国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

館外での出版物

インド染織の現場――つくり手たちに学ぶ(フィールドワーク選書12)

2015年3月12日刊行

上羽陽子 著

臨川書店

出版物情報

主題・内容

みずからつくることで、わかること。牧畜を主な生業とするラバーリーの人びと。彼らの染織品に魅せられた著者は、実際に刺繍、糸紡ぎ、牧畜用具づくりなど現地の製作者に教えを乞い、様々な手工芸の習得に取り組むなかで、ものづくりとは何か?を模索する。みずからの手を使い、つくることを通して異文化を知っていく過程を丁寧に綴った一冊。

目次

はじめに
初めてのインド/ラバーリーの刺繍布と出会う/本書の構成
第一章 調査の始まり
まちきれずふたたびカッチへ/ブジョディ村/ブジョディ村で生活を始める/村での1日/現地へ飛び込む/カッチ県/ラバーリーとは/インド西部の衣装/洋服は不便/機能的な衣装/刺繍技術を学ぶ/刺繍布に囲まれた生活/特徴ある鎖縫い/布を持つ手に注目する/ガラスミラーを縫い留める/わずかな糸量で/メモはとらない/文様の性格/新しくつくられる文様
第二章 刺繍を通して
トーランをつくる/装飾用と女神用/新しい布と古い布/女神崇拝/私の女神/女神へ捧げる布/養女になる/挨拶の作法/一番近くて一番遠い/ワンカルの社会的地位/ラバーリーの社会的地位/肉の匂いがする/ワルジャングが結婚する/133の父系集団/幼児婚の利点/ゴックル・アータムと合同結婚式/身動きがとれない/ラバーリーの婚資/ラバーリーの持参財/徹底した忌避関係/トラブル回避の知恵として/女神儀礼/女神によってつけられる個人名/トーランを奉納してから/ふたつの評価軸
第三章 男性社会の手仕事へ
ふたたびブジョディ村へ/男性領域へのアプローチ/ブジョディ村の牧畜生活/技術調査をはじめる/ヤギ毛の糸紡ぎを習う/石をもちいた糸紡ぎ作業/焦る気持ち/腹帯づくり/じっと眺めて取り入れる/自分の気持ちを伝えること/新たな師をもとめて/サノサラ村へ/ラクダのミルクを飲む/ラクダの乳当て袋/綜絖をもちいない織技術/売るためにつくるわけではない/調査領域の限界
第四章 調査地を離れて
ヨルダンへ/カワール・コレクションとの出会い/データ作成の日々/世界の衣装を計測するには/資料の情報を読み取る/ラバーリーと比較する
第五章 震災によって変わる調査地
地震が起きた/帰国できない/ブジから避難する/タンクトップを身に着ける/家屋の変化/はじめてのマラリア/観光客によって生み出される文様/自転車や猫を文様化する/新しい文様の創造プロセス/被災後のはなし/心の傷
第六章 映像取材を通じて
映像取材に参加する/現地で知り合った友人/映像取材を開始する/被写体としてのラバーリー女性/気に入られたイノ・バイ/トポロづくりを撮影する/番組をつくる/完成した映像をみせる/よい刺繍とは/NGO商品をつくらないこと/ラバーリーのものづくり
あとがき
つくることでわかること/異文化理解をめざして/新たなテーマ