国立民族学博物館(みんぱく)は、博物館をもった文化人類学・民族学の研究所です。

広東の水上居民(2009)

科学研究費補助金による研究プロジェクト|研究成果公開促進費(学術図書) 代表者 長沼さやか

研究プロジェクト一覧

目的・内容

本書は、中国広東珠江デルタに位置する中山市での調査資料をもとに、「水上人」、または「蛋家」と呼ばれる水上居民(船上生活者)が、当該地域の漢族内部にいかなるエスニシティを形成し、それが今日までどのように変容してきたのかについて、1949年の中華人民共和国成立から現在に至るまでの約50年間を対象に考察した、文化人類学的研究の成果である。
中国本土ではこれまで、民俗学の分野において1930、40年代に実施された短期調査を除き、水上居民研究は行われていない。また、隣接する香港では、1960年代に水上居民に関する研究成果があげられているが、以後は研究対象の減少により調査がおこなえない状況となった。このような背景において本書は、中国本土の水上居民を対象としたはじめての文化人類学的研究の成果である。1950年代から現在まで、中国本土における水上居民の生活の変容を明らかにし、これまでの研究の空白を埋めることが、本書を刊行する大きな目的である。