自律的観光の総合的研究
2001年度
1960年代以降におけるマス・ツーリズムの隆盛化に伴って、自然環境の破壊、文化遺産の劣化、伝統文化の誤用と悪用、地域社会の階層分化、犯罪や売買春の増加などの「負のインパクト」が世界各地で顕著に生じるようになった。そのために、1980年代以降、マス・ツーリズムに代わる「もうひとつの観光」や「適正観光」や「責任ある観光」や「維持可能な観光」などの新しい観光の創出がグローバルな課題になっている。さらに、21世紀にはさらなる国際観光の量的拡大が予測されており、特にアジア諸国において2010年代に観光ビッグバン(大爆発)が生じる可能性が大きい。本研究では、日本および世界の各地で地域社会の人々が固有の地域資源(自然環境や文化遺産など)を主導的かつ自律的に活用する「自律的観光」を総合的に研究することにより、グローバルな課題としての「維持可能な観光」の創出に貢献することを目的にしている。自律的観光の可能性を総合的に研究するためには、多岐にわたる研究分野からのアプローチが必要であり、これまでも数多くの研究者に参画してもらうことで、大きな研究成果をあげている。
【館内研究員】 | 印東道子、韓敏、塩路有子、関雄二、西山徳明(客員) |
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【館外研究員】 | 石崎祥之、江口信清、海津ゆりえ、神崎宣武、工藤雅世、黒見敏丈、桑田政美、小林英俊、坂上英彦、佐藤誠、敷田麻実、下休場千秋、白川千尋、関根久雄、高田公理、中谷哲弥、中村純子、西田正憲、橋爪紳也、橋本和也、橋本俊哉、濱口尚、真板昭夫、前田武彦、前田弘、槇村久子、宗田好史、森栗茂一、八木延佳、安福恵美子、山下京、吉兼秀夫、吉野耕作 |
研究会
- 2001年6月30日
- 共同討議「自律的観光の可能性」
- 2001年7月14日~15日
- 安福恵美子「観光とジェンダーをめぐる諸問題」
- 松島泰勝「パラオにおける観光開発と女性」
- 杓谷茂樹「メキシコのマヤ遺跡の女性性と観光」
- 萩原なつ子「観光開発とジェンダー」
- 後藤澄江「過疎地域における観光産業と女性労働の展望 ─ 地域振興アプローチからジェンダーアプローチへ」
- 2001年11月17日
- 前田弘「観光地のライフサイクルと成長管理」
- 米田誠司「事例報告1 ─ 大分県湯布院」
- 野上泰生「事例報告2 ─ 大分県別府温泉」
- 神田孝治「事例報告3 ─ 和歌山県白浜温泉」
- 志賀秀一「事例報告4 ─ 新潟県佐渡ヶ島」
- 共同討議「観光地のライフサイクル」
- 2001年12月15日
- 西山徳明「文化遺産管理とツーリズム開発」
- 共同討議「文化遺産管理とツーリズム開発」
- 2002年1月26日
- 遠藤竜馬「『女性ツーリスト』の誕生」
- 才津祐美子「文化遺産の維持と女性の役割:白川郷の事例」
- 共同討議「観光とジェンダー」
- 2002年3月24日
- 石森秀三「環境観光学のすすめ」
- 真板昭夫「エコツーリズムからみたエコミュージアム」
- 吉兼秀夫「エコミュージアムからみたエコツーリズム」
- 小保内敏幸「事例報告 ─ 青森県二戸市」
- 橋間友則「事例報告 ─ 山形県朝日町1」
- 安藤竜二「事例報告 ─ 山形県朝日町2」
- 十倉真末子「事例報告 ─ 京都市」
- 竹前晴夫「事例報告 ─ 徳島県美郷村」
- 水野聖子「事例報告 ─ 高知県大方町」
- 宮城克行「事例報告 ─ 沖縄県東大東村」
- 石川厚志「事例報告 ─ エコツーリズム開発プロジェクト」
- 大山由美子「事例報告 ─ エコミュージアム開発プロジェクト」
- 共同討議「エコツーリズムとエコミュージアムの融合の可能性」
研究成果
3年目の今年度は、ジェンダーと観光、文化遺産と観光、エコツーリズムとエコミュージアムなどのテーマを中心にして、地域社会の住民やグループが地域資源の再評価や持続可能な活用を図りながら観光振興を推進するという自律的観光のさまざまな可能性について、個別の研究発表を積み重ねるとともに、共同討議を行った。さらに、今年度は共同研究の最終年度でもあったので、共同研究の成果刊行についても検討を行った。
2000年度
21世紀には「大観光時代の到来」が予測されており、観光開発がグローバルな課題になることは必至である。従来の観光は基本的に旅行業者が商品化したものが中心であり、地域社会に負のインパクトを引き起こしがちであった。観光のグローバル化に伴って、地域社会の主導による「自律的観光」の創出がグローバルな課題になっている。本研究は、自律的観光の可能性について総合的に共同研究を行うことが目的である。
【館内研究員】 | 関雄二、西山徳明(客員) |
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【館外研究員】 | 石崎祥之、江口信清、海津ゆりえ、黒見敏丈、佐藤誠、敷田麻実、下休場千秋、白川千尋、関根久雄、高田公理、橋爪紳也、濱口尚、真板昭夫、前田武彦、前田弘、槇村久子、宗田好史、森栗茂一、安福恵美子、吉兼秀夫、吉野耕作 |
研究会
- 2000年5月27日~28日
- 石森秀三「エコミュージアムと自律的観光」
- 吉兼秀夫「エコミュージアムの概念とフランス・日本の事例報告」
- 大原一興「スウェーデンにおけるエコミュージアム」
- 今橋克寿「空山川総合研究所とイーハトーブ・エコミュージアム」
- 池田啓「天然記念物整備活用事業とエコミュージアム」
- 中山清美「地域遺産を活かした古代村構想」
- 2000年12月3日
- 石森秀三「自律的観光の理論的枠組み」
- 真板昭夫「自律的観光とエコミュージアム」
- 西山徳明「自律的観光とヘリテージ・ツーリズム」
- 2000年12月9日~10日
- 関根久雄「あなたの知らない世界がそこにある(A World You Never Knew Still Existed) ─ 参加型開発としてのエコツーリズムとマロヴォ・ラグーン」
- 橋本和也「南太平洋の観光開発 ─ エコツーリズム開発におけるツーリストと地元のギャップ」
- 北口学「観光開発とマイノリティ・グループ」
- 佐藤幸男「グローバリゼイションと観光 ─ 理論的分析枠組み」
- 松島泰勝「パラオにおける観光戦略」
- 中村純子「ニューカレドニアの文化センターにおけるカナク文化の見せ方」
- 2001年1月24日~25日
- 共同研究の成果取りまとめの打ち合わせ
- 2001年1月27日
- 共同研究の成果取りまとめの打ち合わせ
- 2001年2月3日~4日
- 森栗茂一「集客行政と市民活動 ─ 艦観式記念神戸市民祭協会からアイウォークまで」
- 橋爪紳也「人口減少・地価停滞・産業衰退時代における都市の自立と観光」
- 全員 フォーラム「関西における都市観光の可能性 ─ 現場からの議論」
- コーディネーター:森栗茂一
- パネリスト:門上武司、金井文宏、黒見敏丈、森崎清登、佐野嘉彦
- 2001年2月24日~25日
- 川森博司「昔語りと観光 ─ 遠野の現実」
- 八木延佳「劇場による街の回遊性」
- 太田守「劇場による町の活性化」
- 山村高淑「中国・麗江におけるアーバンツーリズム」
- 荒牧澄多「蔵のまちづくり ─ 小江戸・川越の事例」v 八田博志「地域づくりとフラットバス ─ 金沢観光の新たな展開」
- 2001年3月10日~11日
- 真坂昭夫、宮川浩「観光をベースにした『やんばる地域』の自律的発展」
- 石垣金星「西表島における工芸村運動の歴史と観光」
- 枝松克巳「奄美パーク・サテライト ─ 地域からの情報発信の試み」
- 寺沢孝毅、森脇康子「『小宇宙』天売島における自然体験型観光」
- 白川千尋「ヴァヌアツにおける観光と地域社会の相克 ─ ペンテコスト島南部のナゴル儀礼を対象とした観光をめぐって」
- 新谷正徳「ハワイ島におけるエコツーリズム開発」
- 竹尾茂樹「台湾の原住民のエコ・カルチュラル・トゥーリズム」
- 2001年3月17日~18日
- 津田雅人、石川厚志「島嶼地域における地域情報発信としての展示手法と観光」
- 西原弘「ガラパゴス諸島における管理観光システムの功罪」
- 榊原史博「マカオのツーリズム・アイデンティティーの確保とゾーニング」
- 開梨香「沖縄島嶼地域におけるエコツーリズム開発」
- 海津ゆりえ、松永典子「南大東島『島まるごとミュージアム』による地域発見と自律化の試み」
- 松本毅「屋久島におけるエコツーリズムの展望と課題」
- 安渓遊地「地元主導の森林保全とエコツーリズム ─ 屋久島と東アフリカの交流から」
研究成果
2年目の今年度は、オセアニア地域における観光開発、アーバン・ツーリズム、島嶼世界における自律的観光、という3つのテーマを中心にして、自律的観光の可能性について共同研究を行った。オセアニア地域における観光開発については、フィジー、ニューカレドニア、ソロモン諸島、パラオ群島などの事例報告を中心にした研究会が開催された。アーバン・ツーリズムについては、主として日本の諸都市における事例報告を中心にした研究会が開催された。島嶼世界における自律的観光については、ハワイ諸島、ガラパゴス諸島、台湾、マカオ、北海道、沖縄県などの事例報告を中心にした研究会が開催された。これらの共同研究に関する研究成果については、国立民族学博物館調査報告のシリーズとして、別々の号でまとめて公刊の予定である。
1999年度
21世紀には「大観光時代の到来」が予測されており、観光開発がグローバルな課題になることは必至である。従来の観光は基本的に旅行業者が商品化したものが中心であり、地域社会に負のインパクトを引き起こしがちであった。観光のグローバル化に伴って、地域社会の主導による「自律的観光」の創出がグローバルな課題になっている。本研究は、自律的観光の可能性について総合的に共同研究を行うことが目的である。
【館内研究員】 | 関雄二、寺田吉孝、西山徳明(客員) |
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【館外研究員】 | 石崎祥之、江口信清、海津ゆりえ、黒見敏、佐藤誠、敷田麻実、下休場千秋、白川千尋、関根久雄、高田公理、橋爪紳也、濱口尚、真板昭夫、前田武彦、前田弘、槇村久子、宗田好史、吉兼秀夫、吉野耕作 |
研究会
- 11月6~7日
- 石森秀三「自律的観光の総合的研究について」
- 真坂昭夫「エコツーリズムと自律的観光」
- 海津ゆりえ「エコツーリズム開発のプロセスにみる自律的観光の可能性」
- 関根久雄「エコツーリズムにおける自律可能性-ソロモン諸島の事例」
- 下休場千秋「異文化理解とエコツーリズム-カメルーン共和国の事例」
- 前田武彦「共存の時代のエコツーリズム-四万十川の事例」
- 11月28日
- 考古学遺跡と観光シンポジウム
- 石森秀三「ヘリテージ・ツーリズムの世界的動向」
- 岡村道雄「日本における文化財の保全と活用」
- 総合討論「考古学遺跡はだれののも?」
- 小山修三「問題提起」
- 田辺征夫「事例報告:平城京」
- 岡田康博「事例報告:三内丸山遺跡」
- 12月4~5日
- 西山徳明「ヘリテージツーリズムと歴史的環境の保全―世界遺産白川村合掌集落における自律的観光の実現と課題」
- 黒見敏丈「京町屋・町並み景観の保全・整備による自律的観光の可能性」
- 関雄二「ペルーにおける文化遺産観光」
- 小山修三「アボリジニがつくった景観」
- 佐藤誠「生命遺産とツーリズム-阿蘇における実践をとおして」
- 2000年1月22日
- 塩路有子「英国コッツウォルズ地域における文化遺産観光:住民による文化遺産の保全と自律的観光の可能性」
- 浜口尚「捕鯨のまなざし、観光客のまなざし:カリブ海、ベクウエイ島における捕鯨と観光」
- 1月23日
- 敷田麻実「エコツーリズムと環境へのインパクト:二つのケーススタディから」
- 中村純子「ニューカレドニアにおける観光開発と教育」
- 全員「研究成果のとりまとめについて」
研究成果
1年目の今年度は、エコツーリズム、ヘリテージ・ツーリズム、エコミュージアムという3つのテーマを中心にして、自律的観光の可能性について共同研究を行った。エコツーリズムについては、フィジー、ニューカレドニア、ソロモン諸島、カメルーン、ガラパゴス、西表島、竹富島、四万十川などの事例報告を中心にした研究会が開催された。ヘリテージ・ツーリズムについては、ペルーのアンデス地域、英国のコッツウォルズ地域、オーストラリア、京都、白川村などの事例報告を中心にした研究会が開催された。エコミュージアムについては、スウェーデン、フランス、岩手県、兵庫県、沖縄県などの事例報告を中心にした研究会が開催された。このうち、エコツーリズムとヘリテージ・ツーリズムに関する研究成果については、2000年度中に国立民族学博物館調査報告のシリーズとして、別々の号でまとめて公刊の予定である。