国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

「伝統」の表象とジェンダー

共同研究 代表者 池田忍(客員)

研究プロジェクト一覧

2003年度

「植民地後」の世界の中で、あるいは「地球化」と呼ばれる潮流の中で、各地域の「伝統」の見直しが進んでいる。しかし「伝統」の主張は、常に両義的である。それは、ある場合にはたしかに、強大な国や権力からの一方的な価値の押しつけに対抗するための有効な方策となる。しかしまた同時にそれは、しばしば、過去に存在した(そして現在も続く)身分やジェンダーに関わる差別構造を、維持・強化する役割を果たすことにもなる。「伝統」が主張され、表象された結果、その地域に生きる、ある人々を、「伝統」的な差別構造の中に囲い込むことになるのである。この研究は、そうした構造の解体を目指しつつ、また同時に、価値の一元化にも抵抗しうる方策があるかどうか、という現在の緊急な課題にこたえるために、実施するものである。各地域の「伝統」表象のあり方を具体的に検証しながら、そこに生じてくるジェンダーの問題を考察し、問題解決への方向を探りたい。

【館内研究員】 大塚和義、川口幸也、寺田吉孝、山中由里子、横山廣子、吉田憲司
【館外研究員】 池内靖子、後小路雅弘、大橋敏江、岡真理、亀井若菜、金惠信、高橋哲哉、竹村和子、松田京子、矢口祐人、吉原秀喜、李成市
研究会
2003年9月6日(土)13:30~(第6セミナー室)
吉田憲司「男性の仮面結社と女性の成人儀礼 ─ アフリカ、チェワ社会における性をめぐる制度・再考」
亀井若菜「戦国武士の戦いと女性表象」
2004年1月30日(金)13:30~(第1会議室/展示場)
拡大共同研究会:総合テーマ「自文化表象の場と権利 ─ 『あじまあ』展と『アイヌからのメッセージ』展を契機に」
矢口祐人「『伝統』としてのフラ─パフォーマンス、アイデンティティ、ジェンダー」展示解説(ギャラリーにて)
「あじまあ 沖縄の伝統とくらし─沖縄県立博物館収蔵資料展」
「アイヌからのメッセージ─ものづくりと心」
2004年1月31日(土)10:30~(第1会議室)
貝澤徹「ものづくりと心─『アイヌからのメッセージ』展をふりかえって」
名嘉真宜勝「読谷村立歴史民俗資料館の展示活動を巡って」
全体討論
研究成果

本研究プロジェクトでは、近年各地で進む「伝統」の見直し・再評価にかかわる問題を視覚表象に焦点を合わせて取り上げ、ジェンダーの視点から検討を進めた。実施された研究会での報告の内容は、分析の対象によって以下の二つに大別される。第一に、過去に創造された造形作品、演劇、都市空間、博物館・美術館・博覧会等の展示空間を扱い、表象の意味と作用を、それを生み出した社会の歴史的文脈、ジェンダー編成の中に位置付けて解明しようとする研究である。第二に、現在、創造・享受される「伝統」的表象文化の研究である。本研究会では、過去と現在の表象文化を併せて考察することによって、それらを意味づけ解釈する現代社会に温存される民族や身分、そしてジェンダーにかかわる「伝統」的な差別構造の解明と解体を目指した。

2002年度

「植民地後」の世界の中で、あるいは「地球化」と呼ばれる潮流の中で、各地域の「伝統」の見直しが進んでいる。しかし「伝統」の主張は、常に両義的である。それは、ある場合にはたしかに、強大な国や権力からの一方的な価値の押しつけに対抗するための有効な方策となる。しかしまた同時にそれは、しばしば、過去に存在した(そして現在も続く)身分やジェンダーに関わる差別構造を、維持・強化する役割を果たすことにもなる。「伝統」が主張され、表象された結果、その地域に生きる、ある人々を、「伝統」的な差別構造の中に囲い込むことになるのである。この研究は、そうした構造の解体を目指しつつ、また同時に、価値の一元化にも抵抗しうる方策があるかどうか、という現在の緊急な課題にこたえるために、実施するものである。各地域の「伝統」表象のあり方を具体的に検証しながら、そこに生じてくるジェンダーの問題を考察し、問題解決への方向を探りたい。

【館内研究員】 寺田吉孝、山中由里子、横山廣子、吉田憲司
【館外研究員】 池内靖子、後小路雅弘、大橋敏江、岡真理、亀井若菜、金惠信、高橋哲哉、竹村和子、松田京子、矢口祐人、吉原秀喜、李成市
研究会
2002年6月15日(土)13:30~(第6セミナー室)
後小路雅弘「語る手 結ぶ手:第2回福岡トリエンナーレ ─アジアの現代美術に見る『伝統』と『ジェンダー』」
川口幸也「女とエイズとアフリカ ─ 同時代美術におけるアフリカの語られ方」
2002年9月21日(土)13:30~(第7セミナー室)
横山廣子「旗袍(チーパオ)の歴史と表象」
池田忍「民族服の女性表象 ─ モダニズム時代の『伝統』と女性」
森理恵「モードのオリエンタリズム ─ 『キモノ』と『支那服』」
2002年11月16日(土)13:30~(第6セミナー室)
キム・ヘシン「2002年光州ビエンナーレの美術 ─ <コリアン・ディアスポラ展>」
富山妙子「1930年代 マンチュリア」
2003年1月25日(土)13:30~(第6セミナー室)
池内靖子「近代日本における『オセロ』の翻案劇:帝国のまなざしと擬態」
大橋敏江「ナショナリズムとジェンダー ─ メキシコ壁画運動第一号プロジェクトにおけるホセ・クレメンテ・オロスコの女性像に関する一考察」
2003年1月26日(日)10:00~(第6セミナー室)
松田京子「台湾原住民をめぐる『帝国』日本の表象技法 ─ 1895年台湾領有戦争から1935年台湾博覧会まで」
李成市「朝鮮王朝の象徴空間と博物館 ─ 近代日本の秘匿と開示の戦略」
2003年2月14日(金)13:30~(千里ライフサイエンスセンター5階)
シンポジウム「文明の衝突と現代世界」に参加

2001年度

「植民地後」の世界の中で、あるいは「地球化」と呼ばれる潮流の中で、各地域の「伝統」の見直しが進んでいる。しかし「伝統」の主張は、常に両義的である。それはある場合には、強大な国や権力からの一方的な価値の押しつけに対抗するための有効な方策となる。しかしまた同時にそれは、しばしば、過去に存在した(そして現在も続く)身分やジェンダーに関わる差別構造を、維持・強化する役割を果たすことにもなる。「伝統」が主張され、表象された結果、その地域に生きる、ある人々を、「伝統」的な差別構造の中に囲い込むことになるのである。この研究は、そうした構造の解体を目指しつつ、また同時に、価値の一元化にも抵抗しうる方策があるかどうか、という現在の緊急な課題にこたえるために、実施するものである。各地域の「伝統」表象のあり方を具体的に検証しながら、そこに生じてくるジェンダーの問題を考察し、問題解決への方向を探りたい。

【代表者】 千野香織
【館内研究員】 寺田吉孝、山中由里子、横山廣子、吉田憲司
【館外研究員】 池内靖子、池田忍、後小路雅弘、大橋敏江、岡真理、金惠信、高橋哲哉、竹村和子、松田京子、矢口祐人、米田秀喜、李成市
研究会
2001年7月14日
千野香織「『伝統』表象の意義と問題点」
2001年10月1日
竹村和子「ジェンダー理論の現在」
高橋哲哉「戦死者をどう弔うか──靖国問題から出発して」
2001年12月27日
米田秀喜「エスノセントリックな社会における被抑圧民族の文化表象──日本におけるアイヌ民族の事例を通じて」
阿部一司「都市におけるアイヌ民族の文化活動」
2002年3月6日~7日
安里英子「沖縄の女性原型──族母としてのノロと弾圧されるユタ」
チカップ美恵子「アイヌ民族の精神世界とアイヌ民族の暮らし」
コメンテーター:鹿田川見、吉田和子