国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

Senri Ethnological Studies (SES)

No.65 Wartime Japanese Anthropology in Asia and the Pacific

2003年12月26日刊行

Edited by Akitoshi Shimizu, Jan van Bremen

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刊行の目的および意義
日本の近代人類学は、英仏はおくとして、ヨーロッパの後発諸国と比べても、遜色のない歴史を重ねてきている。しかし、その歴史自体の考察は、思想史の観点からも、人類学者自身による学説史の観点からも、蓄積は少ない。ここに刊行を申請するのは、日本の人類学史のうち戦時(1930-40年代)に焦点を絞った論集であり、1999年度重点研究プロジェクト「人類学的歴史像の構築」の一環として行われた研究集会「Wartime Japanese Anthropology in Asia and Oceania」(実行委員清水昭俊)の成果を刊行するものである。
日本にかぎらず、欧米の人類学に対する歴史的関心では、人類学が形成された歴史的状況として、特に植民地支配に焦点を当て、人類学者も共有する植民地主義イデオロギーと人類学的認識の相関関係に、関心を集中させてきた。この枠組みでは、戦時という状況(wartime situation)はさして関心の的とならず、なったとしても、植民地的状況の延長として扱われてきた。しかし、日本では、1930年代から40年代にかけての戦時状況において、人類学(民族学)は飛躍的発展を遂げた。制度(学会、研究所、大学)と研究者人口の増大が戦時状況と関連していたのみならず、人類学者は研究理念をあげて、戦時イデオロギーに同調していった。日本の人類学史、ひいては現在の日本の人類学を考察するうえで、戦時状況における人類学は、単なる植民地状況の延長としてではなく、それ独自に追求すべき研究課題である。
このような意図を背景として、この論集では、1930年代から40年代にかけての戦時状況における、人類学の展開を追跡する。本国に関しては、戦時状況と人類学の関連の概観、戦時イデオロギーの高揚と研究者による民族理論、人類学研究の推移、占領地および植民地については、ブルネイ、インドネシア、台湾、中国、朝鮮、樺太の各地について、占領政策と現地人の民族意識形成、研究者の研究関心の推移、人類学者と戦時教育、人類学研究と民族政策などの関連を考察する。
 

Contents
Preface

Acknowledgements
Notes on contributors

Introduction
Akitoshi SHIMIZU
Jan van Bremen

Wartime Anthropology: A Global Perspective
Jan van Bremen

Anthropology and the Wartime Situation of the 1930s and 1940s:
Masao OKA, Yoshitaro HIRANO, Eiichiro ISHIDA and Their Negotiations with the Situation
Akitoshi SHIMIZU

NAKANO Seiichi and Colonial Ethnic Studies
Kevin M. Doak

Selves and Others in Japanese Anthropology
Teruo SEKIMOTO

Physical Anthropology in Wartime Japan
Atsushi NOBAYASHI

Anthropological Studies of the Indigenous Peoples in Sakhalin in Pre-Wartime and Wartime Japan
Shiro SASAKI

War and Ethnology/Folklore in Colonial Korea: The Case of AKIBA Takashi
CH'OE Kilsung

For Science, Co-Prosperity, and Love: The Re-imagination of Taiwanese Folklore and Japan's Greater East Asian War
TSU Yun Hui

Studies of Chinese Peasant Society in Japan: Before and During World War II
NIE Lili

Colonial Anthropology in the Netherlands and Wartime Anthropology in Japan
MIYAZAKI Koji

MABUCHI Toichi in Makassar
NAKAO Katsumi

Resuscitating Nationalism: Brunei under the Japanese Military Administration (1941-1945)
B. A. Hussainmiya
 
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