Senri Ethnological Reports (SER)
March 30, 2005 Publication
Edited by Yukiya Kawaguchi, Kenji YOshida
back numbers刊行の目的および意義
周知のように、1990年代以降、アフリカの同時代美術が欧米、そして日本で注目を集め、展覧会、出版、シンポジウムなどが相次いで行なわれてきた。欧米、とりわけアメリカでは、すでに1980年代なかばから、異文化をいかに表象するかという問題をめぐり、文化人類学、歴史学、美術史学をはじめとする多くの学問分野を巻き込んで、さまざまな議論がなされてきていたが、おりからのアフリカの同時代美術への関心の高まりは、そうした議論にいくつかの新しい問題を提起した。
そのひとつは、美術館、大学などの文化的インフラストラクチャーが整っている欧米、日本といった先進諸国が、歴史的にも文化的にも多様なアフリカの美術をひと括りにして、しかも一方的に語ってしまっているという点であった。もうひとつは、従来自明とされてきたアートという価値の普遍性が疑われ始めたという点である。
これらの議論は、当然のことながらアフリカ側にも影響を及ぼし、その結果、近年とくに英語圏を中心とするアフリカの美術関係者の間には、自分たちにも発言の機会を与えよ、という要求が高まってきていた。
幸いにして、2001年1月の森首相(当時)によるアフリカ歴訪が契機となり、同年10月、わが国外務省と国際交流基金が、日本とアフリカの文化交流を促進する一環として、英語圏アフリカから美術関係者11人を日本に招くことになった。この際、日本側の関係者を交えて、東京と大阪でアフリカ同時代美術のあり方に関するシンポジウムが開催されたのだが、これはアフリカ側にとっては自分たちの考え方を表明する絶好の機会となり、一方日本側にとっても、他者の美術や文化を語るとはどういうことなのかを改めて考え直すまたとない好機となった。
本稿は、そのシンポジウムの記録であるが、8カ国11人にも及ぶアフリカ側の美術関係者の声がはっきりと示され、加えて複数の分野にわたる日本側の専門家との間で対話が交わされたという点において歴史的に見ても貴重であり、これを出版の形で世に問うことは、異文化表象にまつわる一連の議論に多大な貢献をなすものであると確信する。
CONTENTS
Objects and Agendas After the Banquet: African Art since 1989
……………… Yukiya KAWAGUCHI
African Art in the New Millennium: From the Playground of Fancy to the Promised Land
……………… Krydz C. IKWUEMESI
Comments
……………… Masahiro USHIROSHOJI
……………… Kenji YOSHIDA
Discussion
Secular Sacrilege: The Space of Representation in Graft,2nd Johannessburg Biennale
……………… Colin RICHARDS
Comments
……………… Yukio TOYODA
……………… Kazuo YAMAWAKI
Discussion
Coordinator
……………… Yukiya KAWAGUCHI
Objects and Agendas New Attempts in Art and Cultural Exhibitions on Africa
……………… Kenji YOSHIDA
African Voices: A Dynamic Collaboration between the Museum and Its Communities
……………… Mary Jo ARNOLDI
Comments
……………… Jerry BUHARI
……………… Shoichiro TAKEZAWA
Discussion
Representing African Art: A Challenge by the Exhibition Seven Stories about Modern Art in Africa
……………… Everlyn NICODEMUS
Comments
……………… David KOLOANE
……………… Mayako ISHIKAWA
Discussion
Coordinators
……………… Kenji YOSHIDA
……………… Yukiya KAWAGUCHI