国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

館外での出版物

解放しない人びと、解放されない人びと――奴隷廃止の世界史――

2020年10月30日刊行

鈴木英明(著)

東京大学出版会

出版物情報

主題・内容

人類史に長く存在した奴隷に対して、廃止の動きがなぜ、18世紀の後半から世界的に急速に動き出したのか。イギリス、アメリカ、タイ、そして日本などを比較し、グローバルヒストリーとして奴隷制、その廃止をめぐる動きをとらえ、現代において解決すべき課題に迫る。

目次

序 章 奴隷廃止という世界史的共通体験
1 奴隷制と私たち
2 世界史的共通体験としての奴隷廃止――本書の目的
3 本書の方法論
第1章 新大陸と啓蒙の時代
1 大西洋奴隷貿易
2 新大陸におけるアフリカ黒人を用いた奴隷制の展開
3 アフリカ黒人が奴隷化される正当性
4 啓蒙思想
5 奴隷交易とサハラ以南アフリカとグローバル・ヒストリー
第2章 環大西洋奴隷廃止ネットワーク 
1 クエイカーたち
2 奴隷交易廃止協会
3 現実感と伴った想像力
4 革命の時代へ
第3章 大いなる矛盾――19世紀前半の大西洋とインド洋西海域
1 奴隷交易廃止から奴隷制廃止までの長い道のり
2 インド洋西海域
3 想像と現実との距離
第4章 グローバル/ローカルなポリティクスとしての奴隷廃止――あるいは手段化する奴隷廃止
1 合衆国の維持と奴隷廃止
2 輝かしい近代化へのひとコマとして,国民誕生の助走としての奴隷廃止
  ――ラッタナーコーシン朝の場合
3 内なる奴隷の「発見」
  ――芸娼妓解放令と東アジアにおける奴隷概念の伝播
4 廃止される奴隷制,廃止されない奴隷制――国際社会のなかで
第5章 解放しない人びと,解放されない人びと,新たに加わる人びと
1 奴隷たちの去就
2 労働力の争奪戦
3 年季契約労働制
4 年季契約労働制の廃止――再び自己と他者をめぐって
終 章 奴隷廃止は人類に何をもたらしたのだろうか?
1 本書の論点
2 世界史的共通体験の行く道