Senri Ethnological Reports (SER)
March 29, 2004 Publication
Edited by NOriaki NiShiyama
back numbers刊行の目的および意義
アジア・太平洋諸国における文化遺産の保存・整備に関する考古学、建築学等分野の研究技術開発では欧米と肩を並べる日本であるが、整備後の遺産の持続的管理と活用、特にツーリズム開発の側面における研究・政策開発の遅れは著しい。
本研究は、平成11~13年度共同研究「自律的観光の総合的研究」(代表:石森秀三)の成果をより実践的に発展させるもので、日本を取り囲むアジア太平洋地域における文化遺産管理とツーリズム開発の動向を総合的に明らかにしつつ、世界遺産など様々な文化遺産を有する個々の事例地域の独自な遺産管理手法やツーリズム現象の制御手段を検証、整理し、遺産管理とツーリズムの持続可能な関係構築モデルを開発することを目的とする。
こうした社会の具体課題を文化人類学、都市計画学、社会学、経済学、環境計画学、経営学、観光デザイン学等の多岐にわたる分野の研究者のフィールド研究を基に総合的に考究する点に本共同研究の特徴と意義がある。
本報告書は、3年計画の1年目に当たる15年度の研究内容を総括するもので、テーマとする管理(マネジメント)の対象となる「集落・町並み」「都市遺産」「考古遺産」「自然遺産」のカテゴリーごとに、文化遺産のとらえ方とその管理主体およびそれらとツーリズムの関係の展開状況について、国内外の様々な事例研究を収録し、概念の整理と研究課題の所在を明確化した。
刊行の意義としては、欧米と比較した日本およびアジア地域における不可視遺産(無形遺産)の価値付けの必要性と、文化遺産を有するローカル・コミュニティとツーリズムとの多様な関係を明らかにできたことが大きい。
目次
……………… 西山徳明
中国農村部における集落観光の開発方式と住民参与――雲南省麗江納西族自治県黄山郷白華行政村の事例
……………… 山村高淑
地域社会による遺産マネジメントの可能性――竹富島における遺産管理型NPOの取り組み
……………… 西山徳明・池ノ上真一
住民がもてなすツーリズムへの芽――鞆におけるまちづくりと遺産管理
……………… 窪田亜矢
上平村における歴史的環境の保全と地域づくり
……………… 石川厚志
日本の伝統的都市遺産――歴史・空間・景観から見た特質
……………… 宮本雅明
見えない都市遺産――神戸の震災復興現地体験型修学旅行の試みから
……………… 森栗茂一
遺跡保存の立場からみた発展途上国における文化遺産管理とツーリズム――パキスタン・ガンダーラ遺跡保存プロジェクトでの経験から
……………… 増井正哉
歴史的建造物復元とカルチャーツーリズム
……………… 矢野和之
遺跡観光と先住民蜂起――南米エクアドルのインカ遺跡
……………… 関雄二
二世代を迎えた日本型エコツーリズムの課題と展望に関する研究
……………… 津ゆりえ・真板昭夫
遺産」としてのガラパゴス諸島の生態系管理の現状と課題
……………… 西原弘・海津ゆりえ
落空間管理とグリーンツーリズム
……………… 藤雪彦