国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。
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みんぱく開館30周年にあたって

地の先へ。知の奥へ。みんぱく開館30周年

日本における文化人類学・民族学の拠点研究機関として国立民族学博物館(「みんぱく」)が設置され、その3年後、世界の諸民族の文化を展示する博物館が開館してから、30周年を迎えます。この間、「みんぱく」をとりまく環境は激変しました。グローバル化の進行にともない、人間の体感する時空は縮み、研究の対象としての文化と社会も、予想外のスピードで変化しています。世界は狭くなると同時に、個々の社会では多文化状況が進み、個人の生活体験の中には異文化の要素がさまざまな形で浸透しつつあります。それは世界が、社会の中に、個人の中に、モザイク状に乱反射している状況だといえます。

こうした変化に合わせて、「みんぱく」も生まれ変わりを要請されています。私たちは斬新な研究課題を開拓し、それにふさわしい手法を追究しているところです。博物館展示においても、文化を固定的、静的なものとして表象することは、もはやできなくなっています。研究者だけでなく、表象されている側の人々も積極的に展示に参加することが、一般的になってきました。「みんぱく」もそうした方針で展示に取り組んでいます。また、これまでは展示を見る側であった市民の積極的な参加も歓迎しています。

「みんぱく」は人間を知るために、30年間歩んできました。その旅は、今後も果てしなく続きます。文化は絶え間なく交流し変貌し、人は越境していきます。そうしたなかで、よりよい共生をもとめて未来社会を構想するためには、人間文化の探求の裾野をひろげ、広範な分野にまたがる知の融合を図る必要があります。

人間を探求する九十九折りの旅路です。小さな、小さな謎解きを積み上げて、ようやく足元に小さな明かりがともります。人間の叡智をもとめる旅に終わりはありません。異なるものへの寛容と共感をもとめて、広く社会とともに歩むことこそ、今後の「みんぱく」の使命であると考えます。

「みんぱく」ルネサンスに、みなさまのご注目とご支援をお願いいたします。

平成19年1月18日
国立民族学博物館 館長 松園万亀雄