が言っていたことを思い出しました。地域の中にあって、情報やコミュニケーションのやり取りをすることで、地域を活性化する起爆剤になれる役割もあることを改めて気付かされました。 ・現役の先生と一緒にプログラムを作れたのがとても勉強になりました。他の班の人とももう少し交流できたらと思いました。 ・地域、立場、様々な参加者がいて、自分の勉強不足を感じた。実践をこなしていきたい。 ・教員と学芸員の発言がバランスがとれるようにしたらよかった。博物館でしていることなので、どうしても学芸員が有利?な状況ができてしまうと思うのです。 ・学芸員の方と、教員の方の意見や、視点の違いがが大きいことを再認識した。 ・もう少しワークショップの時間が欲しかったです。 ・アイスブレイクがなかった。 ・トイレタイムをください。付箋、クリップボード等道具への気配りがすばらしい。 ・ワークショップの主旨がはじめわかりずらかった。 F今回の博学連携ワークショップのことをどこで知りましたか(複数回答可)。 無回答:4 その他:6 国立歴史民俗博物館からの案内:2 日本国際理解教育学会のHP:1 公民館:0 全日本博物館学会からの案内:6 その他ML:3 日本ミュージアム・マネージメント学会のML:4 民博HP:11 知人から:27 学校:1 G最後にあなたについてお聞かせください(「所属」も一番当てはまるものを一つだけチェックしてください)。 性別 無回答:1 女性:25 男性:34 年齢 70代:0 60代:2 50代:13 40代:13 30代:23 20代:9 10代:0 所属 無回答:4 その他:4 博物館(その他職員):9 博物館(学芸員):20 博物館(友の会):2 博物館(ボランティア):2 大学(学生):2 大学(職員):1 大学(教員):2 高校:5 中学校:5 小学校:6 ※「博物館(その他職員)」や「その他」には、ミュージアム・ティーチャー(博物館に勤務する学校教員)も多く含まれるとみられる。 住所 無回答:2 海外:0 その他:20 和歌山県:0 滋賀県:7 奈良県:1 京都府:4 兵庫県:0 大阪府:24 (入力:吉村美恵子) 跋文 国立民族学博物館  五月女賢司 第4回目となる博学連携ワークショップは、準備に関わっていただいた準備グループメンバーにとっても、主催者にとっても、それぞれの思いを具現化しようと苦心した会となった。準備グループのメンバーには、過去のワークショップ開催に尽力された関係者数名にも加わっていただき、準備会議やメーリングリストでそれぞれの思いを表明し合った。主催者として可能な限り実現させようと努めたが、残念ながら力不足のところがあったことは否めない。特に、滋賀県立琵琶湖博物館で開催された第1回目の主な目的が、博物館に在籍する教員である「博物館教員」や「ミュージアム・ティーチャー」と呼ばれる職員同士の交流を深め、連携や教材・プログラム開発につなげることにあったことを考えると、第4回目の今回は博物館教員同士の交流や連携といった要素はだいぶ削がれ、学校と博物館、さらには地域社会の連携に軸足を置いた会を目指すことになった。 博物館教員同士の交流がどの程度達成されたかは不明であるが、今回主催者が目的とした、博物館が様々な分野・切り口から幅広く学校や地域社会とつながり、あらゆる分野の博物館が教室になり得る事を学校教員、博物館職員、市民が共に知ること、また、全国の学校教員、博物館職員、市民が、各々の職場や地域社会において博学連携につながるきっかけをつかみ、人と人、学校と博物館と地域社会のネットワークを構築するための一助とすることについては、アンケート集計結果をみる限り、ある程度は達成されたとみていいだろう。今回の博学連携ワークショップも、一方的に主催者側から博学連携について教える場とはせず、より多くの参加者がそれぞれに問題意識を持つよう、学校教員や博物館職員、一般市民、大学関係者らから構成される班ごとに、主体的に取り組むワークショップ形式とした。これによって、今後さらに学校、博物館、地域社会などがより深くつながるきっかけを作ることができたとすれば、主催者として本望である。 地域社会の実態や要望に即した教育活動が学校や博物館において展開されるためには、地域社会との連携や地域社会自体の主体性が不可欠である。これまでのような「官」が公共の多くを担う時代は終焉を迎え、「民」も公共の担い手として期待される時代にあって、学校や博物館は市民に対して一方的に何かを教育するのではなく、市民とともに育ち、より市民のためになる学校や博物館を目指すことがますます期待される。 最後に、今回の博学連携ワークショップは、様々なご教示やご示唆、アイデアをいただいた準備グループメンバー、主体的に参加されたワークショップ参加者、ご講演やご講評をいただいた方々、さらに吹田市教育委員会、日本ミュージアム・マネージメント学会、全日本博物館学会、日本国際理解教育学会のご後援によって実現した。この場を借りて心から感謝申し上げたい。 博学連携ワークショップ準備グループメンバー <館外協力者> 学校関係者 ・飯住達也(滋賀県立琵琶湖博物館) ・中村公一(大津市立瀬田北中学校、元滋賀県立琵琶湖博物館) ・古川岳志(吹田市立第一中学校) ・八代健志(茨木市立三島小学校) 博物館関係者 ・池田直子(吹田市立博物館) ・坂本昇(伊丹市昆虫館) ・佐久間大輔(大阪市立自然史博物館) ・釋知恵子(大阪市立自然史博物館) ・高田浩二(海の中道海洋生態科学館) ・戸田孝(滋賀県立琵琶湖博物館) ・布谷知夫(滋賀県立琵琶湖博物館 環境学習センター) <館内協力者> ・廣瀬浩二郎(民博 民族文化研究部) <文化資源研究センター内担当者> ・朝倉敏夫(文化資源研究センター・準備グループリーダー) ・岩谷洋史(文化資源研究センター) ・小林繁樹(文化資源研究センター) ・五月女賢司(文化資源研究センター・準備グループサブリーダー) <事務局> ・吉村美恵子(国立民族学博物館) 奥付 平成22年度 国立民族学博物館 文化資源研究センター事業 博学連携ワークショップ「学校と博物館が学びあえる場の構築をめざして」報告書 平成23年3月31日発行 編集 五月女賢司 発行 人間文化研究機構 国立民族学博物館 文化資源研究センター 〒565-8511 大阪府吹田市千里万博公園10-1 TEL. 06(6876)2151(代表) 印刷 株式会社 遊 文 舎 〒532-0012 大阪府大阪市淀川区木川東4-17-31 TEL. 06(6304)9325(代表) ※本報告書のPDF版はhttp://www.minpaku.ac.jp/research/sc/teacher/mscp/110220.htmlからダウンロードできます。また、同ページ内にはtxt版の報告書も掲載しています(平成23年3月31日現在)。