国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

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2007年3月26日(月) ~3月27日(火)
《機関研究成果公開》開館30周年記念公開フォーラム「日本における多文化教育―アイヌ文化の場合―」


チラシダウンロード[PDF:490KB]
  • 日時:2007年3月26日(月) 13:30~17:30/3月27日(火) 10:00~16:00
  • 場所:国立民族学博物館 第4セミナー室・第3セミナー室・展示場
  • 主催:国立民族学博物館
  • 後援:70名(先着順、事前申込必要)
  • 参加費:無料
 

趣旨

グローバル化する国際社会と同様に、現在、日本社会は多様な文化をもつ人々によって構成されています。多様な文化への理解は、現代社会でさまざまな人々が幸せに暮らす上で大切ですが、必ずしも理解が十分でない現実が存在しています。
多様な文化への理解は、さまざまな場や経験を通して促進されますが、学校教育は、子どもや生徒、学生の文化的多様性に対する認識をはぐくむ重要な機会と言えるでしょう。

このフォーラムでは、アイヌ文化にかかわる教育実践活動をおこなってこられた方々の報告を通し、日本の学校教育においてアイヌの人々と文化がどのように取り上げられているかについて現状を認識し、それにともなう問題点を考え、今後、それがどのように展開しうるかを議論します。あわせて、国立民族学博物館がどのように活用されうるかについても検討したいと思います。

プログラム

3月26日(月) 第4セミナー室
13:30~13:45 趣旨説明 横山廣子(国立民族学博物館)
13:45~14:15 丸子美記子(関東ウタリ会)「アイヌに生まれて」
14:15~14:30 質疑応答
14:30~15:00 本田優子(札幌大学文化学部)「札幌市の小学校カリキュラムにみられるアイヌ文化教育の現状」
15:00~15:15 質疑応答
15:15~15:30 休憩
15:30~16:00 平野正美(学校法人和光学園和光小学校)「私立和光小学校1年生のアイヌ文化の学習-その20年の歴史-」
16:00~16:15 質疑応答
16:15~16:45 勝山明彦(茨木市立葦原小学校)「アイヌ古式舞踊と子ども」
16:45~17:00 質疑応答
17:00~17:30 中間討論
18:00~19:30 懇親会(館内)
3月27日(火) 第4セミナー室
10:00~10:30 安田千夏(白老町ウタリ施策推進室)「『白老町』でアイヌ文化学習の指導に挑む」
10:30~10:45 質疑応答
10:45~11:15 安武一雄(吹田市立北山田小学校)「アイヌ文化に触れる生活科」
11:15~11:30 質疑応答
11:30~11:45 休憩
11:45~12:30 総合討論
総括 佐々木利和(国立民族学博物館)
12:30~13:30 昼食
13:30~14:30 ムックリ製作講習(*第3セミナー室)
14:30~15:00 休憩
15:00~16:00 展示場見学「みんぱくアイヌ展示の活用を考える」(*アイヌの文化展示場

討論者

岡田恵介(アイヌ民族博物館)
竹ケ原幸朗(四国学院大学文学部)
藤田昇治(弘前大学生涯学習教育センター)
加藤謙一(国立民族学博物館)
岸上伸啓(国立民族学博物館)
中牧弘允(国立民族学博物館)
野林厚志(国立民族学博物館)

成果報告

以上が主な成果である。多数の一般参加者が熱心に討議にも加わり、異なる経験、立場、見解に基づく発言が交わされ、フォーラムとして、少なからぬ成果を上げた。

  1. 従来、アイヌの人々や文化、歴史に関して日本の学校教育でどのように取り上げられているかに関する研究は少なかったが、本フォーラムにおいて、小学校教育を中心に北海道、首都圏の私立学校、近畿圏の公立学校での事例に即してその実態がかなり明らかになった。
    (1)北海道では80年代半ばにカリキュラムに組み込まれたが、自然との結びつきが強い過去の伝統的生活が誇張されたり、誤って教えられ、ゆがんだイメージが形成されている点、その反面、現代に生きるアイヌの状況やその歴史が正しく教えられていない点、時間数が最近は減少している点などの問題が確認された。
    (2)首都圏と近畿圏の小学校ではアイヌの踊りや刺繍などの身体動作をともなうアイヌ文化体験型学習が小学校1年など低学年を中心に、現場の先生の創意工夫で授業に取り入れられている状況が具体的に明らかになった。生徒の強い興味をひき、大きな学習効果を生んでいることが教師側から報告されたが、それに対し、アイヌの歴史や差別の実態が教えられておらず、アイヌ文化を利用した学習という側面があるとの指摘があった。しかし「アイヌを」学ぶことと「アイヌに」学ぶことは二者択一の関係ではなく、この両者をどのように連結して教育を進めていくかが今後の課題として浮かび上がった。
  2. アイヌ民族を授業に招いて話を聞くなどの教育活動が報告されたが、学校教育における教師以外の人々との連携や、博物館などの文化施設やPTAなどの活動と連携した学校教育の展開により、教育の中身がさらに発展性を持つという展望が得られた。
  3. 学校教育で伝統的アイヌが誇張されて教えられる問題点は、本館を含めた博物館などの展示の問題にも繋がっており、同時代に生きるアイヌの姿をどのように伝えるかを共通課題として確認した。
公開フォーラム「日本における多文化教育」 趣旨説明
丸子美記子 本田優子
平野正美1 平野正美2
質疑応答 勝山明彦
中間討論 安田千夏
安武一雄 総合討論1
総合討論2 総括佐々木利和
ムックリ製作1 ムックリ製作2
展示場見学1 展示場見学2