国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

館外での出版物

世界を環流する〈インド〉――グローバリゼーションのなかで変容する南アジア芸能の人類学的研究 ★

2021年1月22日刊行

松川恭子・寺田吉孝(編)

青弓社
【共同研究成果】

出版物情報

主題・内容

グローバリゼーションの中で変容する南アジア芸能の現状を、実践者の移動と芸能の変化に着目し、インド文化を中心とした南アジア文化をめぐる表象とポリティクスの問題を「環流」概念により浮き上がらせる論集。

目次

 

序 章 グローバリゼーションと〈インド〉文化の環流を芸能からみる 松川恭子
 1 南アジア系移民の世界中への広がり
 2 南アジアでの一九九〇年代以降の新しいメディア状況
 3 環流する〈インド〉文化
 4 本書の構成

 

第1部 ワールドミュージックの拡張と展開

第1章 越境し環流する音楽文化――フランスでのインド伝統音楽の再帰的グローカル化 田森雅一
 1 インド音楽の国際化とフランスでの受容
 2 フランスの文化政策とインド音楽振興の背景
 3 現在のフランスでのインド音楽とワールドミュージック
 4 ムスリム世襲音楽家の活動とフランスとのコネクション
 5 ジプシー音楽との出合いとムサーフィルの結成

第2章 「愛」を歌うスーフィー歌謡――カウワーリーの現在を中心に 村山和之
 1 南アジアのスーフィー歌謡のかたち、カウワーリーと非カウワーリー
 2 カウワーリー――南アジア世界でスーフィズムと結び付く芸能の代表
 3 スーフィー詩の世界からみるカウワーリー
 4 変容するスーフィー歌謡の世界

第3章 インドの宗教歌謡キールタンの越境――宗教実践とポピュラー音楽の間 小尾 淳
 1 キールタンの越境――「西洋」とキールタンの出合い
 2 キールタンの拡大――音楽、ヨーガ、スピリチュアリティ
 3 キールタンイベントの実際

第2部 局地的フローにみるローカルとグローバルの交渉

第4章 民謡の共和国――ネパールでのロクギートの流動と歴史的展開 橘 健一
 1 ロクギート研究の動向と周縁性、グローバル化
 2 ロクギートの広がりと「チェパン語の歌」の停滞
 3 「マイナー言語ロクギート」への分岐――観光、博覧会、民族ナショナリズムとの接続
 4 ロクギートのグローバルな環流と日本
 5 ロクギートによる「誘惑」と「融和」
 6 ロクギートのさらなる分岐と「よどみ」

第5章 インド北東部ナガランド州にみるローカリティの再創造――ポピュラー音楽振興政策とフェスを通して「つながる」ナガの若者たち 岡田恵美
 1 多層化するナガの帰属意識と若者問題
 2 ナガの音楽性とインド本土文化との差異化
 3 ナガランド州政府によるポピュラー音楽振興政策
 4 ローカリティの再創造

第6章 ふさわしいリズムを求めて――チベタン・ポップ歌手のレコーディング過程からみるグローバル化の様相 山本達也
 1 本章の議論の位置づけ
 2 チベット難民、チベット文化、チベタン・ポップ
 3 チベタン・ポップのCDの制作過程
 4 通過儀礼としてのレコーディング過程
 5 グローバルなデジタル的感性を作り上げるもの
 6 痕跡としてのメロディー、歌唱法への再帰性

第3部 リージョナリティを媒介するフローの環流

第7章 パチもんの逆襲――インド映画の二十一世紀 杉本良男
 1 ボリウッド化
 2 南からの旋風
 3 地方の逆襲
 4 環流するボージプリー映画

第8章 「傍流」としての地域芸能が生み出す故郷とのつながり――湾岸アラブ諸国クウェートでのゴア・クリスチャンのティアトル劇実践 松川恭子
 1 ゴアからクウェートへ、クウェートからゴアへ
 2 クウェートでのティアトル劇実践――移民社会とゴアをつなぐ活動
 3 ティアトル劇の往還とクウェート―ゴア間での意味づけのずれ

第4部 南アジア系舞踊のグローバルなネットワークと環流

第9章 インド舞踊のグローバル化の萌芽――ある舞踊家のライフヒストリーをもとに 竹村嘉晃
 1 舞踊家になることを夢見る
 2 舞踊家としての人生の始まりと移動
 3 仕方なしの一時滞在から定住へ――インド舞踊の伝播とグローバルな萌芽

第10章 見え隠れする芸能の宗教性――マレーシアでのインド舞踊の存在 古賀万由里
 1 ヒンドゥー教の舞踊としての復興とグローバル化現象
 2 マレーシアへのインド舞踊の流入
 3 多文化主義のなかでのインド舞踊の展開
 4 アート産業としてのインド舞踊
 5 多元的観衆を魅了する

第11章 南インド古典音楽・舞踊の環流 寺田?孝
 1 小景
 2 アメリカ合衆国の南インド人コミュニティ
 3 イギリスとカナダのスリランカ系タミル人コミュニティ
 4 音楽・舞踊を学ぶ場
 5 お披露目公演(アランゲートラム)
 6 スリランカ系タミル人の影響
 7 インターネット教授法
 8 加速する人の往来
 9 在外アーティストのインド進出

あとがき 松川恭子

事項索引

人名索引