目的
「人間文化資源」とは、人間文化を対象とする諸科学の研究資料をさし、図書館・文書館の典籍(図書、書物)・文書資料や博物館の標本資料・映像音響資料であるが、定義上は、考古遺跡や歴史的建造物、祭礼・儀礼や伝統芸能など、現状・現物保存を原則とし、資料化の度合いが低い資料も含まれる。
従来、これらを対象とする研究は、人文社会科学諸分野において個々に取り組まれてきた。本研究では、ディシプリンの枠組みを超えた学際的協働を通し、新たな学問領域の創出をめざす。また、人文社会科学がリソースとする資源の管理と運用のあり方を再検討することで、有効活用の可能性を模索するための体制構築を視野に入れている。
意義
本研究は、文書資料、生活資料、映像資料を対象として研究をすすめる以下の研究班をそれぞれにもうける。
文書資料(Ⅰ)を扱う研究班(文書資料の歴史的かつ空間的比較)
- 「正倉院文書の高度情報化研究」(歴博:仁藤敦史教授代表 Ⅰ-1 )
- 「人間文化研究資料の多元的複眼的比較研究」(国文研:渡辺浩一教授代表 Ⅰ-2 )
生活資料(Ⅱ)を扱う研究班(近現代に焦点をあてることで素材を含めた総合的な研究)
- 「近現代の生活活動と産業史に関する資料論的研究」(歴博:青木隆浩准教授代表 Ⅱ-1)
映像資料(Ⅲ)を扱う研究班(現在の映像記録と歴史資料としての映像記録の研究、および保存環境の探究)
- 「映像による芸能の民族誌の人間文化資源的活用」(民博:福岡正太准教授代表 Ⅲ-1)
- 「歴史研究資料としての映画の保存と活用に関する基盤的研究」(歴博:内田順子准教授代表 Ⅲ-2)
- 「人間文化資源の保存環境研究」(民博:園田直子教授代表 Ⅲ-3)
連携研究としての特徴・独創性
本研究では、研究の遂行にあたって、各機関(国立歴史民俗博物館、国文学研究資料館、国立民族学博物館)に、機関内募集による研究(計画)班(プロジェクト)をもうけ、それらを統括する総括班により、全体の調整、班相互間の研究の連携を進める。連携研究としての特性を生かした研究体制をとることによって、分野横断的な知見の獲得とその発展を促す。
また、本研究では、各研究班が機構内外の研究者もしくは研究機関との連携を視野に、研究計画の策定と研究組織の編成を行う。
個々の班の研究成果はさまざまな形が考えられるが、本研究全体として総括的なシンポジウムを開催し、各班の横断的連携を通じて、研究成果の高次化をはかる。