国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

民族学博物館における表現創出を活用した異文化理解プログラムの開発  ~多元的な場での"気づきの深化"のデザイン化~

共同研究 代表者 西洋子

研究プロジェクト一覧

キーワード

共創、身体表現 、気づき

目的

本研究では、人の表現を、身体を場とする感性と知性の統合的行為と位置づける。また、それぞれの自己が表現を行うことで、身体を介した共存在的な場がつくられ、そこを基点にさらなる表現が創出し循環すると考える。本研究では、このような表現の循環を博物館という多元的な場での文化資源を活用した異文化理解プログラムに適用する。その結果、資源とかかわる人々の内部に、多様な文化に生きる人々の営みや思いに対する感性的な気づきが生まれ、それが当該文化への知的な理解と統合して"気づきの深化"が起こることが期待される。つまり本研究では、異文化に生きる人々の存在そのものに対して"気づきの深化"を引き起こすような表現創出支援のデザイン化を目標とするわけである。 また、ここでの"多元的な場"とは、さまざまな文化資源が集積する博物館という場所のもつ機能的意味と、年齢や性別、障害の有無、知識の差異等、さまざまな差異のある人々が資源とかかわりながら共に表現し交流し合う場がつくりだす存在的意味という二重の意味性を指し示す。本研究において、こうした二重性がより豊かな表現の創出と循環を生むことが立証されれば、開発したプログラムは、学校教育での活用はもとより広く社会教育・実践全般に適用するものとなるであろう。さらにその際、多元的な場での表現創出を促進する支援として、本研究では従来の人的支援に加え工学による技術的支援を積極的に活用し、支援技術の側面からも新たな異文化理解プログラムの構築を目指すことを目的とする。

研究成果

本共同研究では、みんぱくを舞台に博物館とそこでの学びの新しい可能性を探ってきた。価値観や背景の異なるさまざまな人々が博物館に集い、モノと身体とを響かせ合いながら、ミュージアムから生まれる独自の表現を、私たちの物語として紡ぎだすことで、みんぱくというミュージアムを、単なる異文化知識の伝達の場ではなく、モノの背後に潜む感性的世界を感じ取り、そこから共に新しい価値を創造する共創の場へと展開させる試みである。本共同研究会では、3年半の研究期間内に、計14回の研究会を開催し、研究目的にかかわる人類学、工学、教育学、舞踊学、身体表現論等の各領域の基礎的理論について「身体・つながり・表現」をキーワードに話題提供と活発な討議を進めた。加えて、領域を超えた新たなプログラム開発に向けて、みんぱくでの実験的なワークショップでの実践に耐えうるプログラムを検討し具体化した。その成果は、みんぱくでの2回の表現ワークショップ(ワークショップ1:「影で出会う、影でつながる~ワヤン・クリ~」2010年3月21、22日.ワークショップ2:「思いと出会う、願いでつながる~インド刺繍~」2011年6月5日)として、100名を超える参加者とともにみんぱく内で実践し、さらなる課題が発見された。本共同研究会メンバーは、これらの実践的な研究成果を、舞踊学会、日本体育学会、日本保育学会等での計8件の研究発表として、積極的に学会発表し、またその一部を、国際常民文化研究機構主催の国際シンポジウム「"カラダ"が語る人類文化-形質から文化まで-」(「身体での共創表現」:西洋子)等で紹介した。さらに、最終年度は、本研究会が開発したプログラムを、博学連携での実践に活用するために、東京都の幼稚園教諭を対象とする夏季指導者講習会(受講生100名・2011年8月21日)および、金沢大学附属小学校2年生および5年生(児童70名・2011年10月13、14日)、石川県立ろう学校小学部(児童30名・2011年11月21、22日)を対象とする2日間の特別授業として実践し、教育関係者との交流の機会を得て、教育現場への発信を実現した。なお、特別授業の様子は、NHK(石川・全国)や民放、新聞等で広く紹介された。

2011年度

2010年度に行った5回の研究会の成果は、文化資源プロジェクトと連動させ、2011年3月19日・20日の両日にインド刺繍を題材とする身体表現の公開ワークショップ・パフォーマンス(インド刺繍~思いと出会う、願いでつながる)として、みんぱく内で実施する(*東北地方太平洋沖地震の影響により中止、2011年度の実施を検討中)。本年度は、共同研究会のまとめの年として、これまで「身体・表現・つながり」をキーワードに文化人類学、身体表現学、工学、教育学等の研究者が領域横断的に話題提供と討議を行ってきた成果と課題を整理するとともに、実験的に進めた2009、2010年度の表現ワークショップのために開発したプログラムの評価や、ワークショップの実際に関する分析と検討を行う。また、ワークショップの成果を博物館教育学に発展的に応用し、新たな視点と実際の方法論によって博物館の社会貢献に資することを目指して広く社会に発信、学術的な研究成果の共有と定着を試みる。

【館内研究員】 広瀬浩二郎、福岡正太、三尾稔、横山廣子
【館外研究員】 上杉繁、加藤謙一、五月女賢司、佐藤優香、杉山千鶴、塚本順子、橋本周司、米谷淳、三輪敬之、本山益子、山口友之、弓削田綾乃、渡辺富夫
研究会
2011年6月4日(土)15:00~18:00(国立民族学博物館 第5セミナー室)
2011年6月5日(日)9:00~18:00(国立民族学博物館 第5セミナー室)
西洋子(東洋英和女学院大学)「成果発表ワークショップの最終確認および成果と課題の検討」
弓削田綾乃(早稲田大学)「ワークショップでの表現ファシリテーターの役割」
三輪敬之(早稲田大学)・山口友之(早稲田大学)「表現支援システムの開発と成果・課題」
三尾稔(国立民族学博物館)・横山廣子(国立民族学博物館)「民族学博物館でのワークショップの企画・運営について」川添裕(横浜国立大学)「細工見世物への視点」
2011年12月26日(月)13:00~18:00(国立民族学博物館 大演習室)
高橋うらら(東京都市大学)「インド刺繍を用いた博物館ワークショップの事例検討」
村中亜弥(相模女子大学・非)「インクルーシブな場における身体表現創出へと向かうきっかけ」
三尾稔(国立民族学博物館)「博物館と教育現場をつなぐ試み~金沢プロジェクト~」
西洋子(東洋英和女学院大学)「出会いとつながりの身体表現~小学校とろう学校での実践~」
米谷淳(神戸大学)・三輪敬之(早稲田大学)「プロジェクトのまとめと出版」
全体討議:シンポジウムについて
研究成果

平成22年度に行った計5回の研究会の成果を、文化資源プロジェクトと連動させ、2011年6月5日にインド刺繍を題材とする身体表現の公開ワークショップ・パフォーマンス「インド刺繍~思いと出会う、願いでつながる」を60名の参加者および50名の見学者を得て、みんぱくエントランスホール他で実施した。本年度は、共同研究会のまとめの年として、これまで「身体・表現・つながり」をキーワードに文化人類学、身体表現学、工学、教育学等の研究者が領域横断的に話題提供と討議を行ってきた成果と課題を整理するとともに、実験的に進めた平成21、22年度の2回の表現ワークショップのために開発したプログラムの評価や、ワークショップの実際に関する分析と検討を進めた。また、本研究会が開発したプログラムを、博学連携での実践に活用するために、東京都の幼稚園教諭を対象とする夏季指導者講習会(受講生100名・2011年8月21日)および、金沢大学附属小学校2年生および5年生(児童70名・2011年10月13、14日)、石川県立ろう学校小学部(児童30名・2011年11月21、22日)を対象とする2日間の特別授業として実践し、教育関係者との交流の機会を得て、教育現場への発信を実現した。なお、特別授業の様子は、NHK(石川・全国)や民放、新聞等で広く紹介された。

2010年度

平成21年度に行った4回の研究会(内1回は3月に開催予定)の成果は、文化資源プロジェクトと連動させ、2010年3月に実験的な表現ワークショップとして実践の場で展開する(東南アジアの影絵芝居ワヤン・クリを題材にした『影で出会う・影でつながる』ワークショップ、3月21日・22日、於:特別展示場)。本年度は、このワークショップを研究対象に、目標設定、支援方法、事前の教育機関や地域社会等と連携した取り組み、開発プログラムの質的・量的評価とその手法、ワークショップの記録方法等の視点から、分析・検討を行う。同時に、得られた成果を活用し、第2回のワークショップ(平成23年3月に実施予定)の企画を進め、新たな課題の設定と検証方法の検討を行う。またワークショップの成果を文化人類学的方法論や博物館の社会的活用という見地から評価し、文化人類学や博物館学へ発展的に応用することを目指しながら、学際的な研究成果の共有・定着を試みる。

【館内研究員】 五月女賢司、広瀬浩二郎、福岡正太、三尾稔、横山廣子
【館外研究員】 上杉繁、加藤謙一、佐藤優香、杉山千鶴、塚本順子、橋本周司、米谷淳、三輪敬之、本山益子、山口友之、弓削田綾乃、渡辺富夫
研究会
2010年7月18日(日)13:00~17:00(早稲田大学西早稲田キャンパス60号館2階206(機械系会議室))
西洋子(東洋英和女学院大学)「第1回ワークショップ〈影で出会う・影でつながる〉の成果と課題」
上羽陽子(国立民族学博物館)「つくり手の視点から見るインド西部刺繍布の特徴」
討議:ワークシップ2011に向けて
2010年8月31日(火)18:00~20:00(早稲田大学大隈記念講堂、西早稲田キャンパス60号館2階206(機械系会議室))
2010年9月1日(水)10:00~17:00(早稲田大学大隈記念講堂、西早稲田キャンパス60号館2階206(機械系会議室))
『Dual2010』鑑賞と討議
『Dual2010』制作 三輪敬之(早稲田大学)橋本周司(早稲田大学)渡辺富夫(岡山県立大学)西洋子(東洋英和女学院大学)
加藤謙一(長崎歴史文化博物館)「祝祭としてのワークショップ-モノからはじまる博物館文化論-」
弓削田綾乃(早稲田大学客員研究員)「地域伝統芸能を受け伝える身体の諸相~仏舞、稚児舞楽、獅子舞など」
秋田有希湖(鶴見大学短期大学部)「身体表現グループよりワークショップの原案提示」
2010年11月27日(土)13:00~17:00(国立民族学博物館 第5セミナー室)
2010年11月28日(日)10:00~17:00(国立民族学博物館 大演習室)
西洋子(東洋英和女学院大学)「3月ワークショップの企画運営について」
三尾稔(国立民族学博物館)「民族学博物館における『フォーラム』型展示の意味と課題-一人類学者の視点から-」
恩地元子(東京藝術大学・非常勤講師)「ミュージアム - 自在で親密な空間に向けて」
2011年3月6日(日)10:30~17:00(早稲田大学西早稲田キャンパス55号館S棟第3会議室)
表現ワークショップの最終打ち合わせ
上羽陽子(国立民族学博物館)「ワークショップの導入部について」
西洋子(東洋英和女学院大学)「表現ワークショップの記録について」
加藤謙一(長崎歴史文化博物)「表現ワークショップの評価について」
三尾稔(国立民族学博物館)「運営に関する最終確認」
2011年3月10日(日)13:00~16:00(国立民族学博物館 第3演習室)
三尾稔(国立民族学博物館)「表現ワークショップに異文化理解の視点をどのように組み込むのか」
2011年3月19日(金)9:00~12:00および17:00~19:00(国立民族学博物館 第5セミナー室他)
2011年3月20日(土)15:00~18:00(国立民族学博物館 第5セミナー室他)
※東北地方太平洋沖地震の影響により中止と決定いたしました。
成果発表ワークショップの最終確認および成果と課題の検討
西洋子(東洋英和女学院大学)「全体の取りまとめ」
高橋うらら(東京都市大学)・村中亜弥(相模女子大学・非)「ワークショップでの表現ファシリテーターの役割」
三輪敬之(早稲田大学)・山口友之(早稲田大学)「表現支援システムの開発と成果・課題」
三尾稔(国立民族学博物館)・横山廣子(国立民族学博物館)「民族学博物館でのワークショップの企画・運営について」
秋田有希湖(鶴見大学短期大学部)・加藤謙一(長崎歴史文化博物)「表現ワークショップの評価」
研究成果

2010年3月21、22日に実施した、国立民族学博物館での文化資源を活用した表現ワークショップ『表現で出会う、表現でつながる~影で出会う、影でつながる~』に関して、目標の設定、具体的な技術開発および人的支援の方法等の視点から討議を行った。こうした成果は、2011年開催予定のワークショップ『インド刺繍~思いと出会う・願いでつながる』での具体的実践内容の構想に活かされ、教育機関や地域社会等と連携し、年間を通して進めた事前活動の実施と実践を通じた活動内容の検証および修正につながった。また、前回のワークショップで検討課題となった開発プログラムの質的・量的評価に関しては、調査方法の検討と質問紙作成等を進めるとともに、ワークショップの記録方法に関しては、新たに検討を行い、2011年3月実施予定のワークショップで活用を試みる準備を整えた。また上記の成果を文化人類学的方法論や博物館の社会的活用という見地から評価し、文化人類学や博物館学へ発展的に応用することを目指す本共同研究会の最終年度に向けて、学際的な研究成果の共有・定着をすすめた。

2009年度

平成20年度(10月以降)に行った3回の共同研究会の内容・成果を継続・発展させながら、国立民族学博物館での文化資源を活用した表現ワークショップ開催(平成21年度文化資源プロジェクトに、平成22年3月の実施を申請中)にむけた目標の設定、具体的な技術開発および人的支援の方法と整備に関する情報の共有と討議を行う。具体的には、教育機関や地域社会等と連携して、事前活動等の小規模な試みを企画・運営し、活動と省察とを連動させながら表現創出の支援方法の確立を目指す。あわせて、ワークショップおよび開発プログラムの質的・量的評価に関する調査方法の検討や質問紙作成等を進めるとともに、ワークショップの記録方法に関して、各専門領域の意見を集約しながら一定の方法を考案し、実際のワークショップ時に活用する。またワークショップの成果を文化人類学的方法論や博物館の社会的活用という見地から評価し、文化人類学や博物館学へ発展的に応用することを目指す平成22年度以降の共同研究会に向け、学際的な研究成果の共有・定着を試みる。

【館内研究員】 五月女賢司、広瀬浩二郎、福岡正太、三尾稔、横山廣子
【館外研究員】 上杉繁、加藤謙一、佐藤優香、杉山千鶴、塚本順子、橋本周司、服部元史、米谷淳、三輪敬之、本山益子、弓削田綾乃、渡辺富夫
研究会
2009年6月20日(土)13:00~19:00(国立民族学博物館 大演習室)
2009年6月21日(日)10:00~19:00(国立民族学博物館 大演習室)
Ⅰ.ワークショップ構想および打ち合わせ(1)
 福岡正太 解説「ジャワの影絵について」
 五月女賢司 事例紹介「博物館でのワークショップ」
 塚本順子 事例紹介「ダンスで出会うダンスでつながるワークショップ」
 ワークショップ構想に関する討議および会場見学
Ⅱ.ワークショップ構想および打ち合わせ(2)
Ⅲ.研究会【身体・つながり・表現】
 横山廣子「祭りの場における多元性と自己展開の可能性-掛川祭りを事例に-」
 米谷淳「共感行動への行動科学的アプローチ」
2009年8月22日(土)14:30~18:00(早稲田大学創造理工学部55号館4階共通会議室 他)
2009年8月23日(日)11:00~17:00(早稲田大学創造理工学部55号館4階共通会議室 他)
研究会【身体・つながり・表現】
西洋子・渡辺貴文(早稲田大学)「身体表現における共振の発現プロセス」
三尾稔:ワークショップの基本理念「フォーラム型博物館について」
ワークショップ構想および打ち合わせ
2009年11月21日(土)13:30~18:00(国立民族学博物館 大演習室)
2009年11月22日(日)10:30~16:00(国立民族学博物館 第7セミナー室)
研究会【身体・つながり・表現】
Ⅰ.ワークショップ関連研究の報告・討議
 本山益子・秋田有希湖(豊橋創造大学短期大学部)「影のはたらきと身体表現」
 山口友之(早稲田大学)「A Musical Interface for Embodied Sound Media Technology」
 弓削田綾乃「エスノパフォーマンスを活用した身体表現創出の可能性 ~影絵芝居ワヤン・クリを用いて~」
 西島宏輔(早稲田大学)・加藤雄大(早稲田大学)・大滝 佳史(早稲田大学)「Virtual Shadow Puppet System」
Ⅱ.話題提供と研究討議
 三尾稔「民族学博物館における『フォーラム』型展示の意味と課題-一人類学者の視点から-」
 ワークショップの構想および打ち合わせ
2010年3月7日(日)10:30~17:00(早稲田大学西早稲田キャンパス)
共同研究の成果公開(ワークショップ)のための打ち合わせ
2010年3月21日(日)9:00~12:00および17:00~19:00(国立民族学博物館 特別展示場他)
2010年3月22日(月)15:00~17:00(国立民族学博物館 特別展示場他)
成果発表ワークショップの最終確認および成果の検討と反省
身体表現領域:西洋子・高橋うらら・秋田有希湖
工学領域:三輪敬之・山口友之
文化人類学領域:三尾稔
研究成果

平成20年度(10月以降)に行った3回の共同研究会の内容・成果を継続・発展させながら、国立民族学博物館での文化資源を活用した表現ワークショップ『表現で出会う・表現でつながる~影で出会う・影でつながる~』の開催(平成21年度文化資源プロジェクトにおいて、平成22年3月21、22日に実施)にむけた目標の設定、具体的な技術開発および人的支援の方法と整備に関する情報の共有と実験・討議を行った。あわせて、教育機関や地域社会等と連携して、事前活動等の小規模な試みを企画・運営し、活動と省察とを連動させながら感性的な気づきとその深化を促す表現創出の支援方法を検討した。ワークショップおよび開発プログラムの質的・量的評価に関しては、調査方法の検討や質問紙作成等を進めるとともに、ワークショップの記録方法に関して、各専門領域の意見を集約しながら方法を考案し、実際のワークショップ時での活用を試みた。またワークショップの成果を文化人類学的方法論や博物館の社会的活用という見地から評価し、文化人類学や博物館学へ発展的に応用することを目指す平成22年度以降の共同研究会に向け、学際的な研究成果の共有・定着をすすめた。

2008年度

10月~3月の期間に、『自己と他者との存在的なつながり』をテーマに3回の研究会を開催する。研究会の内容は、上記テーマでの研究発表・討議に加えて、平成17年度~19年度に実施した『ダンスで出会う・ダンスでつながる』ワークショップの成果と課題の報告、および、今後の研究において活用予定の工学的な技術の理解、文化人類学的な異文化理解の方法論の検討およびそれらと支援技術の融合に関する討議等である。なお1月には、平成21年度・22年度のワークショップ開催を目指し、【文化資源プロジェクト】の研究費申請を行う予定である。

【館内研究員】 広瀬浩二郎、福岡正太、三尾稔、横山廣子
【館外研究員】 加藤謙一、佐藤優香、杉山千鶴、塚本順子、橋本周司、服部元史、米谷淳、三輪敬之、弓削田綾乃、渡辺富夫
研究会
2008年10月11日(土)10:00~17:00(国立民族学博物館 大演習室)
(1)展示場でのワークショップ構想打ち合わせ 10時~12時
(2)研究会【つながりと表現】 13時半~17時
〈共同研究の説明とメンバー紹介〉13時半~14時
西洋子:東洋英和女学院大学・人間科学部
〈話題提供と研究討議1〉14時~15時半
「憑きものと『のり』~つながりの媒体として憑依を考える」
三尾稔:国立民族学博物館・研究戦略センター
〈話題提供と研究討議2〉15時半~17時
「つながり・包みあう影~共創表現とコミュニカビリティ技術~」
三輪敬之:早稲田大学・大学院創造理工学研究科
2008年12月23日(火)13:30~18:00(国立民族学博物館第6セミナー室)
・『身体・つながり・表現』Ⅱ
【感性にかかわる工学】:橋本周司
【世界の音楽のリズムをとらえる】:福岡正太
・来年度のワークショップに関する討議
2009年3月14日(土)12:30~19:00(早稲田大学大久保キャンパス・60号館206(機械工学科会議室))
(1)「手学問のすゝめ」の誕生~点字力を育む"さわる"体験型ワークショップ~
広瀬浩二郎(国立民族学博物館)
(2)人を引き込む身体的コミュニケーションの不思議さ
渡辺富夫(岡山県立大学)
研究成果

平成20年10月~平成21年3月の期間に、『自己と他者との存在的なつながり』をテーマに3回の研究会を開催した。本共同研究は、文化人類学・工学・表現学・教育学等、多様な学術的背景の研究者で構成されていることから、初年度である本年度は、身体性、感性、コミュニケーション、表現等の視点から、それぞれの研究内容を紹介し討議することで、異分野の研究特性を把握し相互理解を進めると同時に、今後、民族学博物館での表現をコアとする異文化理解プログラム開発にむけて、共通の課題の発見へとつながることを目指した。類似した問題設定をもつ他分野の研究内容とその成果は、相互に刺激的であり多くの示唆を得ることができた。また、博物館等での身体を軸にしたワークショップの展開事例の報告を通して、表現を促す人的・工学的支援のあり方そのものへの問いにつながる議論が行われた。全体を通して本年度の研究会は、具体的な成果を得るには至らなかったが、本共同研究会が目指す、新しい異文化理解プログラム開発に向けた基盤をつくる機会となった。 なお今後、本研究会での成果を実践の現場と連動させるために、平成22年3月に国立民族学博物館での表現ワークショップ開催を【文化資源プロジェクト】として申請し、採択された。