国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

研究会・シンポジウム・学会などのお知らせ

2007年7月7日(土) ~7月8日(日)
ミニ・シンポ「南アジア・東南アジアの開発」

  • 日時:2007年7月7日(土) 13:00~18:00 / 7月8日(日) 10:00~16:00
  • 場所:国立民族学博物館 第4セミナー室
  • オーガナイザー:信田敏宏・真崎克彦・南出和余・菅野美佐子
 

趣旨

今回のミニ・シンポジウムは、民博の共同研究「開発と先住民族」の一環として実施されます。この共同研究プロジェクトでは、世界各地の開発援助と先住民族の関係を比較検討していますが、その中でも、アジア地域の開発をめぐる問題は、避けて通ることができない事象です。実際、アジア地域の開発については、人類学に限らず、国際協力、地域研究、開発経済学、さらに自然系・工学系の分野など様々な分野で盛んに議論がなされています。日本の政府援助機関(JICAなど)、そして、NGO、民間などによる開発援助も、その多くは、アジア諸国に対して集中的に実施されてきましたし、現在も様々な形で実施されています。

こうした状況を踏まえて、今回のミニ・シンポジウムでは、共同研究会の趣旨を視野に入れつつ、アジア地域の開発をめぐる問題を議論したいと思います。特に今回は、南アジア・東南アジアを専門とする研究者の方々にご参集いただき、世界の各地域を専門とする共同研究会のメンバーと対話しながら、様々な検討を加えていきたいと考えています。

今回のミニ・シンポジウムでは、JICAやNGOなどに属し、実際に開発援助にたずさわる「実践者」「実務者」に対して、人類学者や地域研究者などのいわゆる「研究者」が、自らのフィールドの状況をいかにして伝えるべきなのかを考えることを目的としています。そして、希望としては、「研究者」と「実践者」の間の対話の可能性とその限界についても議論してみたいと考えています。

今回のミニ・シンポジウムのキーワードとして考えられるのは、開発、先住民族、地域住民、南アジア、東南アジア、開発実践などです。報告者の方々には、こうしたキーワードを複数選択していただき、自らのフィールド状況について、(可能であるならば)開発援助の「実践者」「実務者」を聴衆として想定した30分ほどのプレゼンテーションをお願いしています。

この「プレゼンテーションについてのお願い」は、開発の問題と対峙した時、「研究者」は何をどのように語ることができるのか、あるいは、何をいかにして語るべきなのかということを意識した提案でした。このようなプレゼンテーションを実験的に試みることで、開発現象に対しての「研究者」ならではの語りの可能性とその限界、そして、自らの位置どり(ポジショニング)の問題などが、おのずから明らかになるのではないかと考えています。

報告者の方々には、自らのフィールド状況を、通常の研究発表とは逆に、細部にあまりこだわらずに、極めてシンプルな形で提示していただくということをお願いしました。この2日間のミニ・シンポでは、そうしたプレゼンテーションのあり方も含めて、南アジア・東南アジアにおける開発について、活発に議論が展開されることを期待しております。 (信田敏宏 :国立民族学博物館)

プログラム

2007年7月7日(土)
13:00~13:10 趣旨説明  岸上伸啓(国立民族学博物館)
第1セッション 座長 信田敏宏(国立民族学博物館)
13:10~13:50 南出和余(京都大学地域研究統合情報センター)
「開発にまきこまれる「子ども」たち―バングラデシュの事例から」
13:50~14:30 菅野美佐子(総合研究大学院大学院生)
「村落社会にみる「ジェンダーと開発」―北インド農村の事例から」
14:30~14:45 コーヒー・ブレイク
第2セッション 座長 南出和余(京都大学)
14:45~15:25 藤倉達郎(京都大学)
「開発実践と社会運動の交錯点―ネパールのカマイヤ労働者解放運動」
15:25~16:05 真崎克彦(清泉女子大学)
「開発協力と「持続」する時空―ネパールとブータンを事例として」
16:05~16:45 子島進(東洋大学)
「開発を通してイスラーム的な価値観を考える――パキスタン・インドの事例から」
16:45~17:00 コーヒー・ブレイク
17:00~18:00 1日目総括・総合討論
座長 岸上伸啓・信田敏宏(国立民族学博物館)
2007年7月8日(日)
10:00~10:10 趣旨説明  信田敏宏(国立民族学博物館)
第3セッション 座長 真崎克彦(清泉女子大学)
10:10~10:50 信田敏宏(国立民族学博物館)
「「開発」の風景―マレーシア先住民の事例」
10:50~11:30 金沢謙太郎(神戸女学院大学)
「サラワクのプナン人を研究するということ」
11:30~12:10 玉置泰明(静岡県立大学)
「政策・立法から見たフィリピンの開発と先住民族」
12:10~13:30 昼食
第4セッション 座長 菅野美佐子(総合研究大学院大学)
13:30~14:10 増田和也(京都大学大学院大学院生)
「森林開発と先住民社会―インドネシア・リアウ州を事例として」
14:10~14:50 福武慎太郎(名古屋市立大学)
「地域住民はNGOをどのようにみているのか?――東ティモールにおけるNGOマネジメントの経験をもとに」
14:50~15:05 コーヒー・ブレイク
15:05~16:00 総合討論
座長 岸上伸啓・信田敏宏(国立民族学博物館)