テクスト学の構築
研究の目的
本研究は、識字・リテラシー研究、記憶・想起研究、文字・書記文化研究、書物史・読書史、地図研究、書誌学・図書館学、表象論・メディア論、文学批評・記号論など、広義のテクストに関わる学問分野を横断し、総合的なテクスト学の構築を目指す。
テクストとは、身体に外在する支持体に具現された記号の空間的配列であり、記憶・思考・表現・伝達などの知的活動のためのテクノロジーである。本研究は、テクストが媒介する人間と周辺環境との相互作用、人間相互の社会的交渉、そしてテクスト相互の関係を対象に、そのメカニズムとダイナミズムを重層的に解明する。
人間のテクストへの依存度は、地域的・時代的差異はあるが、全体として増加の一途をたどっている。テクストは道具としての利便性を増し、多様な形態を帯びて、社会のいたるところに浸透している。本研究は、このテクストの加速度的増加の具体的様相を解明し、その波及効果を推し量り、将来の展望を描き出すことを、重要な課題とする。
研究成果の概要
-
「テクスト」を対象とする諸分野・領域の学際的協働の推進
人間が制作し、使用する道具には、身体的活動を補佐するものだけでなく、知的活動を補佐するものもある。本研究は、知的道具の一カテゴリーとして「テクスト」に着目し、それと人間との関係を、多様な地域や時代を展望する広い視野のもと究明した。文字や文書、書物を対象とする研究には、人類学や社会学、歴史学や文学、教育学や心理学などで蓄積があるが、領域横断的な対話は活発ではない。本研究は、包括的かつ機能的な「テクスト」概念のもと、思考活動とそれを支える道具の関係を問い直すことで、諸分野・領域間の学際的協働を推進した。 -
「テクスト」の物質性と意味の関係の解明
ポスト構造主義や解釈学に連なる「テクスト」研究では、支持体やレイアウトなどの物質的側面を捨象し、意味論的に反復可能な言述のみに注目する傾向が顕著だった。それに対して、本研究では、物質性を備えた「テクスト」を人間が作り出し、受け渡し、使用し、保存するプロセスに着目した。そして、従来の「テクスト」研究が公準としてきた言述の意味論的自律が「テクスト」の物質性の関数にほかならず、物質的なインフラが整備される度合いに応じて達成されることを示した。 -
「テクスト」と人間の関係のダイナミズムの解明
本研究では、「テクスト」が人間の期待どおりに機能することを前提とする文献学的実証主義や、「テクスト」以前から「テクスト」以後への単線的発展を措定する進化論的リテラシー研究を乗り越え、知的道具の使用自体が高度な技能を要する認知作業であり、必ずしも成功が保証されない社会的投企であることを示した。そして、「テクスト」と人間の関係の不確実性と不安定性に由来する一連のダイナミズム(「テクスト」への不信と信頼の弁証法、「テクスト」管理サイクルの長期的形成、「テクスト」の限定的使用から一般的使用への移行など)を究明した。
研究成果公表計画及び今後の展開等
本研究の主要な成果は以下のとおりである。なお、現在、2007年の国際シンポジウムの日本語版成果を準備している。
Saito, Akira et Yusuke Nakamura (dir.)
2010 Les outils de la pensée: étude historique et comparative des 《 textes 》 . Paris : Édition de la Maison des sciences de l'homme.
齋藤晃(編)
2009 『テクストと人文学_知の土台を解剖する』京都:人文書院
Kashinaga, Masao (ed.)
2009 Written Cultures in Mainland Southeast Asia (Senri Ethnological Studies 74). Osaka: National Museum of Ethnology.
López Beltrán, Clara y Akira Saito (eds.)
2005 Usos del documento y cambios sociales en la historia de Bolivia (Senri Ethnological Studies 68). Osaka: National Museum of Ethnology.
2008年度成果
研究実施状況
国際シンポジウム「Les outils de la pensée. Étude comparative des 《textes》 et de leurs fonctions sociales(思考の道具―「テクスト」とその社会的機能の比較研究)」(平成19年5月29日開催)の成果刊行準備が進んでいる。フランスの人間科学館出版局(Éditions de la Maison des sciences de l'homme)に原稿を提出し、2名の査読者による審議を経て、原稿は採択された。現在、表現と形式の修正を行っており、それに関連して、3月中旬、齋藤がフランスに渡航し、編集者およびパリ在住の執筆者と打合せを行う。また、国際シンポジウムの成果を日本語でも刊行すべく、原稿のとりまとめと出版社との交渉を進めている。専門家と業者に依頼してフランス語原稿の日本語訳を作成し、現在、齋藤が執筆者と相談しながらその修正を行っている。本機関研究の中核的プロジェクトである共同研究「テクスト学の構築に向けて」についても、成果刊行の最終準備が進められ、1月20日、齋藤晃編『テクストと人文学―知の土台を解剖する』(人文書院)が刊行された。樫永真佐夫を中心とする東南アジア大陸部に関する共同研究についても、国際シンポジウム「東南アジア大陸部の書承文化」(2006年2月3~4日開催)の成果刊行準備が最終段階にある。9月上旬には、執筆者と最終的な打合せを行うため、樫永がベトナムとラオスに渡航した。Masao Kashinaga (ed.)『Written Cultures in Mainland Southeast Asia』(National Museum of Ethnology)は平成21年3月刊行予定である。
研究成果概要
昨年度に引き続き、本年度も、国際シンポジウムと共同研究の成果をとりまとめる過程で、研究の全体的枠組みに関わる諸問題を再考した。本研究の方法論の中核にあるのは、テクストを意味のレベルだけでなく物質性のレベルでも考察する、という方針である。テクストは特定の物質的形態を帯びて特定の時空間に顕在化するが、意味へと抽象化されることで、「いま」と「ここ」を超越した反復可能性を獲得する。しかし、その反復可能性自体は物質性の関数であり、物質的なインフラが整備される度合いに応じて実現される、というのが、本研究の基本認識である。テクストを意味と物質性の両方の観点から考察しようとする研究領域は、書物史・読書史、史料論・史料学、アーカイブズ学、リテラシー・スタディーズなど、すでにいくつか存在するが、本研究は、テクストと人間の関係を人類史的観点からとらえ直すことで、既存の成果を相互に比較なものとして位置づけることを試みた。
公表実績
出版
- 齋藤晃編『テクストと人文学―知の土台を解剖する』人文書院、2009年。
- Masao Kashinaga (ed.), Written Cultures in Mainland Southeast Asia (Senri Ethnological Studies), National Museum of Ethnology, 2009 (in press).
2007年度成果
研究実施状況
民博とフランスの人間科学館(Fondation Maison des sciences de l'homme)の共催のもと、5月29日、人間科学館パリ本部において、国際シンポジウム「思考の道具-「テクスト」とその社会的機能の比較研究(Les outils de la pensée. Étude comparative de 《textes》 et de leurs fonctions sociales)」を開催した。このシンポジウムの目的は、従来さまざまな学問分野で個々別々に行われてきた「テクスト」研究を、「思考の道具」の人類史という観点から統合する可能性を切り開くことである。シンポでは、文化人類学・民族学、歴史学、書物史・読書史、科学史、文献学、文学、図書館学、社会開発などを専門とする日本とフランスの研究者10名が集まり、認知的道具としての「テクスト」の社会的機能を、普遍性と特殊性の両方を考慮しながら、技術史的・社会史的・文化史的観点から多元的に考察した。
国際シンポジウム終了後、その研究成果をフランス語の論文集として刊行すべく、準備を進めた。研究代表者がパリに渡航して編集者と交渉したほか、シンポの報告の一部をテープ起こしし、日本人の仏語論文の校閲をし、また英語論文を仏訳した。
本機関研究の中核的プロジェクトである共同研究「テクスト学の構築に向けて」に関しても、研究成果の刊行準備が進んでいる。原稿執筆前の6月23日~24日に執筆予定者全員で打ち合わせを行い、論文集の趣旨と構成、および各人の執筆内容について意見交換し、方針を立てた。また、原稿執筆後の10月20日~21日に再度、執筆者全員で打ち合わせを行い、互いの原稿を批評し合い、修正点を確認した。
樫永真佐夫を中心とする東南アジア大陸部に関する国際共同研究に関しても、国際シンポジウム「東南アジア大陸部の書承文化」(2006年2月3~4日開催)の成果刊行準備が進んでいる。準備中の英語の論文集は、東南アジア大陸部各地の文字や記号、およびそれらを記す行為が、地域ごとの物質的・技術的・制度的・文化的状況と関連しながら継承されていくプロセスに焦点を当て、「テクスト学」的観点から東南アジア大陸部の地域性を考察することを目的としている。
研究成果概要
本年度は、国際シンポジウムと共同研究の成果をとりまとめる過程で、対象設定、問題提起、概念装置、方法論など、研究の一般的枠組みに関わる諸問題を再考した。とりわけ、人文学的研究の営みとして、一次資料であるテクストを収集し、分類し、批判し、校訂する作業を再検討した。人文学の営みは、それ自体がテクストを扱うひとつの実践であり、テクストの生産・流通・利用・保管・継承にまつわる社会的・文化的コンテクストから超越しているわけではない。それゆえ、テクストに関する実践を研究することは、研究の営み自体を相対化し、客体化する契機を内包している。このような視点から、文学や思想、歴史学などにおける従来のテクストの扱い方を再考し、問題点を洗い直した。そして、テクストをテクスト外的な要因の単なる媒介として扱うのではなく、テクストが関与してきた実践の総体のなかでその意義を考察するアプローチを練り上げることを試みた。
公表実績
出版
- 八鍬友広「訴の時代」『歴史評論』688: 26-37、歴史科学協議会、2007年8月。
- 大黒俊二「マルコ・ポーロ-「空想譚」から「事実の書」へ」原聖『ケルトの水脈』(興亡の世界史7)月報、1-3頁、講談社、2007年。
- 飯島明子「シャン州南部に手漉き紙をたずねて」『自然と文化そして言葉』3: 96-105、2007年8月。
- 飯島明子「ソーブワーたちをめぐるオーラル・ヒストリー-セーンウィー小史へ向けた覚書き」『東南アジア研究』45(3): 450-479、2007年12月。
- 原田範行「英国18世紀エロティカ狂想曲礼賛」『英語青年』2007年5月号、7-10頁、研究社。
- Noriyuki Harada, "An Imaginative Journey to an Alter Ego: Samuel Johnson's "Life of Savage" and Biographical Thinking in the Eighteenth Century", Poetica: An International Journal of Linguistic-Literary Studies, no.68, ed. Noriyuki Harada & Hermann J. Real, pp.75-98, Yushodo, 2007.
- 樫永真佐夫『東南アジア年代記の世界-黒タイの«クアム・トー・ムオン»』風響社、2007年。
- 樫永真佐夫&カム・チョン『黒タイ首領一族の系譜文書』(SER70)国立民族学博物館、2007年。
- 山中由里子「寓意としてのアレクサンドロス-イスラーム古典期の信仰と歴史意識において」東京大学総合文化研究科比較文学比較文化コース提出博士論文、2007年。
- Yuriko Yamanaka,《Un héos aux mille et un visages: classification des réits sur Alexandre dans la littéature méiéale arabe et persane》, in Classer les réits : théries et pratiques, pp.241-256, Paris: L'Harmattan.
- Akira Saito, "Arte y conversión cristiana en las misiones jesuítcas de Mojos y Chiquitos". Anuario de Estudios Bolivianos, Archivíticos y Bibliogróficos 12: 581-609, Sucre: Archivo y Biblioteca Nacionales de Bolivia, 2007.05.
シンポジウム・分科会・口頭発表・講演
- 大黒俊二「説教にみる家族像-中世イタリアのキリスト教と家族」比較家族史学会大会シンポジウム「宗教と家族」、神戸大学、2007年6月16日。
- Noriyuki Harada, "Morphology of Books and Language: Writing, Reading, and Anthologizing in Eighteenth-Century Britain and Modern Japan", Table ronde: Les outils de la pensée. Étude comparative des《textes》et de leurs fonctions sociales, Fondation Maison des sciences de l'homme, Paris, 2007.05.29.
- Jean-Marc Chatelain,《Surfaces du savoir : la publication en tableaux au XVIIe siècle》, Table ronde: Les outils de la pensée. Étude comparative des《textes》et de leurs fonctions sociales, Fondation Maison des sciences de l'homme, Paris, 2007.05.29.
- Christian Müler,《Utiliser l'écrit pour établir la preuve orale dans le droit musulman : l'exemple d'un tribunal mamelouke à Jérusalem à la fin du XIVe siècle》, Table ronde: Les outils de la pensée. Étude comparative des《textes》et de leurs fonctions sociales, Fondation Maison des sciences de l'homme, Paris, 2007.05.29.
- Serge Gruzinski,《Babel au XVIe siècle : mondialisation et globalisation des langues》, Table ronde: Les outils de la pensée. Étude comparative des《textes》et de leurs fonctions sociales, Fondation Maison des sciences de l'homme, Paris, 2007.05.29.
- Kapil Raj,《Les cartes et leurs usages en Asie du Sud et en Grande-Bretagne, XVIIIe-XIXe siècle》, Table ronde: Les outils de la pensée. Étude comparative des《textes》et de leurs fonctions sociales, Fondation Maison des sciences de l'homme, Paris, 2007.05.29.
- Roger Chartier,《La parole, l'écriture et l'imprimé》, Table ronde: Les outils de la pensée. Étude comparative des《textes》et de leurs fonctions sociales, Fondation Maison des sciences de l'homme, Paris, 2007.05.29.
- 中村雄祐「現代世界における「リテラシー」と生存」日本生物地理学会第62回年次大会シンポジウム「進化と系譜:ツリー、ネットワーク、視覚言語リテラシー」日本生物地理学会、立教大学、2007年4月8日。
- Akira Saito & Yusuke Nakamura,《Outils de la pensée, outils de la vie》, Table Ronde: Les outils de la pensée. Étude comparative de《textes》et de leurs fonctions sociales, Fondation Maison des sciences de l'homme, Paris, 2007.05.29.
- Yusuke Nakamura, "Local Development in Small Villages in Alta Verapaz, Guatemala: Macro, Meso, Micro, and Nano: Micro Level", Panel: Local Development in Small Villages in Alta Verapaz, Guatemala: Macro, Meso, Micro, and Nano, chaired by Tomomi Kozaki, XXVII International Congress of Latin American Studies Association, Montreal, Canada, 2007.09.04.
- Masao Kashinaga, "Transmissions and uses of the Tai Dam chronicles 'Quam To Muang' ", International Conference: Modernities and Dynamics of Tradition in Vietnam: Anthroporogical Approaches, Binh Chau Resort, Vietnam, 2007.12.15-18.
- Masao Kashinaga,《Les usages des chroniques dans les funérailles aux villages ta?-noirs, Viet-nam》, Table Ronde: Les outils de la pensée. Étude comparative de《textes》et de leurs fonctions sociales, Fondation Maison des sciences de l'homme, Paris, 2007.05.29.
- Yuriko Yamanaka,《Un héros aux mille et un visages : classification des récits sur Alexandre dans la littérature médiévale arabe et persane》, Les hommes et les récits : reconnaÎtre, classer, interpréter, Inalco, Fondation Singer-Polignac, Sorbonne, Paris, 2007.05.25.
- Yuriko Yamanaka,《Les modes de transmission du savoir : Alexandre le Grand et l'évolution de l'historiographie arabe》, Table Ronde: Les outils de la pensée. Étude comparative de《textes》 et de leurs fonctions sociales, Fondation Maison des sciences de l'homme, Paris, 2007.05.29.
- Yuriko Yamanaka, "Imitatio Alexandri in Ghaznavid Panegerics and Historiography", 6th European Conference of Iranian Studies, Vienna, 2007.09.18-22.
2006年度成果
研究実施状況
本年度は、機関研究の中核的プロジェクトである共同研究「テクスト学の構築に向けて」の研究会を4回開催した。共同研究は本年度で実質的に終了し、来年度は研究成果刊行の準備を行う。
第1回研究会(7月8日)
「統一感のないテキスト―マヤ古文書の伝統」(八杉佳穂)
&「ベトナムにおけるターイ語表記の史的変化とその受容」(樫永真佐夫)
第2回研究会(10月22日~23日)
「手書きが生むテクスト位相―日本における「仮名」成立のプロセスを中心に」(萱のり子)
&「テクスト学基本文献解題―レビューと質疑応答(1)」(全員参加)
第3回研究会(11月25日~26日)
「説教を聞く、書く、読む―15世紀トスカーナの俗人筆録説教」(大黒俊二)
&「テクスト学基本文献解題―レビューと質疑応答(2)」(全員参加)
&「新潟県近世・近代史料の形態と用途に関する研究打ち合わせ」(全員参加)
第4回研究会(3月17日~18日)
「19世紀における鳥瞰図と時事」(杉本史子)
&「作動するテクスト―"ラス・メニーナス"と観者の享楽」(岡田裕成)
&「テクスト学基本文献解題―レビューと質疑応答(3)」(全員参加)
民博とフランスの人間科学センター(FMSH)との協定に基づいて、4月1日から6月30日まで、研究代表者の齋藤晃がパリのFMSH本部に外国人研究員として招聘された。齋藤はフランス滞在中、テクスト学に関連する研究機関・研究者を訪問し、近年の研究動向を調査した。また、国際シンポジウム「思考の道具-テクストとその社会的機能の比較研究」の開催準備を進めた。同シンポジウムは平成19年5月29日、パリのFMSH本部で開催される予定である。
12月13日~22日にかけて、研究代表者の齋藤晃、副代表者の樫永真佐夫、そしてシンポジウムの副実行委員長である中村雄祐の3名がパリに渡航し、前述の国際シンポジウムの参加予定者、FMSHの担当者、通訳予定者と打ち合わせを行った。
樫永真佐夫を中心とする東南アジア大陸部に関する国際共同研究は、昨年度の国際シンポジウム「東南アジア大陸部の書承文化」(2006年2月3~4日開催、実行委員長:樫永真佐夫)の成果刊行の準備を進めた。準備中の刊行物(英語)は、東南アジア大陸部各地の文字や記号、およびそれらを記す行為が、地域ごとの物理的・政治的・経済的・宗教的状況と関連しながら継承されていくプロセスに焦点を当て、「テクスト学」的観点から東南アジア大陸部の地域性を考察することを目的としている。2007年3月31日には、成果刊行準備の一環として研究打ち合わせを実施した。
機関研究の中間報告書(日本語・英語)、および英語版ホームページのため、機関研究と共同研究の趣意書、共同研究の報告要旨、国際シンポジウム「東南アジア大陸部の書承文化」の趣意書の英語訳を作成した。
研究成果概要
本年度は、昨年度に引き続き、特定の地域・時代の特定のテクストに焦点を当てた事例研究を進めた。それと並行して、「テクスト学」の対象設定、問題提起、概念装置、方法論などを事例の研究に応用し、その効果を検証した。その過程で、研究の一般的枠組みを機能的に組み立て直した。共同研究は本年度が最終年度に相当し、それゆえ研究会では、研究成果のとりまとめを視野に入れながら、人間と「テクスト」の関係について総合的な観点から議論を交わした。人間にとって「テクスト」とはどのような道具であり、それは人類史を通じてどのように発展し、その道具のおかげで人間になにが可能になったのか、などの一般的問題を検討した。また、来年度開催予定の国際シンポジウムとの関連で、フランス人研究者と複数回研究打合せを行い、「テクスト学」が目指すべき方向性についてより明確な展望を得た。
公表実績
出版
- 仲真紀子「他者と情報を分かち合う-コミュニケーションの機能と発達」内田伸子編『発達心理学キーワード』121-144頁、有斐閣、2006年。
- Naka, Makiko, "Memory Talk and Testimony in Children". In Mazuka et al (eds.) Handbook of East Asian Psycholinguistics, pp.123-129, Cambridge University Press, 2006.
- Naka, M. & Y. Maki, "Belief and Experience of Memory Recovery". Applied Cognitive Pychology 20:649-659, 2006.
- Jin, Jing Ai & M. Naka, "Mother-Child Conversation about Past Events: Mothers' Support and Children's Elaboration". SIG-SLUD-A602-04(11/16):19-24, 2006.
- 加地雄一・仲真紀子「行為を実演した記憶と想像した記憶の違い-ソース・モニタリング課題による検討」『基礎心理学研究』24(2):162-170、2006年。
- 白石紘章 ・仲真紀子・海老原直邦「認知面接と修正版認知面接における出来事の再生と反復提示された誘導情報の情報源再認」『認知心理学研究』4:33-42、2006年。
- 岡田悦典・仲真紀子・藤田政博「裁判員の刑事裁判への参加意識と法に関する認識-予備的アンケート調査から」『南山法学』29(3):38-76、2006年。
- 八鍬友広「往来物のなかの日本海域」原直史・大橋康二編『日本海域歴史大系 第五巻近(1)世篇』清文堂、2006年6月。
- 大黒俊二「遍歴説教師の頭陀袋―1498年フォリーニョの説教日誌」『中・近世イタリアにおける地方文化の発展とその環境』平成15-18年度科学研究費補助金基盤研究(B)(1)成果報告書(研究代表者:山辺規子)142-149頁、2007年3月。
- 大黒俊二「説教史料と史料論、テクスト学―方法論的考察」『西欧中世比較史料論研究』平成17-19年度科学研究費補助金基盤研究(B)・平成18年度研究成果年次報告書(研究代表者:岡崎敦)、2007年3月刊行予定。
- 飯島明子「シャン州南部に手漉き紙をたずねて」『自然と文化そしてことば』3号、2007年近刊予定。
- 杉本史子「"上品な日常知識"の中の一覧図 絵図の時代」『東京大学史料編纂所附属画像史料解析センター通信』33号、2006年4月。
- 杉本史子「色をかたちづくるもの 絵図の時代」『東京大学史料編纂所附属画像史料解析センター通信』34号、2006年7月。
- 杉本史子「自然は何色か-色彩材料からみた絵図 絵図の時代」『東京大学史料編纂所附属画像史料解析センター通信』35号、2006年10月。
- 杉本史子「ふたつの緑色―同時代人の眼 絵図の時代」『東京大学史料編纂所附属画像史料解析センター通信』36号、2007年1月。
- 吉江貴文「教育改革-PRE94と異文化理解・二言語教育のゆくえ」真鍋周三編『ボリビアを知るための68章』118-121頁、明石書店、2006年4月。
- 吉江貴文「アイマラ-近代ボリビアにおけるアイマラ系先住民と土地所有の文書化」綾部恒雄監修、黒田悦子・木村秀雄編『講座世界の先住民族-ファースト・ピープルズの現在08中米・カリブ海、南米』236-250頁、明石書店、2007年1月。
- 岡田裕成「征服後アンデスにおける「美術」の形成-植民地美術論再考のための序論」『スペイン・ラテンアメリカ美術史研究』7:91-99、2006年。
- Okada, Hiroshige, "Inverted Exoticism? Monkeys, Parrots, and Mermaids in Andean Colonial Art". In The Virgin, Saints, and Angels: Latin American Paintings from the Thoma Collection, pp.67-79, Iris & B. Gerald Cantor Center for Visual Arts, Stanford University, 2006.
- 岡田裕成・齋藤晃『南米キリスト教美術とコロニアリズム』名古屋大学出版会、2007年2月。
- 萱のり子「〈生きもの〉としての奈良歌の書」會津八一記念館編『會津八一と奈良』8-11頁、新潟日報事業社、2006年10月。
- 石原保徳・原田範行著『新しい世界への旅立ち』(シリーズ世界周航記別巻)岩波書店、2007年4月。
- 原田範行「食卓談義から紙上の饗宴へ」圓月勝博編『食卓談義のイギリス文学』273-310頁、彩流社、2007年8月。
- Saito, Akira, "Art and Christian Conversion in the Jesuit Missions on the Spanish American Frontier" 杉本良男編『キリスト教と文明化の人類学的研究』(SER62)171-201頁、国立民族学博物館、2006年10月。
- Saito, Akira, "Creation of Indian Republics in Spanish South America"『国立民族学博物館研究報告』31(4):443-477、国立民族学博物館、2007年3月。
- 樫永真佐夫『黒タイの系譜認識と祖先祭祀-家霊簿資料を例として』東京大学大学院総合文化研究科博士学位申請論文、2006年。
- 樫永真佐夫「黒タイ村落における姓の継承と個人呼称」塚田誠之編『中国・東南アジア大陸部の国境地域における諸民族文化の動態』(SER63)109-128頁、国立民族学博物館、2006年。
- 樫永真佐夫「<書承>文化を考える-西北ベトナムの黒タイの村から」『ACCUニュース』358:2-4、2006年。
- 樫永真佐夫「ベトナムの連絡道具」『月刊みんぱく』30(7):5、2006年。
- 山中由里子「初期イスラーム時代の歴史認識におけるアレクサンドロス」『比較文学研究』87:17-40、2006年5月。
- Kozaki, Tomomi & Yusuke Nakamura, "Human Security in Post-Genocide Guatemala: Toward Collective Reparation and Reconstruction at the Micro and Meso Levels", Comparative Genocide Studies Bulletin 2:70-93, Comparative Genocide Studies - The University of Tokyo, September 2006.
シンポジウム・分科会・口頭発表・講演
- Naka, M., Y. Okada, M. Fujita, & Y. Yamasaki, "Psychological Knowledge and Legal Knowledge I: Belief in Eyewitness Testimony and Legal Knowledge in Prospective Lay Judges" (Paper 159), International Conference on Memory, University of South Wales, Australia, 17-21 July 2006.
- Yamasaki, Y., M. Naka, Y. Okada, & M. Fujita, "Psychological Knowledge and Legal Knowledge II: The Effect of Prior Knowledge and Instructions on Prospective Lay Judges' Behaviour" (Paper 161), International Conference on Memory, University of South Wales, Australia, 17-21 July 2006.
- Uemiya, A., & M. Naka, "Infants' Knowledge on Truth and Lie: What They Know and How It Relates to the Behaviour of Telling a Lie" (Poster 123), International Conference on Memory, University of South Wales, Australia, 17-21 July 2006.
- Maki, Y., & M. Naka, "Contents, Features, and Organisation of Autobiographical Memory in Undergradutate Students" (Poster 40), International Conference on Memory, University of South Wales, Australia, 17-21 July 2006.
- Shiraishi, H., & M. Naka, "The Effect of Each Component of Cognitive Interview on Recall and Source Recognition of an Event" (Paper 100), International Conference on Memory, University of South Wales, Australia, 17-21 July 2006.
- Miwa, T., & M. Naka, "Young Children's Description of a Person: A Person They Saw and Another in Front of Them" (Paper 352), International Conference on Memory, University of South Wales, Australia, 17-21 July 2006.
- 親家泉・サトウタツヤ・仲真紀子「認知インタビューによる想起促進-刺激内用を知らない面接者を用いた効果の検討」日本法と心理学会第7回大会プログラム12頁、法政大学、2006年10月14-15日。
- 上宮愛・仲真紀子「幼児の証言能力の査定-嘘・真実についての概念理解と嘘をつく行為との関連」日本法と心理学会第7回大会プログラム17頁、法政大学、2006年10月14-15日。
- 仲真紀子・西田美樹・杉浦ひとみ(企画)「少年事件における少年へのインタビュー」(ワークショップII) 日本法と心理学会第7回大会プログラム7頁、法政大学、2006年10月14-15日。
- 仲真紀子「記憶の抑圧と回復に関する信念」日本心理学会第70回大会発表論文集881頁、2006年。
- 上宮愛・仲真紀子「中学生とその保護者による嘘の認識」日本心理学会第70回大会発表論文集1132頁、2006年。
- 山崎優子・仲真紀子「裁判員の法的知識と心理学的知識の正確性が司法判断に及ぼす影響」日本心理学会第70回大会発表論文集628頁、2006年。
- 白石紘章・仲真紀子(2006)「認知面接を公正する各技法の効果-再生成績と情報源再認を測度として」日本心理学会第70回大会発表論文集880頁、2006年。
- 飯島明子「オーラル・ヒストリーによるセーンウィー小史に向けて-(2)ソーブア・ファミリーの人々(続)とセーンウィーの人々」科学研究費補助金「ミャンマー少数民族地域における生態資源利用と世帯戦略-広域比較に向けて」2006年度最終報告会、京都大学東南アジア研究所、2007年3月24日。
- 杉本史子「「地図史料学の構築」―研究のねらい」科学研究費補助金基盤(A)「地図史料学の構築―前近代地図データ集積・公開のために」(研究代表者:杉本史子)、2006年7月。
- 杉本史子「2006年度徳島調査・中間報告」科学研究費補助金基盤(A)「地図史料学の構築―前近代地図データ集積・公開のために」(研究代表者:杉本史子)、2006年11月。
- 杉本史子「絵図研究と科学的調査」東京文化財研究所主催研究会「絵図研究と科学的調査」、2007年2月。
- 原田範行「未知なる海洋への旅立ち―ヨーロッパ18世紀、世界周航の時代」(講演)大阪大学文学部懐徳堂講座「『旅立ち』のかたち―文学の世界へ」2007年5月。
- 原田範行「今、語り(ナラティヴ)の面白さを発掘する」(シンポジウム/司会兼講師)日本英文学会関東支部大会、2007年7月。
- 原田範行「旅行記の面白さ―『ロビンソン・クルーソー』、『ガリヴァー旅行記』、クックの世界周航記」(講演)活水女子大学英文科特別講座、2007年11月。
- Saito, Akira, "Fighting against a Hydra: Jesuit Language Policy in Moxos", Sophia University Xavier Jubilee Project 2006 - Xavier International Academic Forum: Integration and Division between Universalism and Localism in Jesuit Mission Reports and Histories (Part II), Sophia University, 9 December 2006.
- 樫永真佐夫「黒タイの系譜認識」第14回「百越の会」国立民族学博物館、2006年7月15日。
- Yamanaka, Yuriko, "Iskandar dar tavarikh-e Arabi va Farsi (Alexander in Arabic and Persian Historiography)", International Symposium: Iranian Culture and Persian Literature, JSPS AA Science Platform Program, Senri Life Science Center, 6-7 January 2007.
- Yamanaka, Yuriko, "Japanese Observations on Modernising Iran: Yoshida Masaharu's Journey to Persia", Sixth Biennial Conference of Iranian Studies School of Oriental and African Studies, SOAS, London, 3-5 August 2006.
- 中村雄祐「今、語り(ナラティヴ)の面白さを発掘する」(シンポジウム/講師)日本英文学会関東支部大会、2007年7月。
- 中村雄祐「文書と人間」識字研究会、日本女子大、2006年12月2日。
電子媒体
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八鍬友広「テクスト学基本文献解題 石川松太郎『往来物の成立と展開』」,2006年。
http://www.r.minpaku.ac.jp/nmesaito/bunken.html(公開終了) -
萱のり子「テクスト学基本文献解題 白川静『漢字の世界-中国文化の原点』」,2006年。
http://www.r.minpaku.ac.jp/nmesaito/bunken.html(公開終了) -
佐藤健二「テクスト学基本文献解題 柳田國男「口承文芸史考」『柳田國男全集16』」,2006年。
http://www.r.minpaku.ac.jp/nmesaito/bunken.html(公開終了) -
樫永真佐夫「テクスト学基本文献解題 John DeFrancis, Colonialism and Language Policy in Viet Nam」,2006年。
http://www.r.minpaku.ac.jp/nmesaito/bunken.html(公開終了) -
山中由里子「テクスト学基本文献解題 Jonathan M. Bloom, Paper before Print: The History and Impact of Paper in the Islamic World」,2006年。
http://www.r.minpaku.ac.jp/nmesaito/bunken.html(公開終了) -
岡田裕成「テクスト学基本文献解題 Svetlana Alpers, The Art of Describing: Dutch Art in the Seventeenth Century」,2006年。
http://www.r.minpaku.ac.jp/nmesaito/bunken.html(公開終了) -
仲真紀子「テクスト学基本文献解題 Criteria Based Content Analysis」,2006年。
http://www.r.minpaku.ac.jp/nmesaito/bunken.html(公開終了) -
飯島明子「テクスト学基本文献解題 Joice Burkhalter Flueckiger & Laurie J. Sears (eds.) Boundaries of the Text: Epic Performances in South and Southeast Asia」,2007年。
http://www.r.minpaku.ac.jp/nmesaito/bunken.html(公開終了)
2005年度成果
研究実施状況
本年度は、機関研究の中核的プロジェクトである共同研究「テクスト学の構築に向けて」の研究会を5回開催した。
第1回研究会(6月18-19日)
「テクスト生産を解剖する-近代イギリスの作者、出版者、読者、文体、教育、ジャーナリズム」(原田範行)
&「プランタン=モレトゥス印刷所と近代西欧出版文化に関する研究打ち合わせ」(全員参加)
第2回研究会(10月29日)
「往来物のテクスト学」(八鍬友広)&「近代ボリビアにおける地籍図の導入プロセスと先住民社会」(吉江貴文)
第3回研究会(11月26日)
「修史・「古典」の創造・アーカイブズ-タイ国における「イサーン(東北タイ)史」の生成をめぐる諸問題を中心に」(飯島明子)&「初期イスラーム歴史学における口承性と記述性」(山中由里子)
第4回研究会(2月3-4日)
「国際シンポジウム「東南アジア大陸部の書承文化」
第5回研究会(3月25-26日)
「社会調査のテクノロジーとテクスト学」(佐藤健二)
&「朝鮮近代地域社会の支配体制と教育」(板垣竜太)
&「行政的読み書きの日常的実践-大英帝国のインド支配と官僚制」(三瀬利之)
7月22-24日、エディンバラ大学書物史研究所主催の国際シンポジウム「物質文化と知識の創造」が開催された。このシンポジウムに、機関研究・共同研究のメンバー5名が参加し、そのうち3名が研究報告を行った。シンポジウム参加に先立って、大英図書館のインキュナブラ部門の協力のもと、同図書館において研究打ち合わせを行った。
副代表者の樫永真佐夫が中心となってすすめてきた東南アジア大陸部を対象とする国際共同研究は、2月3-4日、国際シンポジウム「東南アジア大陸部の書承文化」(実行委員長:樫永真佐夫)の開催にいたった。このシンポジウムの目的は、東南アジア大陸部各地における文字や記号、およびそれらを記す行為について、地域ごとの物理的・政治的・経済的・宗教的状況との関連から考察することだった。シンポジウムの開催に先立って、研究打ち合わせを2回行った。また、シンポジウム後、国際共同研究をいっそう発展させるため、外国人研究者を交えて研究打ち合わせを行った。
ラテンアメリカを対象とする国際共同研究は、7月15日、スペイン語論文集(SES68)の刊行にいたった。8月22日には、ボリビアの首都ラパスにおいて、在ボリビア日本大使館、歴史学アカデミー、サン・アンドレス大学歴史学部、国会図書館の共催のもと、「日本から見たボリビアとその歴史」と題する国際ワークショップを開催した。
フランスの人間科学研究所を仲介とする国際共同研究の開拓・推進については、フランス側のカウンター・パートとの研究打ち合わせがすすめられている。来年度4月以降、研究代表者のフランス渡航により、具体的な詰めを行う予定である。
本年度はまた、機関研究のホームページが開設された。研究活動や研究成果に関する情報発信が行われるほか、「テクスト学基本文献解題」と題するウェブ上の研究プロジェクトが立ち上げられた。
研究成果概要
昨年度は、関連する諸学問分野におけるテクスト研究の成果の把握とその批判的検討に研究の主眼が置かれたが、本年度はもっぱら、特定の地域、特定の時代に焦点を当てた事例研究がすすめられた。とりわけ共同研究では、メンバー各人が専門とする特定の地域・時代の特定のテクストの生産・流通・保管・参照と、それを取り巻く社会的状況の分析に労力が割かれた。日本、朝鮮、東南アジア、南アジア、中近東、西ヨーロッパ、ラテンアメリカなど、世界各地のさまざまな事例が、共同研究で掘り下げられた。60年代、70年代に流行したリテラシー研究では、識字=近代的思考、識字=国家権力といった、技術決定論的色彩の強い素朴な議論が展開されたが、本研究では、単純なテーゼには還元不可能な複雑な事実関係をふまえたうえで、相対主義を乗り越えて普遍性を追求する方策が検討された。
公表実績
昨年度は、関連する諸学問分野におけるテクスト研究の成果の把握とその批判的検討に研究の主眼が置かれたが、本年度はもっぱら、特定の地域、特定の時代に焦点を当てた事例研究がすすめられた。とりわけ共同研究では、メンバー各人が専門とする特定の地域・時代の特定のテクストの生産・流通・保管・参照と、それを取り巻く社会的状況の分析に労力が割かれた。日本、朝鮮、東南アジア、南アジア、中近東、西ヨーロッパ、ラテンアメリカなど、世界各地のさまざまな事例が、共同研究で掘り下げられた。60年代、70年代に流行したリテラシー研究では、識字=近代的思考、識字=国家権力といった、技術決定論的色彩の強い素朴な議論が展開されたが、本研究では、単純なテーゼには還元不可能な複雑な事実関係をふまえたうえで、相対主義を乗り越えて普遍性を追求する方策が検討された。
出版
- 原田範行「代作、合作、贋作にみるイギリス18世紀文学」『中部英文学』(日本英文学会中部支部)55:1-13,2006年3月刊行予定。
- Harada, Noriyuki, "'Like the Monument': Samuel Johnson's 'Irene' Reconsidered".『杏林大学外国語学部紀要』17:78-105, 2006年3月刊行予定.
- Iijima, Akiko, "A Historical Approach to the Palm-Leaf Manuscripts Preserved in Wat Mahathat, Yasothon (Thailand)". In Kongdeuane Nettavong et al. (eds.) The Literary Heritage of Laos: Preservation, Dissemination and Research Perspectives (Collected Papers in Lao, Thai and English from the International Conference in Vientiane, 8-10 January 2004), pp.341-357, Vientiane (Lao P.D.R.): The National Library of Laos, November 2005.
- 板垣竜太「朝鮮/日本をめぐる記憶の場」『現代思想』33(6):116-125,2005年5月。
- 板垣竜太「どぶろくと抵抗-植民地期朝鮮の「密造酒」をめぐって」伊藤亞人先生退職記念論文集編集委員会編『東アジアからの人類学-国家・開発・市民』風響社,2006年3月刊行予定。
- 樫永真佐夫「ベトナムの黒タイ村落における固有文字の継承」『ことばと社会-多言語社会研究』(三元社)9:29-51,2005年。
- 樫永真佐夫「プロジェクト 東南アジア大陸部の書承文化」『民博通信』111:18-19,2005年。
- 萱のり子「表現と鑑賞の架橋-書の実践を通しての鑑賞教育に関する考察」『美術科研究』(大阪教育大学美術教育講座)22:33-52,2005年7月。
- 萱のり子「元永本の美学」『和歌が書かれるとき』(シリーズ和歌をひらく第2巻)177-198頁,岩波書店,2005年12月。
- Laime Ajacopa, Teofilo, "Analisis del bilinguismo y alfabetizacion de las participantes del curso de tejido, CEMVA", in Clara Lopez Beltran & Akira Saito (eds.) pp.133-148, 2005.
- Lopez Beltran, Clara, "Lo que se escribe y lo que entiende: El lenguaje escrito en la sociedad colonial de Charcas (Bolivia)", in Clara Lopez Beltran & Akira Saito (eds.) pp.9-26, 2005.
- Lopez Beltran, Clara & Akira Saito (eds.) Usos del documento y cambios sociales en la historia de Bolivia (Senri Ethnological Studies 68), National Museum of Ethnology, 2005.
- 仲真紀子・竹田久美子「書くことへの期待と書くことの効果」『書字行為と言語能力の発達との関係に関する経年的研究(平成15-18年度科学研究費補助金基盤研究B1中間報告)』3-14頁,2005年。
- 仲真紀子編『認知心理学の新しいかたち』誠信書房,2005年。
- 仲真紀子「子どもは出来事をどのように記憶し想起するか」内田伸子編『心理学-こころの不思議を解き明かす』131-159頁,光生館,2005年。
- Naka, Makiko & Yoichi Maki, "Belief and Experience of Memory Recovery", Applied Cognitive Psychology, in press.
- Nakamura, Yusuke & Yoshiaki Hisamatsu, "Documentos para tejedores: Practicas del manejo del documento en un taller de artesania para las mujeres bilingues (Sucre, Bolivia)", in Clara Lopez Beltran & Akira Saito (eds.) pp.97-132, 2005.
- Nakamura, Yusuke & Takafumi Yoshie, "El impacto de los mapas modernos y la propiedad de la tierra: El caso de dos provncias de La Paz (Bolivia), 1880-1920", in Clara Lopez Beltran & Akira Saito (eds.) pp.73-95, 2005.
- 岡田裕成「アンデス植民地美術論における「メスティソ(混血)」概念」関雄二・木村秀雄編「歴史の山脈-日本人によるアンデス研究の回顧と展望」(国立民族学博物館調査報告55)91-117頁,大阪:国立民族学博物館,2005年。
- 大黒俊二『嘘と貪欲-西欧中世の商業・商人観』名古屋大学出版会,2006年3月刊行予定。
- Saito, Akira, "Las misiones y la administracion del documento: El caso de Mojos, siglos XVIII-XX", in Clara Lopez Beltran & Akira Saito (eds.) pp.27-72, 2005.
- 佐藤健二「ことばはなぜ単純化されるのか-「理屈」の使い方・乗り越え方」『論座』(朝日新聞社)10月号,238-244頁,2005年。
- 佐藤健二「地域社会へのリテラシー-調査史に学ぶ」地域社会学会編『地域社会学の視座と方法』(講座地域社会学第1巻)東信堂,2006年3月刊行予定。
- 佐藤健二「歴史と出会い,社会を見いだす」苅谷剛彦編『いまこの国で大人になるということ(仮)』紀伊国屋書店,2006年3月刊行予定。
- 杉本史子「大隅国・薩摩国 島津家と国絵図」国絵図研究会『国絵図の世界』柏書房株式会社,2005年7月。
- 杉本史子「「書物」としての絵図・「草紙」としての絵図―国図と出版統制 絵図の時代(1)」『東京大学史料編纂所画像史料解析センター通信』31号,2005年10月。
- 杉本史子「地図と絵画の間―一覧図の世界 絵図の時代(2)」『東京大学史料編纂所画像史料解析センター通信』32号、2006年1月。
- 杉本史子「十八世紀、秀吉への謀反を演じるということ-並木正三「三千世界商往来」と近世社会」藤田達生編『近世成立期の大規模戦争―戦場論(下)』岩田書院,2006年3月刊行予定。
- Yamanaka, Yuriko & Tetsuo Nishio (eds.) The Arabian Nights and Orientalism: Perspectives from the East and West, London: I.B. Tauris, 2005.
- Yamanaka, Yuriko, "Alexander in the Thousand and One Nights and the Ghazali Connection". In Yuriko Yamanaka & Tetsuo Nishio (eds.) The Arabian Nights and Orientalism: Perspectives from the East and West, pp.93-115, London: I.B. Tauris, 2005.
研究集会(口頭発表)
- 原田範行「イギリスにおける<文学>の誕生」(シンポジウム司会・講師)日本英文学会第77回全国大会シンポジウム第1部門,2005年5月。
- Harada, Noriyuki, "Publishing Enlightenment: Reformation of Language and Print in the Modern Japan". Paper delivered at the conference Material Cultures and the Creation of Knowledge, Centre for the History of the Book, The University of Edinburgh, 22 July 2005.
- 原田範行「代作、合作、贋作にみるイギリス18世紀文学」日本英文学会中部支部第57回大会特別講演,2005年10月。
- 飯島明子「オーラル・ヒストリーによるセーンウィー小史に向けて-(1)ソーブア・ファミリーの人々」科学研究費補助金「ミャンマー少数民族地域における生態資源利用と世帯戦略:広域比較に向けて」2005年度中間報告会,鹿児島大学総合研究博物館,2005年11月5日。
- Ishizaki, Chikage & Makiko Naka, "The Effect of Retrieval on Accuracy-Confidence Relationship for Recognition Memory", Society for Applied Research on Memory and Cognition, Wellington, New Zealand, 2005.
- Itagaki, Ryuta, "'Seoul' Viewed from a Distance: Colonial Experiences Inscribed in Diaries". Paper delivered at the conference Urban Culture in Colonial Korea, Institute of Asian Research, University of British Columbia, 18 February 2006.
- Kaji, Yuichi & Makiko Naka, "Source Monitoring of Memory for Actions", Society for Applied Research on Memory and Cognition, Wellington, New Zealand, 2005.
- Lopez Beltran, Clara, "Usos del documento y cambios sociales en la historia de Bolivia". Ponencia dada en la conferencia Bolivia y su historia en perspectiva japonesa, Embajada del Japon, Academia de la Historia, Carrera de Historia de la Universidad Mayor de San Andres, y Biblioteca y Archivo Historico del H. Congreso Nacional, 22 agosto 2005.
- 槙洋一・仲真紀子「大学生の自伝的記憶の特徴-自発的分類課題による想起内容の分析」日本心理学会第69回大会,2005年。 div>
- 見崎研志・仲真紀子「記憶促進における反復書記効果に関する研究-繰り返し書きながら覚えることによって覚えやすくなるか」日本心理学会第69回大会,2005年。
- 仲真紀子「無意味つづり産出課題における制約とその緩和」日本心理学会第69回大会,2005年。
- Nakamura, Yusuke, "The Introduction of Cadastral Maps in Modern Latin America: Indigenous Andean Societies at the Turn of the 20th Century". Paper delivered at the conference Material Cultures and the Creation of Knowledge, Centre for the History of the Book, The University of Edinburgh, 24 July 2005.
- Saito, Akira, "The Jesuit Mission and the Administration of Documents: The Case of Mojos, Lowland Bolivia". Paper delivered at the conference Material Cultures and the Creation of Knowledge, Centre for the History of the Book, The University of Edinburgh, 23 July 2005.
- Saito, Akira, "Las misiones y la administracion del documento: El caso de Mojos, siglos XVIII-XX". Ponencia dada en la conferencia Bolivia y su historia en perspectiva japonesa, Embajada del Japon, Academia de la Historia, Carrera de Historia de la Universidad Mayor de San Andres, y Biblioteca y Archivo Historico del H. Congreso Nacional, 22 agosto 2005.
- 佐藤健二「野の学問の苦境」第57回日本民俗学会公開シンポジウム「野の学問とアカデミズム」2005年10月8日。
- Sato, Kenji, "The Birth of Kudan: An Analysis of a Monster from the Perspective of Historical Sociology". UT-SNU合同セミナー2005,東京大学,2005年10月29日。
- 佐藤健二「歴史社会学とは何か」愛知学院大学公開研究会,2006年2月16日。
- 杉本史子「沈黙の大地-幕末期、出版文化と一覧図」書物と社会変容研究会,2005年。
- 杉本史子「国図と出版文化―身分社会と文化生産」茨城大学社会連携支援事業・日本地理学会2005年秋期学術大会,茨城大学,2005年9月。
- 山中由里子「二本角が表すもの-西アジアにおけるアレクサンドロス大王の神聖化」同志社大学一神教学際研究センター・日本オリエント学会共催公開講演会,2005年12月17日。
- 山中由里子「アレクサンドロス伝説を追って-プセウド・カリステネスからオリバー・ストーンまで」みんぱくゼミナール,国立民族学博物館,2006年2月18日。
- Yoshie, Takafumi, "El impacto de los mapas modernos y la propiedad de la tierra: El caso de dos provncias de La Paz (Bolivia), 1880-1920". Ponencia dada en la conferencia Bolivia y su historia en perspectiva japonesa, Embajada del Japon, Academia de la Historia, Carrera de Historia de la Universidad Mayor de San Andres, y Biblioteca y Archivo Historico del H. Congreso Nacional, 22 agosto 2005.
電子媒体
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原田範行「テクスト学基本文献解題 Donald F. McKenzie, Bibliography and the Sociology of Texts」,2005年。
http://www.r.minpaku.ac.jp/nmesaito/bunken.html(公開終了) -
中村雄祐「テクスト学基本文献解題 Sylvia Scribner & Michael Cole, The Psychology of Literacy」,2005年。
http://www.r.minpaku.ac.jp/nmesaito/bunken.html(公開終了) -
杉本史子「テクスト学基本文献解題 高木昭作『江戸幕府の制度と伝達文書』」,2005年。
http://www.r.minpaku.ac.jp/nmesaito/bunken.html(公開終了) -
齋藤晃「テクスト学基本文献解題 Gary Urton, Signs of the Inka Khipu: Binary Coding in the Andean Knotted-String Records」,2006年。
http://www.r.minpaku.ac.jp/nmesaito/bunken.html(公開終了) -
三瀬利之「テクスト学基本文献解題 Michael T. Clanchy, From Memory to Written Record: England 1066-1307」,2006年。
http://www.r.minpaku.ac.jp/nmesaito/bunken.html(公開終了)
2004年度成果
研究実施状況
本年度は、機関研究の中核的プログラムである共同研究「テクスト学の構築に向けて」の研究会を2回開催した。
第1回研究会(11月13日)
「テクスト学の地平」報告者:齋藤 晃
第2回研究会(3月5日)
「認知的人工物とテクスト」報告者:中村雄祐)
「書くことの機能-書くことへの期待と書いて覚える効果」報告者:仲真紀子
本研究では、平成17年度に国際シンポジウム「東南アジア大陸部の写本文化(仮題)」(実行委員長:樫永真佐夫)の開催を予定しているが、その準備として9月13日、東京大学文学部社会学研究室において研究会を開催した。 「東南アジア大陸部文書文化-大陸部東部を中心に」報告者:樫永真佐夫 「「タム文字写本文化圏」について」報告者:飯島明子 また、同シンポジウムの開催準備の一環として、樫永真佐夫がフランスに渡航(12月4日~12月12日)、関連分野の研究者と研究打ち合わせを行った。
研究成果概要
本年度は、関連する学問分野におけるテクスト研究の経緯と現状を把握するとともに、諸分野を横断するかたちで研究対象、問題設定、方法論などのすりあわせを行い、今後の議論のための共通の場を構築することを目指した。2回の共同研究会における報告とその後の議論では、心理学や認知科学、言語学、表象論における従来の議論を再考し、総合的なテクスト学の構築に必要な概念や方法を模索し、その有効性を検討した。
特定の地域・時代に焦点をあわせた個別的なテクスト研究は、ラテンアメリカと東南アジア大陸部に関して大きな進展をみた。前者は、齋藤が中心となって数年来進めてきた共同研究が、SESとして近日中に刊行される。また、Maisons des Sciences de l'Hommeを窓口とするフランスの研究者との国際共同研究も、具体的な調整が始まっている。東南アジア大陸部については、平成17年度開催予定の国際シンポジウムを視野に入れて、国内の研究者による研究会・研究打ち合わせや、国際的な研究者ネットワークの構築が進んでいる。
公表実績
昨年度は、関連する諸学問分野におけるテクスト研究の成果の把握とその批判的検討に研究の主眼が置かれたが、本年度はもっぱら、特定の地域、特定の時代に焦点を当てた事例研究がすすめられた。とりわけ共同研究では、メンバー各人が専門とする特定の地域・時代の特定のテクストの生産・流通・保管・参照と、それを取り巻く社会的状況の分析に労力が割かれた。日本、朝鮮、東南アジア、南アジア、中近東、西ヨーロッパ、ラテンアメリカなど、世界各地のさまざまな事例が、共同研究で掘り下げられた。60年代、70年代に流行したリテラシー研究では、識字=近代的思考、識字=国家権力といった、技術決定論的色彩の強い素朴な議論が展開されたが、本研究では、単純なテーゼには還元不可能な複雑な事実関係をふまえたうえで、相対主義を乗り越えて普遍性を追求する方策が検討された。
出版
- 仲真紀子・竹田久美子「書くことへの期待と書くことの効果」『書字行為と言語能力の発達との関係に関する経年的研究』(平成16年度科研究費補助金成果報告書)。(印刷中)
- 原田範行「ジャーナリズムの起源」『英文学論考』(立正大学英文学会)第31号、57-80頁、2005年3月。
- 原田範行「文学的表象としてのジョンソンの『英語辞典』再考」『杏林大学外国語学部紀要』第17号、89-106頁、2005年3月。
- 樫永真佐夫「黒タイ-黒タイの拡散とその現在」綾部恒雄監修、林行夫・合田濤編『講座世界の先住民族 ファースト・ピープルズの現在2-東南アジア』明石書店、123-139頁、2005年。
- 樫永真佐夫「ベトナムにおける黒タイ家霊簿の現在」塚田誠之・長谷川清編『中国の民族表象』風響社。(印刷中)