みんぱくとは
ごあいさつ
2019年4月1日
国立民族学博物館(みんぱく)は、文化人類学・民族学とその関連分野の大学共同利用機関として1974年に創設され、1977年に大阪・千里の70年万博跡地に開館しました。去る2017年に開館40周年を迎え、来る2024年には創設50周年を迎えることになります。
みんぱくの研究者たちは、それぞれが世界各地でフィールドワークに従事し、人類文化の多様性と共通性、そして地球規模での社会の動態について調査研究を続けています。また、みんぱくには、総合研究大学院大学(総研大)文化科学研究科の二つの専攻、地域文化学専攻と比較文化学専攻がおかれています。文化人類学関係の単体の教育研究機関として、世界全域をカヴァーする研究者の陣容と研究組織をもつという点で、みんぱくは世界で唯一の存在といえます。
一方で、みんぱくがこれまでに収集してきた標本資料、モノの資料は、現在、約34万5千点を数えます。これは、20世紀後半以降に築かれた民族学コレクションとしては世界最大のものです。また、博物館施設の規模の上で、みんぱくは、世界最大の民族学博物館となっています。
人類の文明は、今、数百年来の大きな転換点を迎えているように思われます。これまでの、中心とされてきた側が周縁と規定されてきた側を一方的にまなざし、支配するという力関係が変質し、従来、 それぞれ中心、周縁とされてきた人間集団の間に、創造的なものも破壊的なものも含めて、双方向的な接触と交錯・交流が至るところで起こるようになってきています。それだけに、人びとが、異なる文化を尊重しつつ、言語や文化の違いを超えてともに生きる世界を築くことが、これまでになく求められています。今ほど、他者への共感に基づき、自己と他者の文化についての理解を深める文化人類学の知が求められている時代はないように思われます。その知の国際的な中核拠点としてのみんぱくに課せられた責務は、きわめて大きいといわなければなりません。
みんぱくでは、こうした世界の変化を受けて、10年の年月を費やし、本館における世界諸地域の文化に関する常設展示の全面的な改修を進めてきました。その作業は、2017年3月で一応の完了をみましたが、同年4月からは、研究部の体制も全面的に改め、時代の要請に応じた新たな組織で研究活動を推進することにいたしました。現在、館を挙げて実施している特別研究「現代文明と人類の未来―環境・文化・人間」は、人類の抱える課題を分野を超えて多角的に検証し、未来への指針を探ろうというもので、すでにその成果の国際的な発信が始まっています。
全面改修を終えた本館展示も、さらなる更新を含めた次の段階をむかえます。次世代型電子ガイドと新世代ビデオテークとの連動、加えてウェブ上に展開する「みんぱくバーチャルミュージアム」との連携により、展示を糸口にして、みんぱくに蓄積されている研究情報を、利用者・研究者の皆さまそれぞれの関心に応じて自由に引き出せ、新たな探究につなげていくシステムを、2019年度に本格導入いたします。
みんぱくでは、また、現在、「フォーラム型情報ミュージアム」というプロジェクトを推進しています。このプロジェクトは、みんぱくの所蔵する標本資料や写真・動画などの映像音響資料の情報を、国内外の研究者や利用者ばかりでなく、それらの資料をもともと製作した地域の人びと、あるいはそれが写真なら、その写真が撮影された現地の人びとと共有し、そこから得られた知見を共にデータベースに加えて共有し、新しい共同研究や、共同の展示、コミュニティ活動の実現につなげていこうというものです。
これらの活動は、いずれも、かねてよりみんぱくがめざしてまいりました、さまざまな人びとの知的交流と発見、協働の場、つまり知のフォーラムを、研究教育活動・博物館活動を問わず、これまで以上に徹底したかたちで実現しようとするものです。
皆さまの、ご協力、ご支援を、心からお願い申し上げます。
国立民族学博物館長:吉田憲司