特別企画:手話言語学基礎講座
2020年9月25日(金)~2020年10月2日(金) オンデマンド講義
10月4日(日) 10:00-12:00 オンライン質疑応答
参加費無料
参加申し込みページはこちら
※前日までに登録アドレス宛にご視聴用のURLをお送りいたします。
◆ 趣旨
言語学にとって手話研究は、「言語とは本質的に何なのか」について、ボトムアップに知るために欠かせない研究材料を与えてくれます。民博では、Signed and Spoken Language Linguistics(SSLL)シリーズとして国際シンポジウムを開催してきました。手話言語学最大の国際会議であるTheoretical Issues in Sign Language Research (TISLR)が、2年後に国立民族学博物館で開催されます。国内での手話言語学研究の活性化を目的として、手話言語学の基礎講義を開催します。音声言語を研究されている方々に手話言語に興味を持っていただいたり、ろう者や聴者で手話研究に興味をお持ちの方に、手話言語学者がどのような観点で研究を行っているのかについての基礎的な知識を得る機会にしていただければと思います。
◆ プログラムと概要
第一部 手話とはどういう言語なのか |
(1)「手話の文法と運用」高嶋由布子 (2)「日本手話の音素配列論―音節の適格性・不適格性―」原大介 (3)「非手指要素とマウジング」岡田智裕 |
第二部 手話はどこから来たのか (4)「手話の言語発達とホームサイン・共有手話」武居渡 (5)「宮窪手話(共有手話)の特徴」矢野羽衣子 |
手話の「言語音」の離散性、調音器官が大きいのに単位あたりの情報量を等しくするための仕組みである非手指動作(顔の動き)、言語の混成使用としてのマウジング。これらをどのように記述できるのか。そして一般言語学への挑戦とはどのようなものなのか。
また、手話言語はその発達においても、音声言語と同様のマイルストーンを経るといわれています。一方で、聞こえない子どもの9割以上は聞こえる親のもとに産まれてきて、手話のインプットの乏しい状態におかれます。このときに、聞こえない子どもはホームサインというジェスチャーでのコミュニケーション・コードを生み出します。さらに、ある社会集団のなかに聞こえない人がある割合を超えると、共有手話が産まれると言われています。この共有手話は、日本手話のような都市型手話(聾学校ができて、人為的に多くのろう児が集められる場を母胎とする)とは異なる特徴を持っています。ただ、こうした共有手話は、都市型手話に押されて、使用する人が世界的にも激減しています。
都市型手話である日本手話も、音声言語を習得させたいという聞こえる親の希望と医療者の開発によってネイティブの話者が少なくなってきています。これは危機言語としての記述言語学的なプロジェクトと課題を共有できるところでしょう。また、そうした時代を反映して音声言語との混成も社会言語学的に興味深いところです。言語学が社会と直接関係するところに、手話研究はあります。手話研究のエッセンスを詰め込んだ半日の講義に、是非ご参加ください。