研究会・シンポジウム・学会などのお知らせ
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2007年10月27日(土)
~10月28日(日)
国際シンポジウム「自然環境と民俗地理学中日国際シンポジウム」 -
- 日時:2007年10月27日(土)~10月28日(日)
- 場所:北京師範大学(中国・北京)
自然環境と密接な関係をもって適応的に発展してきた伝統的文化を、ポスト近代化の現在の過程において、いかに保全しながら開発していくかという現代的な課題に関して、地理学、民俗学、社会学、民族学(文化人類学)などの諸分野から考察した研究およそ50件が報告された。聴衆には、修士課程や博士課程の学生らが多く見受けられ、その点では学術セミナーの様相をもつ研究集会であった。
わずか2日間の開催中に報告件数がきわめて多いため、十分な質疑応答は時間的に不可能となり、議論を尽くすことはできなかったけれども、中国において発展や開発、経済成長などの概念のなかに、文化、伝統、民俗に関する諸側面が肯定的に含められており、旧弊として捨象されるよりもむしろ文化資源として積極的に開発される対象となってきていることが明らかであった。
そもそも、グローバルな環境問題に焦点があたるにつれて、ローカルな民俗知識が再評価されるようになり、その発見と活用は国際的な重要課題となっている。したがって、中国においても、それぞれの民族のもとで蓄積されてきた民俗知識や、それに裏打ちされた生活様式が再評価され、その保存が重視されるようになっている。
ただし、こうした国際的に支配的な言説のもとで「民俗知識の開発」が著しく盛んになっているという現況は、「民俗実践」ならともかく「民俗知識」が予め体系として存在しているという前提そのものが、早晩疑われるようになるだろうことを予感させた。基調講演
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「中国自然環境と人口分布」
王静愛(中国北京師範大学・教授) -
「世界遺産の登録結果報告」
白庚勝(中国文学芸術界連合会・副書記) -
「生態博物館は伝統的な民俗を守ることができるか?」
方李莉(中国芸術人類学会・会長) -
「歴史環境の保存と文化生態の保全」
張松(中国上海同済大学・教授)
セッション1 「自然環境と人類生存」
司会:劉鉄梁(中国北京師範大学・教授)
コメント:窪田順平(日本総合地球環境学研究所・准教授)-
「中国南部トン族における原生態学的生活に見る哲学」
劉芝風(中国民間文芸家協会・研究員) -
「乾燥地からみた人類文明の危機」
嶋田義仁(日本名古屋大学・教授) -
「現地観測にもとづく内蒙古の砂嵐と荒漠化の原因考察」
境田清隆(日本東北大学・教授) -
「気候変化が長江水源地に及ぼす影響」
張継焦(中国社会科学院・准教授) -
「黒河流域における地下水培養のメカニズム」
秋山知宏(日本愛知大学・研究員) -
「公衆の環境意識に関する評価」
李宇軍(中国社会科学院・准教授) -
「観光開発によって創出される民族文化空間」
孫九霞(中国中山大学・准教授) -
「モンゴル高原における先住民の猛獣・猛禽類に対するイメージ」
九月(中国内蒙古工業大学・研究員) -
「文化遺産の経済史的形態」
呉昶(中国湖北民族学院芸術学院・研究員) -
「環境保全過程における社会協力関係について」
マイリーサ(日本立教大学・講師)
セッション2 「自然遺産と文化遺産」
司会:万建中(中国北京師範大学・教授)
コメント:張松(中国上海同済大学・教授)-
「無形文化財保護とコミュニティの法的主体性」
奥田進一(日本拓殖大学・准教授) -
「<十節記>新考」
劉暁峰(中国清華大学・教授) -
「無形文化財としての和紙」
馮彤(中国中央民族大学・大学院生) -
「文化遺産としての満洲族の民間刺繍」
李宏復(中国芸術研究員美術研究所・研究員) -
「チベット系羌族の非物質文化遺産の概況」
周毓華(中国西蔵民族学院・教授)
セッション3 「地理空間と民俗空間」
司会:劉芝風(中国民間文芸家協会・研究員)
コメント:朱霞(中国北京師範大学・准教授)-
「北京内城寺院の地理空間と民俗空間」
叙燕(中国北京語言大学・准教授) -
「中国故事の民俗地図とその歴史人文学的意義」
頼彦斌(中国北京師範大学・研究員) -
「ユーラシア草原における茶道上の生活用具とその変容」
徐英(中国内蒙古大学・教授) -
「北京の伝統的商業と自然資源の関係」
呂紅峰(中国北京師範大学・研究員)
セッション4 「資源利用と民俗知識」
司会:馬壮志(中国内蒙古通遼文物局・局長)
コメント:山泰幸(日本関西学院大学・准教授)-
「遊牧社会におけるノタクチン(郷司)」
ボ・ジャルガル(中国内蒙古行政学院・教授) -
「北京市水源地における水利用の習慣について」
楊秀(中国芸術研究院・大学院生) -
「北京市の工業環境における水利用の習慣について」
鞠熙、周錦章(北京師範大学・大学院生) -
「塩井の風水観とローカルな環境知識」
朱霞(中国北京師範大学・准教授) -
「モンゴル族の年間行事と動物」
冰梅(中国北京林業大学・准教授)
セッション5 「環境変化と文化変容」
司会:張継焦(社会科学院・准教授)
コメント:王俊敏(中国蘇州大学・教授)-
「青海東部における史前の文化変遷と自然環境の変化」
斎烏雲(中国社会科学院・准教授) -
「エチナ旗において生じた自然環境の変化」
児玉香菜子(日本総合地球環境学研究所・研究員) -
「自然環境の変化と烏塞節の習慣」
サランゲレル(中国中央民族大学・教授) -
「環境変化と文化変遷の周縁部―黒河最上流の50年」
尾崎孝宏(日本鹿児島大学・准教授) -
「民俗環境の変化と民俗事象の現代的変遷」
李鶴(中国北京師範大学・大学院生)
セッション6 「自然災害と災害民俗」
司会:王静愛(中国北京師範大学・教授)
コメント:中尾正義(日本総合地球環境学研究所・教授)-
「爆竹民俗と災害の関係」
韓春英(中国河北省民政庁・職員) -
「福建暴雨洪水の時空変化と地域区分」
陳香(中国福建省莆田学院・研究員) -
「民衆の水害知識とその影響」
蘇筠(中国北京師範大学・准教授) -
「中国農耕社会の災害習俗」
陳宝(中国北京語言大学・研究員) -
「伝説と自然環境」
山泰之(関西学院大学・准教授) -
「十三世紀の元寇と日本仙台の<蒙古碑>」
アイトル(日本北海学園大学・研究員) -
「現代的な生態農業建設と伝統的な自然農業文化の修復」
王俊敏(中国蘇州大学・教授) -
「モンゴル国典型草原における気候条件と遊牧への影響」
ナチンションコル(国立民族学博物館・日本学術振興会特別研究員) -
「旱魃と牧民の対応行動」
蘇徳斯琴(ソドスチン;Sudesiqin)(内蒙古大学)
セッション7 「ローカルな環境と生態移民」
司会:小長谷有紀(国立民族学博物館・教授)
コメント:ボ・ジャルガル(中国内蒙古行政学院・教授)-
「生態移民政策と環境影響評価の必要性」
北川秀樹(日本龍谷大学法学部・教授) -
環境問題としての乾燥・半乾燥地区の水利用」
窪田順平(日本総合地球環境学研究所・准教授) -
「三江源地区における生態移民の問題解決」
杜発春(中国社会科学院民族研究所・准教授) -
「生態移民によって形成された移民村の社会経済的特質」
関根良平(日本東北大学・教授) -
「国境を越える問題―韓国における較差被害」
李淑炫(日本昭和女子大学・教授) -
「生態移民と人間の安全保障」
スチンフ(日本大阪大学・講師) -
「内蒙古アラシャ地区環境問題の調査報告」
宝花(中国北京師範大学・大学院生) -
「遊牧文化習慣と草原生態環境」
邢莉(中国中央民族大学・教授)