中世アジアの住居と集落にかんする総合的研究――資料の集成とそのデジタル化(2004-2005)
目的・内容
本研究の目的は、日本とその周辺アジアで中世にどのような居住様式がいとなまれていたかをあきらかにし、その理解に必要な情報をまとめてデジタル化にそなえることである。そのために、アジア諸国の建築史を専門にする者があつまり、各自の専門領域をこえて、日本とその周辺アジアの中世の居住様式にかんする研究会を組織する。考古学、歴史学、民族学などの関連分野とも問題点の共有をはかりながら、人間居住の歴史に焦点をあてた研究を実現する。その成果をもとに、アジアの居住史にかんする研究情報をひろく渉猟し、それらを統合して、建築という分野をこえて活用可能なデータにまとめる。具体的には、日本、中国、朝鮮半島、東南アジアの各地における住居と集落・都市研究の現状をレビューし、基礎文献資料集を作成するのが本研究の目標である。
活動内容
2005年度活動報告
平成16年度に発足させた研究会「アジアの住まいと居住を考える会」を継続させ、これまでに4回の研究会を開催した。今年度は、韓国青山島の民家調査報告(報告者は千葉大学の勝山絵梨子)を話題に、佐藤と玉井哲雄(千葉大学)が韓国民家調査の意義と目的について発表した。
平成16年度の中国調査につづき、今年度はインドネシアを対象にして11日間の現地調査をおこなった。参加したのは、佐藤、西垣、福田のほか、玉井哲雄(千葉大学)と小泉和子(京都女子大学)の5名。ジャワ島の古代遺跡(レリーフには当時の住居様式が描かれている)と中近世の都城、インドネシアの基層文化の特徴をしめすトラジャの住居と集落、中世ジャワ文化の痕跡をのこすバリ島の住居と集落について調査をおこなった。
2年間で研究の第一ステージを終え、来年度以降は、研究代表者を川本重雄に代えて、朝鮮半島と日本を焦点にした第二ステージへと継続させる計画である。
2004年度活動報告
2004年度はメンバーおよび研究協力者全員の参加する研究会を3回おこない、中国の中世集落の現状を把握するために中国調査を実施した。
研究会は中国についての発表とその他のアジア地域の発表をなるべく組み合わせるようにし、まず、6月と9月の二度開催して、課題に取り組む際の方向性をさぐった。その上で、中国の住居・集落・都市について典型的な事例を抽出し、10月にメンバー全員で実地調査をおこなった。その後、現地調査報告を含めた第三回研究会を12月に開催した。この間、担当者は中国の住居と集落にかんする資料のまとめをしながら、住居・集落に関する基礎文献を蒐集して資料集の作成にそなえた。研究会には研究分担者・研究協力者が参加するだけでなく、第三回研究会ではメンバー以外の研究者の発表がおこなわれ、また多数の学生の参加があった。
中国では、建築に限らず、すべてが天子を頂点として、諸侯や王族、士大夫そして庶民へと至るピラミッド型の構造をとる。宮殿の構成も四合院という建築形式をとることからもわかるように、庶民の住宅のみならず、士大夫や天子の住居をも考えて、はじめて住居をとらえることができる。現地調査には、古い街並みが残る平遙古城(世界遺産)や党家村、丁村、さらに西安近郊の宮殿遺跡を選んで視察・調査した。
中国にかんして、基礎的な文献資料には以下の三種類が予想される。
(1)調査報告書・論文・単行本についての書誌データ
(2)絵画資料・出土物(明器など。報告書に付けられた図面を含む)の画像資料
(3)漢文史料からの関連箇所の抽出
本年度は1について、基本的かつ重要なものに限定して資料集の作成をおこなった。