気候変動の政治経済と中南米低地先住民の所有実践(2013-2014)
科学研究費補助金による研究プロジェクト|研究活動スタート支援
代表者 近藤宏
目的・内容
現代の気候変動を前に、今日では熱帯林地帯に居住する先住民も緩和対策の担い手として位置づけられるようになっている。炭素取引と連動させることで、森林減少の抑止に経済的インセンティブを与える制度が国際的に議論され、政策として実現され始めている。それは、炭素という新しい所有物を先住民の生活にもたらす制度である。この新しい所有物の導入が、現地における自然資源利用の諸実践とどのように切り結ばれるのか、そして先住民と視線との諸関係に何をもたらすのか、という問いを立て、エクアドルの先住民アチュアルとパナマの先住民のエンベラのもとで現地調査を行ない、この新しい事態について民族誌的な水準から考察することが研究の目的である。
活動内容
2014年度活動報告
今年度は8月から9月にかけてパナマ東部にて現地調査を行なった。調査前には、パナマの先住民が気候変動に関する経済開発への参加をとりやめたというニュースが流れていたので、この点について、主たる対象であるエンベラによるその考えを確認するなどした。新しい経済開発の不参加の決定は、それ自体で独立した問題というよりも、先住民を取り巻く社会環境の中で、先住民自身が手にした権利(土地に対する権利やそこでの開発を主体的に決定する権利)を十分に行使できないと感じざるを得ない状況があることが明らかになった。
2013年度活動報告